ー奇談ー學校へ行こう(2)3
ー教室ー
毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。
悠「冷やし中華はじめてください」
摩耶「好きにして」
悠「わーい、やっらー!」
神姫「アホ?」
悠「だれがアホの子やねん」
【鉄鼠】
千世子「じゅぎょーしますなのだ。琵琶湖の南西にある滋賀県大津市には、園城寺という寺院があるのだ。平安時代末期、この寺には「頼豪」という有名な僧侶がいたのだ。恨みを抱いて死んだ頼豪は、死後に鉄の牙と石のように固い身体を持ったネズミ「鉄鼠」へと姿を変えたのだ。頼豪が妖怪になった姿であるため鉄鼠は「頼豪鼠」とも呼ばれるのだ。」
悠「石のように固いということは石にぶつけたら割れるってことだよな」
摩耶「そもそもネズミを石にぶつけたら潰れると思うけどね」
サタン「残酷なのだ」
悠「もっと残忍なことしてるだろお前」
サタン「我をなんだと思ってるのだ!」
ズドンッ!
千世子「鉄鼠は、園城寺と激しく対立していた「延暦寺」に8万4千匹もの大ネズミを引き連れて襲撃。貴重な仏像や経典を食い荒らしてしまったのだ。恐れをなした延暦寺は、社を建てて頼豪を神として祀ると、ようやく頼豪の怨念が静まったといのだ。」
悠「……」
ビクンビクン
摩耶「死にかけの魚みたい」
悠「やっぱり……残酷」
神姫「残酷ではないでしょ、暴力的ではあるけど」
サタン「じごーじとくなのだ。」
千世子「頼豪の恨みの原因は、ときの天皇だったのだ。頼豪は天皇のために術を使った見返りに、「戒壇」という、僧侶に戒律を授ける場所を作る許可をもらおうとしたのだ。ところが、頼豪と園城寺が仏教界で大きな権威を得ることを嫌った延暦寺の反発で、この話は破談となるのだ。頼豪の恨みは延暦寺に対して爆発したわけなのだ。」
亘理『……』
摩耶「亘理ちゃん、ずいぶんと静かだね」
亘理『いや……すごく隣が気になって』
ブラフマン「私のことならお気になさらず」
悠「なんで同じように天井にぶら下がってる」
千世子「余談だが、事件の当事者である延暦寺には、これとは大きく違う伝承が残されており、鉄鼠は延暦寺の僧侶が呼び出した大猫によって倒されたというのだ。一般の伝承では延暦寺が手を出せなかったはずの鉄鼠を、延暦寺が自力で退治したことになっているのだ。」
ブラフマン「皆さんのお邪魔にならないようにここで見学させてもらっているだけですよ。ぎぎぎっ。」
亘理『私は凄く気になる。』
悠「大蝙蝠か何かと思っとけ」
亘理『ぜんぜん違うよね?!』
ブラフマン「吸血鬼ではなく悪魔です」
千世子「ネズミは古来より、人間に害を与える動物だったのだ。農作物や農具、タンスや柱などを齧って荒らすネズミに、人間は長いあいだ頭を悩ませてきたのだ。地方によっては、ネズミのことを「アネサマ」「ヨモノ」など、別の名前で呼ぶ風習もあるのだ。鼠の名を直接口にしないことで、ネズミの被害を遠ざけるのが狙いなのだ。」
悠「おれも後楽のことをボケとかカスとかっていったら被害を遠ざけられるだろうか」
摩耶「無理でしょ」
神姫「無駄でしょう」
亘理『言われ慣れてそう』
悠「だよねー」
千世子「このように人間に嫌われてきたネズミだが、中にはよいネズミもいたのだ。代表的なのは、七福神のひとりで食物や財産の神「大黒天」の使いとされているネズミたちなのだ。特に白いネズミは「大黒鼠」と呼ばれ、縁起の良いものだとされたのだ。以上、鉄鼠のじゅぎょーだったのだ。」
毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。
悠「冷やし中華はじめてください」
摩耶「好きにして」
悠「わーい、やっらー!」
神姫「アホ?」
悠「だれがアホの子やねん」
【鉄鼠】
千世子「じゅぎょーしますなのだ。琵琶湖の南西にある滋賀県大津市には、園城寺という寺院があるのだ。平安時代末期、この寺には「頼豪」という有名な僧侶がいたのだ。恨みを抱いて死んだ頼豪は、死後に鉄の牙と石のように固い身体を持ったネズミ「鉄鼠」へと姿を変えたのだ。頼豪が妖怪になった姿であるため鉄鼠は「頼豪鼠」とも呼ばれるのだ。」
悠「石のように固いということは石にぶつけたら割れるってことだよな」
摩耶「そもそもネズミを石にぶつけたら潰れると思うけどね」
サタン「残酷なのだ」
悠「もっと残忍なことしてるだろお前」
サタン「我をなんだと思ってるのだ!」
ズドンッ!
