ー奇談ー學校へ行こう2

ー教室(3/16/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「肉体強化っての魔法か肉体変化の魔法ってどっちが便利だろうか」

摩耶「僕は肉体変化派かな。」

花描「理由は?」

摩耶「やっぱり大きくなりたいからかな。できたら金剛くんみたいに」

花描「メタモルフォーゼレベルだな。」

千世子「じゃあ今日のじゅぎょーはメタモルフォーゼなのだ」

【メタモルフォーゼ】
歴史上例が少ない「変身」の魔法

悠「メタモルフォーゼ(metamorphosis)は、日本語で変身って意味にだな。」

千世子「アニメや漫画の世界であれば「変身」は定番中の定番ともいえるありふれた魔法なのだ。ところが現実の歴史上では、魔法を使って「変身」に成功した例はなかなか見当たらないのだ。」

神姫「魔女とかなら有りがちな気がするけど」

千世子「そもそも、変身の試みすらされていないのだ。」

花描「「変身」ってのは、それほど難しい魔法なのか?」

千世子「歴史的な経緯をよく調べてみると、どうやら「変身は難しい」というより「需要がなかった」というのが正解のようなのだ。魔法で変身した例はなくても、「変身が絡む創作文学(古典)」は、いくらでもあるのだ。しかし、それらの多くは不幸な結末を迎えるものばかりなのだ」

悠「そういやそうだな。古代ローマのオウィディウスの詩集「変身物語」は、創作として「変身」をネタにした元祖ともいえる作品だな。」

摩耶「変身物語?」

千世子「変身にまつわる数々のエピソードが収録されているのだ。「水に映った自分に見とれて餓死し、そのまま水仙に変身したナルキッソス」に代表されるように、なかなかハッピーエンドとはいかないのだ。」

神姫「それは「ある朝、グレゴール・ザムザが目覚めると自分が巨大な虫になっていることに気がついた」の一節で有名なカフカの変身も、主人公にとっては悲惨な話だわね。」

悠「お前もけっこう本読んでる…あっ…」

神姫「……久しぶりにいったわね。」

悠「謝れば許していただけますでしょうか?」

神姫「ビンタかパンチかは選ばしてあげるわ。」

悠「パン……いや、ビンタで勘弁してください。」

神姫「その心意気は好きよ。」

パアァン!!

摩耶「うわ…」

花描「今のは痛いなぁ…」

千世子「えと…」

神姫「続けてちょうだい。」

千世子「すべては西洋の話で、東洋では少し事情が異なってくるのだ。中国では西遊記をはじめ、変身(変化)の術はたくさん登場するし、日本でも鶴の恩返しなどの逸話は多いのだ。日本や中国では「変身」といってもそんなに悪い話ばかりでもないのだ。日本や中国では、「変身」といってもそんなに悪い話ばかりでもないのだ。以上メタモルフォーゼだったのだ」

悠「っ…奥歯が……」

神姫「自業自得よね」

悠「はぃ…」
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