ー奇談ー學校へ行こう(2)2

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ミカンが安売りしてた」

摩耶「どこで?」

悠「リッカのところ」

亘理『女ぁ?』

悠「店員が女である店なんて世界中何百万とあるからなっ!!」

【天狗】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。妖怪研究科は、何百、何千と存在する妖怪のうち、とくに有名な三種の妖怪を「日本三大妖怪」と呼ぶことがあるのだ。その三体とは鬼、河童、そして今回じゅぎょーする天狗なのだ。」

神姫「安いってどのくらい?」

悠「一箱千円」

神姫「……それ、大丈夫なの?」

悠「食ったけど平気だったぞ。まぁ、サイズがバラバラなのが気になるんだけど」

サタン「食べていいのだ?」

千世子「この三大妖怪の中でも天狗は特別な存在だといえるのだ。鬼や河童が中国やインドなどの妖怪に影響を受けて、しばしばその姿や能力を変えているのに対して、天狗はその由来こそ中国にあるものの、日本に入ってからは外国の影響をあまり受けていないからなのだ。天狗は日本の険しい山が育てた、日本のオリジナルの妖怪なのだ。」

悠「構わんぞ」

サタン「わーいなのだ」

摩耶「サイズバラバラっていうか……」

悠「どした?」

摩耶「オレンジ入ってたよ」

千世子「天狗の外見は、お祭りでかぶるお面などでよく知られている通りなのだ。顔は真っ赤で、鼻が「高い」というよりは「長く」伸びているのだ。背中には鳥の羽が生えているものと生えていないものがあるが、どちらも神通力で自由に空を飛ぶのだ。」

悠「えっ」

神姫「こっちにはポンカン入ってたわよ」

悠「……」

摩耶「柑橘系のあまりものが全部放り込まれてない?」

悠「そういえば……ミカンとか一箱買わないっていわれたわ。」

千世子「服装は、主権道という宗教の修行者「山伏」が着る服と同じ全く同じものなのだ。腰には兵法の奥義書「虎の巻』を携え、手には山伏と同じように「錫杖」という杖や、ほら貝という巨大な貝で作った笛、羽で作ったうちわを持っているというのだ。肩にはわらなどで編んだ雨具「蓑」を身につけることがあるのだ。この蓑には着用者の姿を見えなくする効果があり「隠れ蓑」という言葉の語源にもなったのだ。」

亘理『でも、これはこれでありじゃない?』

悠「価格的には余裕で千円超えてるしな。」

サタン「むしゃむしゃっ。」

悠「皮ごと食うなよ」

神姫「栄養学的には皮ごとのがいいらしいけどね」

千世子「天狗に気にいられた人間は、天狗から剣術を教わったり、人間離れした怪力を授かることがあるのだ。平安時代末期に活躍した「牛若丸」こと「源義経」は、幼いころに天狗に育てられ、剣術を教わったという言い伝えがある人物なのだ。」

サタン「もう一個……がぶっ……ぶーっ!」

悠「ぎゃーっ!目ぎゃっーーーー!!」

摩耶「あ、すっごいシトラスの香り」

神姫「なに食べたの」

サタン「こへっひゅっふぁい…」

摩耶「あ、レモン」

悠「め゛っぎゃっぁ!!」

千世子「あんちん、うるさいのだ。天狗に会いたい場合は、日本各地にある「天狗松」や「天狗杉」と呼ばれる木のありかへ行くといいのだ。これらの木はどれも樹齢数百年の立派な木ばかりで、民衆は、天狗はこのような立派な木に住んでいると考えたのだ。今日のじゅぎょーはここまでなのだ。」
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