ー奇談ー學校へ行こう(2)3

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ガチで冷たい物がおいしいな」

摩耶「氷結晶」

悠「かき氷にしてくれ」

摩耶「野菜と生卵を乗せて」

神姫「中国だとその食べ方、普通らしいけどね」

千世子「酒呑童子は多くの鬼を部下にしていたのだ。その中で特に有名なのが茨木童子なのだ。一説によれば茨木童子は床屋に拾われた捨て子だったのだ。あるとき童子は間違って客の額を剃刀で切ってしまい、舐めた血の美味さが忘れられなくなって鬼になったというのだ。」

悠「100歩譲って野菜と卵の組み合わせならいいがあっちは甘いのに生卵落すだろ。あれは無理」

亘理『甘いかき氷に生卵落すの?!』

悠「それで最初に崩して氷と混ぜるらしい」

亘理『なんで?』

悠「黄身が凍って卵の味がよく分かるようになるとか」

千世子「茨木童子は「鬼の手」という伝承の元になった鬼として有名なのだ。大江山で酒呑童子が源瀬光らと戦って敗れたとき、茨木童子はかろうじて逃げ出すことに成功したのだ。そのあと茨木童子は愛宕山という山に住みかを移し、あいかわらず京の都で狼藉を繰り返していたが、そこを瀬光の部下に見つかってしまうのだ。」

サタン「そもそもなんだかき氷に生卵?」

摩耶「もともと蒸し暑い地域だからね。かき氷でも栄養を取れるようにってことでなんだよ」

神姫「へぇ、それは知らなかったわ」

悠「ふふっ」

神姫「なに?」

千世子「茨木童子は美女に化けて人間を騙し、その驚異的な跳躍力で山へと連れ去って食べるということを繰り返していたのだ。ところがある日、茨木童子が襲った相手は、憎き源頼光の部下、「渡辺綱」であったのだ。茨木童子が渡辺綱の体を掴んで愛宕山へ連れ去ろうとすると、渡辺綱は名刀「髭切」で童子の腕を切り落として何を逃れるのだ。このとき切り落とした茨木童子の腕は、なんと7日間も動き続けたというのだ。」

悠「いや、なんでもございませんですけど」

サタン「喋り方がおかしいのだ」

悠「おかしけりゃ笑え」

サタン「サタンパンチ」
ズドォン!
悠「おぶぁっ!」

千世子「腕を失った茨木童子は、渡辺綱の屋敷に忍び込んで腕を取り返そうとするが、渡辺綱が張り巡らせた結界に阻まれて屋敷に侵入することができない。そこで茨木童子は「渡辺綱の母親に化けて泣き落とす」という策を使ってなんとか腕を取り戻し、そのままどこかへ去っていったというのだ。」

摩耶「まぁ、僕としては普通の甘いかき氷がいいけどね」

悠「おれの心配して……」

神姫「吐いたら飲ますわよ」

悠「優しさゼロ!」

摩耶「優しさと切なさと心強さと~」

千世子「茨木童子が渡辺綱を襲って腕を切り落としたという事件が起きた場所の候補が二つあるのだ。ひとつは芥川龍之介の「羅生門」の舞台となったことで有名な、京都の南側の入り口である「羅城門」。もひとつが京都の中心部に近い「一条戻り橋」という場所なのだ。」

悠「一条戻り橋のネタの話は多いよな」

亘理『そうなの?』

悠「蟲師とか」

摩耶「なんで実写映画しちゃったの?」

悠「過ちだな」

千世子「一条戻り橋は、京都一条堀川にかかっていた橋で、陰陽師が橋占いをする場所だったのだ。一条戻り橋の「もどり」は「もとおり」からきた言葉で、本来の意味は神の意思を占いとう、という行為をさしているのだ。ところが伝説によると、死者の棺を運ぶ行列が一条戻り橋を通りかかったとき、死者が一時的によみがえって遺族と会話をするという奇跡が起きたというのだ。これ以降、一条戻り橋は、あの世からこの世に「戻る」橋だと考えられるようになったのだというのだ。以上、酒呑童子&茨木童子のじゅぎょーだったのだ。」
1/100ページ
スキ