ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

揺光【夏じゃな】

天魔「そうじゃな」

ブラフマン「かくくく。四季があるのは素晴らしいことですよ」

亘理『……』

悠「頭の上で狐と天狗と悪魔と天井下りがコラボレートしてる」

摩耶「天井下りは肩身狭そうだけどね。」

神姫「ホームなのにアウェー感が半端ないわね」

【夜行さん】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。妖怪たちが深夜の町を練り歩く現象を「百鬼夜行」というのだ。この行列に出会った人間は、近いうちに死んでしまうといわれたのだ。そのため昔の人々は百鬼夜行が行われる夜は、家の外を歩かないようにしていたのだ。」

悠「っか、ここに百鬼夜行が出来上がってる」

サタン「我も負けじと浮くのだ」

悠「浮かんでいい」

スキュラ「私も張り付けますよ」

悠「着かんでよろしいっての」

千世子「この「百鬼夜行」の語源になったといわれるのが、主に四国北東部の徳島県に伝わっている妖怪「夜行さん」なのだ。夜行さんは一つ目でひげをたくわえ、手に毛が生えた鬼の姿をしているのだ。深夜になると「首切れ馬」という首のない馬に乗り、町をうろつきまわるのだというのだ。」

ベヒモス「僕は無理モス」

摩耶「天井を引っ張り落とすことはできそうだけどね」

天魔「空こそ天狗の領域。落とされはせんぞ!!」

悠「饅頭、ぽい」

天魔「甘いのーっ!」
バッ!

神姫「自分から降りたわね」

千世子「町を歩く夜行さんに出会った人間は、地面に投げつけられるか、最悪の場合は首切れ馬に蹴り殺されてしまうのだ。もしも夜行さんに出会ってしまったら、地面にひれ伏して、草履を頭の上に乗せておけば助かるといわれているのだ。」

ブラフマン「しかし、いやはや、獣から進化、いや神化された方は初めて拝見いたしました」

揺光【そういうお前は蠅……いや、魚?義鷹のような混ざり物でもないのに正体が見えんなんじゃ?】

ブラフマン「私めはブラフマン。ただの矮小で嘘つきな小悪魔でございます。くかききっ。」

天魔「揺光、吹き飛ばすか?」

揺光【山に帰れ】

千世子「ただし同じ徳島県でも、県の北西部にある三好市には、恐ろしいというよりもほほえましい行動をする夜行さんがいるのだ。三好市の夜行さんは節分の夜、食事の話をしている人間の前に現れ、手を差し出しておかずをねだるというのだ。」

悠「馬に乗っておかずをねだる……」

亘理『どうかした?』

悠「つまりは馬に乗って食べ物をねだる……吉音かな?」

摩耶「吉音ちゃんだね」

神姫「確かに吉音ね。」

亘理『こっちはこっちで何かが満場一致した』

千世子「夜行さんや百鬼夜行は、毎月2~3回、決まった日に現れるのだ。その中には、お正月なども含まれており、この夜行さんが現れる日を「夜行日」と呼んだのだ。」

悠「そういえば揺光は何しに来た?」

揺光【別に用事はないが、此れに捕まってしまってな】

天魔「此れとはなんじゃこれとは!」

揺光【それよりも今晩辺りどうじゃ?】

悠「最近暑いからなぁ。」

千世子「夜行日は「忌み日」という日が元になって生まれたといわれているのだ。忌み日とは、年中行事や神様を迎える祭りなど、特別な日に備えて身体を清め、準備する日のことなのだ。人々は忌み日になると仕事を休み、家で静かに暮らしていたのだ。」

神姫「そういう話はどっか他所でやってくれない?」

悠「おれから始めたわけではないんだが」

揺光【男と女がそろえばそういうもんじゃろ?のう?】

摩耶「んー、ケースバイケースかな」

亘理『ガブッ!』
悠「おれをかむのはおかしい」

千世子「しかし、時代が下るにつれて信仰の概念が薄れていったことや、その日その日の運勢を占う方法が日本に広まったことから、次第に忌み日は祭りの準備日ではなく、縁起の悪い人考えられるようになったのだ。こうした悪いイメージから「夜行日」という、夜行さんや百鬼夜行があらわれる日が生まれたというのだ。」

サタン「男と女がそろえば何なのだ?」

天魔「当然決闘じゃな」

悠「脳筋かな?」

揺光【残念で可哀想なだけじゃ。】

天魔「誰が可哀想じゃ!!」

千世子「夜行日のほかにも、夜行さんは節分や大晦日、庚申の日に現れるのだ。庚申の日とは昔の暦で数え方で、60日、または60年ごとに巡ってくる日のことなのだ。この日は夜に眠らず、つつましく暮らすべきとされていたのだ。以上、夜行さんのじゅぎょーだったのだ。」
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