ー奇談ー學校へ行こう(2)2

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「あー、タコ焼き食べたい」

摩耶「いいね、銀だこ買ってきてよ」

悠「あ、おれが?」

神姫「言い出しっぺがやるべきでしょ」

悠「食べたいっていっただけなんだが……」

【絡新婦】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。ジョロウグモとは、黄色と黒の虎模様が特徴の大型の蜘蛛なのだ。だがもちろん、じゅぎょーするのはたんなる虫のことではないのだ。今回じゅぎょーするのは、静岡県をはじめ全国各地に伝承が残されている、妖怪「絡新婦」なのだ。」

悠「雨は何蜘蛛なんだっけ?タランチュラ?」

雨「違う」

悠「カトウヅケグモ?」

雨「どんな蜘蛛だ!」

摩耶「きっと説明聞いたら怒ると思う」

千世子「絡新婦は、昼の間には美しい女性の姿をしているのだ。だが夜になると大きな蜘蛛に変身し、人間を襲うのだ。また、絡新婦が青い煙を吐くと、その煙は小さな蜘蛛に変化するのだ。この小蜘蛛はひとに噛みつき、生き血を啜るというのだ。また、武士の男性に結婚を迫ったり、子連れの女性として現れることがあるのだ。」

サタン「説明聞いたら怒る蜘蛛ってなんなのだ?」

悠「カトウヅケグモは鳥の糞にそっくりな蜘蛛だ」

雨「ぶっ殺す」

悠「だって実際にいるんだもん!!」

雨「だからって私はそんな種類じゃない!!」

千世子「静岡県の東部、伊豆半島のど真ん中にある「浄蓮の滝」は、絡新婦が住む滝だという伝承があるのだ。それによると、この滝の近くで男が休んでいると、どこからか蜘蛛が現れて、男の足に糸を巻き付けたのだ。男がその糸を近くの切り株に巻き付けると、切り株はメリメリと音をたて引き抜かれ、滝つぼに飲み込まれたというのだ。」

悠「そういえばあやかし屋にいる絡新婦に似たようなことされたわ。最終的には犬の糞が飛んでいったけど」

摩耶「今日はやたら糞の話が出るね」

悠「不思議だな」

神姫「せめて蜘蛛の話にしなさいよ」

悠「雨は結局アシダカ軍曹かなんかか?」

雨「なんでもいいでしょ」

千世子「これに似た話は静岡だけでなく、日本各地にあるのだ。宮城の賢淵伝説では、水中に木が引きこまれた後に、「かしこい、かしこい」と、どこからか声が聞こえたというのだ。これが賢淵という名前の由来で、声の主は水蜘蛛であったと伝えられているのだ。」

悠「なんでもいいっちゃいいんだけど、気になるよな」

亘理『気になるけど蜘蛛の姿には戻って欲しくないかな』

悠「もっとナイスバディになってくれってさ」

摩耶「それは悠君の願望だよね」

悠「おれはこれはこれで有りだと思う」

千世子「蜘蛛の妖怪には大蜘蛛というものもいるのだ。この二種類の蜘蛛妖怪の違いは大蜘蛛は山の精霊ともいうべき存在だが、絡新婦は水との関係が深いことなのだ。」

雨「なんかバカにしてるわね?」

悠「ちんちくりんとは思ってないぞ」

雨「いってるじゃない!」

悠「思ってないって……たぶん」

亘理『たぶんって』

千世子「もともと蜘蛛は、ヘビ、ウナギ、魚、カワウソなどとともに、水の神が姿を変えたもの、または水神の使いと信じられていたのだ。水神は女神などの姿で現れることも多く、妊娠安産を祈る習慣とも関係が深いのだ。絡新婦のような水の蜘蛛が女性に化けるのは、水神の女性神としての性質を受け継いでいるからなのだ。」

悠「神って感じはしないけどな」

神姫「蜘蛛は悪名とかのが強く出るのよ」

雨「蜘蛛の良さが分からないのは何故なんだか…」

悠「良さ?」

摩耶「良さ…」

雨「全員で首をかしげるな!」

千世子「時代が進むと、蜘蛛はその姿の奇怪さから妖怪的な性質を強めていったと思われるのだ。しかし蜘蛛の水神的な特徴は残されたのだ。絡新婦が女性に変身するのは、蜘蛛が神として信仰されていた時代の名残なのだ。以上、絡新婦のじゅぎょーだったのだ。」
78/100ページ
スキ