ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「あ、サガフロしたい」

摩耶「突発的にサガ作品がしたくなる病かな?」

悠「突発的にサガ作品がしたくなる美容だ」

神姫「頭おかしいんじゃ……おかしいわね。」

悠「確定された」

千世子「じゅぎょーしますなのだ。江戸時代後期の画家、鳥山石燕もぬらりひょんを「ぬうりひょん」の名前で描いているが、この二つの妖怪画には、ぬうりひょんの特徴はまったく書かれていないのだ。鳥山石燕は妖怪画に解説文を添えてその由来や特徴などを語ることが多いのだが、妖怪画家としての処女作である「図画百鬼夜行」では、石燕は「画はまた無声の詩とかや」、今風に言うならば「絵は口ほどにものを言う」というスタンスで妖怪画を発表しているため、その一枚であるぬうりひょんにも解説文がまったく書かれていないのだ。」

悠「ぬーらぬーら、ぬらりひょん」

亘理『それだけ聞いたらなんか粘着質な妖怪っぽい。生態的に』

摩耶「ナメクジかな」

悠「あ、吐きそう」

神姫「ホッチキスで口止めるわよ」

千世子「石燕の意図をくんでイラストの内容を分解すると、「画図百鬼夜行」のイラストではぬらりひょんは、駕籠という乗物から降りて、建物の中に入ろうとしている場面が描かれているように見えるのだ。江戸時代には、乗物から降りることを「ぬらりん」といったことから、妖怪研究科の多田克己は「駕籠のような贅沢な乗り物に乗って、遊郭で豪遊している遊び人を皮肉った絵だ」と解釈しているのだ。」

悠「ちょっとした拷問じゃないですか」

摩耶「まぁ、死にはしないし」

亘理『想像したら痛い』

悠「でも、世界には囚人の口を縫い付ける刑務所とかあるからな」

亘理『マジで!?』

千世子「時代は一気に進んで昭和に入るのだ。ぬらりひょんは昭和初期の妖怪画集「妖怪画談全集」に登場。作者の民俗学者、藤沢衛彦は「まだ宵の口の灯影にぬらりひょんと訪問する怪物の親玉」と書いているのだ。怪物の親玉という表現はここで初めて登場するが、なぜ藤沢が「怪物の親玉」と書いたかはまったく不明なのだ。」

悠「そういえばぬらりひょんとか見ないよな。」

摩耶「鏡見たら?」

悠「誰がぬらりひょんじゃい」

神姫「やっぱり化け物」

悠「アイアムヒューマン!」

千世子「現在のぬらりひょん像が定まったのは、さらに50年近くあとの昭和50年前後なのだ。怪奇作家、佐藤有文の子供向け妖怪図鑑「いちばんくわしい日本妖怪図鑑」に、ぬらりひょんは「年の暮れで多忙な家に勝手に上がり込んで座り込む」と解説されているのだ。こうして正体不明の妖怪ぬらりひょんは、「勝手に人の家に上がり込んで茶を飲む、妖怪の総大将」となったのだ。以上、ぬらりひょんのじゅぎょーだったのだ。」
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