ー奇談ー學校へ行こう(2)2

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「般若と龍だとどっちがカッコいいかな」

神姫「龍」

摩耶「即答」

千世子「神姫ねぇちんはドラゴン大好きなのだ。」

神姫「西洋竜じゃなくて和龍だけどね。」

【手長足長】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。手長と足長は、長野県や岐阜県、東北地方などに伝わる二人組の妖怪なのだ。その外見は名前通りで、手長は両手だけが異常に長く、足長は両足だけが異常に長いのだ。それ以外の特徴は人間とほとんど同じで、場合によっては手長足長を夫婦だと伝えている物語もあるのだ。」

サタン「はんにゃって猫か何かなのだ?」

スキュラ「鬼……オーガの一種です。」

悠「細かいこと言えば違うけどな」

摩耶「龍虎なら分かるけど、なんで龍と鬼?九頭竜家と百目鬼家?」

悠「いや、桐生さんか真島さんか」

千世子「秋田県と山形県の境「鳥海山」にあらわれる手長と足長は、山から下りてきては乱暴を働き、ときには人を食い、船を襲う無法者だったのだ。そこで鳥海山の神は、三本足の霊長に見張りをさせ、手長足長が出てくれば「有む」、いなければ「無や」といわせて、人間たちに知らせたというのだ。この手長足長は、のちに偶然この地を訪れた「慈覚大師」という僧侶によって退治、身四苦は会心させられているのだ。」

摩耶「好きな方でいいと思う」

悠「どっちも好き」

神姫「背中に般若彫って正面に龍でも彫ったら」

悠「彫るのはちょっと……痛いの怖いし」

摩耶「ビビりか」

千世子「九州には名前が逆になった「足長手長」という妖怪の伝説があるのだ。彼らは足長が手長を背負い、手長が手を伸ばして魚を捕まえるという器用なコンビプレーを見せるのだ。長崎県の伝承によると、足長を見かけると、どんなに満天の星空だったとしても、大雨が降るとされているのだ。」

悠「シールでいいよな、刺青シール」

摩耶「そこまでする意味は?」

悠「……雰囲気を楽しみたい?」

神姫「もうヤクザに就職したらいい」

悠「いやだよ!真人間なのに!」

千世子「1721年(江戸時代の中期)に書かれた百科事典「和漢三才図絵」には、「長臂」と「長脚」という手長足長に似た妖怪がおり、それぞれ「手長国」「足長国」という国に住んでいるというのだ。この本によれば、手長は手の長さが2丈(約6m)あり、足長は足の長さが3丈あるそうなのだ。」

神姫「は?」

摩耶「あ?」

サタン「はぁ?」

スキュラ「え?」

亘理『ないない』

千世子「手長足長のルーツは、日本最古の歴史書「古事記」までさかのぼるのだ。複数の頭を持つ大蛇ヤマタノオロチの神話で、ヤマタノオロチに娘たちを食われ続けていた老夫婦、手名椎命(てなづちのみこと)と足名椎命(あしなづちのみこと)が、手長足長の原型だと考えられているのだ。長野県では両者は「諏訪明神」という神の家来として信仰されているのだ。」

悠「全否定か!」

ベヒモス「本当の真人間は自分で自分のことを真人間なんて言わないモス」

悠「アッハイ」

神姫「指とか落とせばいいのに」

悠「なんでよ!」

千世子「また、平安時代の女流作家「清少納言」が書いた有名な随筆「枕草子」には、天皇の暮らす清涼殿に手長足長の描かれた障子があることが書かれているのだ。不老長寿の神仙とされていた手長足長の姿を描くことで、天皇の長寿を願ったというのだが、実はこの障子に描かれた手長足長も、手名椎命と足名椎命が元になっているのだ。以上、手長足長のじゅぎょーだったのだ。」
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