千世子「鉄鼠は、園城寺と激しく対立していた「延暦寺」に8万4千匹もの大ネズミを引き連れて襲撃。貴重な仏像や経典を食い荒らしてしまったのだ。恐れをなした延暦寺は、社を建てて頼豪を神として祀ると、ようやく頼豪の怨念が静まったといのだ。」
悠「……」
ビクンビクン
摩耶「死にかけの魚みたい」
悠「やっぱり……残酷」
神姫「残酷ではないでしょ、暴力的ではあるけど」
サタン「じごーじとくなのだ。」
千世子「頼豪の恨みの原因は、ときの天皇だったのだ。頼豪は天皇のために術を使った見返りに、「戒壇」という、僧侶に戒律を授ける場所を作る許可をもらおうとしたのだ。ところが、頼豪と園城寺が仏教界で大きな権威を得ることを嫌った延暦寺の反発で、この話は破談となるのだ。頼豪の恨みは延暦寺に対して爆発したわけなのだ。」
亘理『……』
摩耶「亘理ちゃん、ずいぶんと静かだね」
亘理『いや……すごく隣が気になって』
ブラフマン「私のことならお気になさらず」
悠「なんで同じように天井にぶら下がってる」
千世子「余談だが、事件の当事者である延暦寺には、これとは大きく違う伝承が残されており、鉄鼠は延暦寺の僧侶が呼び出した大猫によって倒されたというのだ。一般の伝承では延暦寺が手を出せなかったはずの鉄鼠を、延暦寺が自力で退治したことになっているのだ。」
ブラフマン「皆さんのお邪魔にならないようにここで見学させてもらっているだけですよ。ぎぎぎっ。」
亘理『私は凄く気になる。』
悠「大蝙蝠か何かと思っとけ」
亘理『ぜんぜん違うよね?!』
ブラフマン「吸血鬼ではなく悪魔です」
千世子「ネズミは古来より、人間に害を与える動物だったのだ。農作物や農具、タンスや柱などを齧って荒らすネズミに、人間は長いあいだ頭を悩ませてきたのだ。地方によっては、ネズミのことを「アネサマ」「ヨモノ」など、別の名前で呼ぶ風習もあるのだ。鼠の名を直接口にしないことで、ネズミの被害を遠ざけるのが狙いなのだ。」
悠「おれも後楽のことをボケとかカスとかっていったら被害を遠ざけられるだろうか」
摩耶「無理でしょ」
神姫「無駄でしょう」
亘理『言われ慣れてそう』
悠「だよねー」
千世子「このように人間に嫌われてきたネズミだが、中にはよいネズミもいたのだ。代表的なのは、七福神のひとりで食物や財産の神「大黒天」の使いとされているネズミたちなのだ。特に白いネズミは「大黒鼠」と呼ばれ、縁起の良いものだとされたのだ。以上、鉄鼠のじゅぎょーだったのだ。」