ー奇談ー學校へ行こう(2)2

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「台風18号が完全に日本横断コース」

摩耶「嵐の前の静けさかやたら晴れてるよね」

神姫「連続で夏日は遠慮したいわ」

悠「暑かったら脱いだらイイのさ」

亘理『脱いだら寒かったりするんだよね。』

【石距(てながだこ)】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。日本の食卓でもおなじみの軟体動物「タコ」。日本近海には様々な種類のタコがいるのだ。江戸時代の人々はタコの中には蛇が変身したものがいると考えていたのだ。それが江戸時代中期にかかれた百科事典「和漢三才図会」に登場する妖怪「石距」。見慣れない漢字だが、これで「テナガダコ」と読むのだ。」

悠「寒いのは……嫌だな」

神姫「これからどんどん寒く凍えるから歓喜して待ちなさい」

悠「悲しみしかない…」

摩耶「鍋とか食べれるよ」

悠「タコしゃぶいいな」

千世子「和漢三才図会以外にも、蛇が蛸に変化するという伝説はたくさん存在するのだ。その内容のほとんどは、多少違いはあるが「海中に入った蛇の尾が裂けて、8本の足になる」というものなのだ。1596年にかかれた「義残後覚」という本には「水中を泳いでいた体長2~3mほどの大蛇の身体が、途中から縦に裂けて8本の足のようになり、タコに進化した」という話が書かれているのだ。また、江戸時代後期にかかれた随筆「甲子夜話」には、海を泳いでいた蛇の尾がいしにぶつかり、尾が8つに裂けたという、話があるのだ。」

スキュラ「イカにしときませんか?」

悠「スキュラの触手はタコなのか?」

スキュラ「タコです」

摩耶「あ、ホントにタコなんだ」

スキュラ「昔、検査したらタコと判定されましたから」

千世子「これらの物語のタコは、現代人の目線で見ると「蛇が蛸に変わった」のではなく「蛇の尾が裂け、タコのような見た目になった」だけのように思えるのだ。しかし「海に落ちた蛇を引き上げてみたらタコに変わっていた」という言い伝えや、「足の本数が多いタコや少ないタコは蛇が化けたものである」という俗説もあるのだ。蛇がタコに変化するという怪異は、日本中で少なからず信じられていたようなのだ。」

神姫「検査したの?」

スキュラ「気になったもので」

悠「DNA検査みたいなもんか」

亘理『ああ、アレって風邪を引きやすいとか全部わかるらしいね』

摩耶「知りたくなかったようなことも分かったりしてね。」

千世子「蛇はタコ以外の動物に変化することもあるのだ。1500年代前半(戦国時代中期)にかかれた「塵添壒囊抄」によれば、蛇がウナギに変化することもあるというのだ。」

悠「そういうの怖いよな」

神姫「だからって人間ドックとかを嫌ってガンとかが手遅れで見つかるのよね」

悠「一番シャレにならんパターンだぞ、それ」

摩耶「悠君はちゃんと検査しとかないと内臓ぼろぼろだったりするよ?」

悠「や、やめてよー」

千世子「蛇が変化するといわれる妖怪で、おそらくもっとも有名なのは「龍」だろう。長く生きた蛇が神性を手に入れて龍になる、という伝承は、中国や日本で古くから語られてきているのだ。また日本では、そもそも蛇と龍を混同する資料が多く「蛇=龍」と考えることも少なくなかったのだ。」

ベヒモス「内臓にも装甲を張るといいモス」

悠「そんな器用な真似できないわ」

摩耶「手術で金属のプレートをかぶせるとか」

悠「どこのカブト虫だ」

神姫「キャタピラーのが長くつづきだしてるわね。」

千世子「このように」蛇が別の生き物に変身する伝承が多いのは、蛇が「脱皮」をする生き物だからだと思われるのだ。蛇が古い皮を脱ぎ捨てるときに、姿も大きく変わるのではないかと連想された結果、タコやウナギに変身する伝承が生まれたのだろうなのだ。以上、石距のじゅぎょーだったのだ」
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