ー奇談ー學校へ行こう(2)2

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ざむ゛いぃ…」

摩耶「唐辛子すりこむ?」

悠「すりこみません」

神姫「シリカゲルと水」

悠「それ、大惨事」

【狐火】

千世子「正体不明の火や灯りといった現象は、古今東西でよく語り継がれる怪奇現象なのだ。例えば西洋のウィル・オ・ウィプスやセント・エルモの火、最近ではUFO目撃談もその中に吹くんでいいのかもしれないのだ。日本においても例外ではなく、沖縄を除く全国にみられるのが、狐の灯す火だといわれる「狐火」なのだ。」

神姫「温まるわよ」

悠「火傷するのはちょっと」

亘理『毛布巻いとくといいんじゃない?』

悠「100%寝るぞ」

亘理『そんな言い切られても…。』

千世子「狐という動物は火を灯すものだといわれているのだ。狐が火をつける方法については多くの説があり、狐の吐く息が光るとか、尾を打ち合わせると火が起きる、光の玉を持っている、などがあげられるのだ。また「狐の嫁入り」といって、狐たちの結婚式で行われる提灯行列が狐火の原因だともいうのだ。」

悠「火であぶるのもなしな」

摩耶「チッ」

悠「今した打ちした」?

摩耶「さぁ鳥の声じゃない?」

悠「そっか。」

千世子「ただし狐火が現れる場合でも、同時に狐が見られることはあまりないのだ。つまり火の玉が狐の仕業だという証拠はないのだ。古来より狐には不思議な力があるとされ、そのため正体不明の火の事を、狐の仕業と考えたのかもしれないのだ。」

サタン「熱波を当てるのはどうなのだ?」

悠「お前の感覚の熱波を当てられたら骨も残らない気がする。」

サタン「試してみるのだ」

悠「試すかバカ野郎」

アリス『ちぇっ』

千世子「東京の王子稲荷神社には、定期的に狐火が見られるという伝承があったのだ。稲荷神社に祀られている稲荷伸は、狐を神の使いとするのだ。王子稲荷は関東の稲荷神社の棟梁であり、関東一円の狐を統べるともいわれたのだ。」

悠「いま、誰かががっかりしたよな」

摩耶「さぁ、鳥の声じゃない。」

悠「そっか」

亘理『それパターン?』

悠「笑いの基本は繰り返し」

千世子「毎年大みそかの晩になると、関東の狐たちは王子稲荷に参詣し、官位をさずけてもらうのだ。当時の王子稲荷の周囲は一面の田畑であり、その中に一本の榎の大木があったのだ。狐たちはこの木の下で衣装を整え、稲荷神社に参拝するのだ。このとき、大勢の狐たちが火を灯して田畑に提灯行列を作る様は、他では見られない壮観な光景だったと伝えられているのだ。土地の者はその火を数えることによって、翌年の豊作の豊凶を占ったそうなのだ。」

神姫「つまり分かっててボケてるのよね。」

悠「おれは天然ではないからな。もし天然だったらもう違うファンがキャーキャー言ってるに違いない」

摩耶「不意にゴキブリとかみちゃったときの悲鳴だよね。」

悠「……それはそれで」

亘理『悠ちゃん?』

悠「コホンコホン」

千世子「王子稲荷の狐火はとても有名で、歌川広重の浮世絵「名所江戸百景」にも描かれているのだ。今では狐が衣装を整え榎も道路拡張のさいに切り倒され、この伝説に由来した装束稲荷神社と「装束榎」という碑が残るだけだが、平成5年より「狐行列」と呼ばれる祭りも行われているのだ。大晦日の晩、狐の面に裃姿の人々が、王子の狐たちにならって装束神社から王子稲荷までの道のりを練り歩くのだ。以上、狐火のじゅぎょーだったのだ。」
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