ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「いやー、じりじりと暑いなぁ」

摩耶「たれ塗る?」

悠「食べないでください!」

神姫「殴るだけよ」

悠「それはそれでつらい」

【犬神】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。犬神は「犬」という名前はついているが、どちらかというとネズミのような小動物の姿をした妖怪なのだ。ただし地域によっては、手のひらほどの大きさの赤黒まだらの犬、または白黒まだらのイタチに似た動物の姿だともいわれるのだ。おもに西日本、特に四国に伝承の多い犬神は、人間に憑りついて害を与えるのだ。」

亘理『しかし暑いねぇ』

悠「まだ五月だぜ?笑っちゃうよな。けけけ」

神姫「……」

摩耶「……」

悠「その目、やめて」

千世子「犬神に取り憑かれた人間は「病気」「犬の真似をする発作」「大飯ぐらい」「ゲテモノ食いになる」などの症状を起こすようになるのだ。また、犬神に憑かれたものの死体には、犬の歯形がつくといわれているのだ。」

サタン「犬にかまれたぐらいで歯形がつくなんて軟弱なのだ」

悠「おれは昔バロンに甘噛みされてシャレにならないくらい出血したことあるけどな」

神姫「それ、甘噛みじゃないでしょ」

悠「いや、本人……本犬は甘噛みのつもりだったろうけど歯が鋭利過ぎて皮膚が裂けたんだ」

摩耶「指を無くさなくて良かったね」

千世子「犬神には、突然憑りつくものと、特定の一族に代々憑りついているものがいるのだ。犬神に取り憑かれたり、犬神を飼っているとされる一族は「犬神使い」「犬神持ち」などと呼ばれるのだ。犬神は、憑りついた人間が「他の家の物が欲しい」と願うだけで勝手にその品物を取ってきたり、憑りついた人間が「憎い」と思ったものに憑りついて、病死させてしまうのだ。」

悠「大丈夫、大丈夫。噛まれたのは腕だから、まぁ、3.4回出血してるんだけどね」

神姫「この場合は悠が学習しないのよね」

悠「おれが身をていして甘噛みのやりかたを覚えさせたといって欲しい」

摩耶「もっと別の方法がいくらでもあったよね」

悠「まぁね」

千世子「犬神持ちの家柄の女性は、他の家に嫁ぐことで、嫁ぎ先の家を犬神持ちにしてしまのだ。新婦に憑りついている犬神は嫁ぎ先の家で分裂し、すべての家族や使用人に一匹ずつ憑りついてしまうのだ。犬神は新しく生まれた子供にも憑りつくので、一度犬神に取り憑かれた家系は、末代まで取り憑かれ続けるのだ。そのため四国や九州の一部地方では、犬神憑きの家との結婚や近所付き合いを拒絶する風習があり、現代でもその傾向が残っているというのだ。」

亘理『悠ちゃんのところの犬って本物の犬?』

悠「本物の犬だよ。子供ぐらいならぜんぜん食い殺せるサイズだけど」

神姫「その例えやめなさいよ」

摩耶「悠くんが死んだらバロンの餌かな?」

悠「犬葬は勘弁!」

千世子「犬神は、妖怪の中では珍しく、人間の呪術によって作ることができるのだ。犬神作成方法のひとつとして有名なのは、犬を首まで地面に埋めて放置し、犬が飢えたところで食べ物を犬の目の前に出し、犬が食べようとした瞬間に首を刎ねて殺すというものなのだ。ほかには、何匹もの犬を争わせ、生き残った一匹に魚を与えてから首を刎ねて殺し、犬にやった魚を自分で食う、という方法も伝わっているのだ。」

悠「しかし、犬は可愛いよな従順で」

摩耶「猫は?」

悠「すごくかわいい」

亘理『鳥は?』

悠「可愛い」

摩耶「ナメク…」

悠「やめて」

千世子「術者は、犬の怨念を利用して犬神を使役するのだ。しかし当然、犬神は自分を造った術者を恨んでいるので術者が隙を見せれば犬神は術者を殺してしまうのだ。以上、犬神のじゅぎょーだったのだ。」
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