ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「猫じゃ猫じゃ!」
トラ猫『ぐるりゅゅゅっ』

摩耶「めっちゃ喉鳴らしてる」

亘理『冥ちゃんの猫かな』

悠「うへへへっ、猫猫、にゃんにゃん、にゃーーん!」

神姫「……うざ」

【枕返し】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。朝起きたら、布団が蹴飛ばされ、枕があらぬ方向に移動している……寝相の悪い人なら別に珍しくもないことなのだ。だが昔の日本では、この「枕が移動している」という現象を恐れたのだ。人々はこれを、妖怪「枕返し」のしわざと考えたのだ。」

悠「ほふーほふー、猫に興奮してしまったのですにゃん」

亘理『まだ興奮が続いてる?』

悠「大事だにゃん」

摩耶「発剄」
ズンッ!
悠「ぎゃぉん!」

千世子「枕返しは、人間が寝ている間に枕を頭から足元に移動させる妖怪なのだ。日本では、亡くなった人の頭の向きを北向きにする行為を「枕を返す」と呼んだため、この妖怪にも枕返しという名前がついたのだ。枕を動かさない代わりに、寝ている人間の向きを逆向きにする場合もあるのだ。」

悠「おれはしょうきにもどっだばばばっ」

亘理『口の端から泡でてるよ』

悠「これはただの唾液よ」

摩耶「まぁ、口から出てるからそうだろうね」

神姫「汚い」

千世子「枕返しの伝承は日本中にあり、その外見をはっきりといい切ることは難しいのだ。坊主の姿だという伝承もあるし、鳥山石燕の妖怪画集「図画百鬼夜行」では、小さな仁王の姿で描かれているのだ。四国の北西、香川県にある「大窪寺」には、寝ると枕返しが現れる建物があるので、実際に確かめるのがよさそうなのだ。」

悠「おれは朝起きると毛布が枕になってることが多いな」

亘理『どういうこと?!』

悠「いや、毛布をこうぐしゃぐしゃってまとめて」

神姫「それ、寝相が悪いんじゃなくて枕があってないだけでしょ」

悠「枕よりビーズ系のクッションを使った方がいいのかもしれない」

千世子「枕を動かすだけなら害はないように思えるのだが、昔の人々が枕返しを恐れたのには理由があるのだ。日本には「夢を見るのは、寝ているあいだに魂が抜けだして、夢の世界にいっているからだ」という迷信があったのだ。そして枕は、魂が夢の世界と行き来するための道具だと感がえられていたのだ。しかし、寝ている間に枕を返されると、魂は身体に戻れなくなってしまうと考えられたのだ。」

摩耶「丸太とかどう?」

悠「かったいなぁ」

摩耶「棒か何かで叩かれたら一発で目覚めるよ」

悠「特殊訓練か何かかな?」

神姫「石でも良さそうね」

千世子「昔から日本には、枕に関する迷信が多かったのだ。人々は枕を大切に扱い、枕を粗相に扱うことを固く戒めたのだ。もちろん踏んだり蹴飛ばしたりは厳禁なのだ。」

悠「寝返りうつたびに後頭部が裂けそう」

亘理『柔らかいって大事だね』

悠「スパイス・ガール!柔らかいということはダイヤモンドより壊れないということ!」

摩耶「WAAAAAAAAANNABEEEEEEEEE(ワアーナビィーー」

千世子「枕返しの由来にもなった、死者の頭を北に向ける「北枕」の風習は、仏教の開祖である釈迦が、北に頭を向けて亡くなり、安らぎの境地へ達したことに由来するのだ。仏教では釈迦の詩に倣い、亡くなった人を北枕で弔うようになったのだ。つまり北枕は本来、決して縁起の悪いものではなかったが、日本では「北枕」は死者の寝かせ方であることから、生きている人間が来たに頭を向けて寝るのは縁起が悪いとされたのだ。北枕は死者専用の寝方になったのだ。以上、枕返しのじゅぎょーだったのだ。」
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