ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「雨雨ふれふれ真桜さんが部屋から出てきて嬉しいなー。ぴちぴちちゃぷちゃぷらんらんらん。」

摩耶「怪しさ五割り増しだね。」

悠「まぁ、どれだけ冷えててもランランとかないけどな。真桜の場合。」

神姫「テンションがたいところ見たことないわ。」

悠「あれだ。真冬にアイス食ってるときはそこそこテンション高い」

【ヒダル神】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。山登りなどをしているとき、急に気分が悪くなったり空腹にお襲われたりしたことはないだろうか?もしかしたらそれは妖怪「ヒダル神」の仕業かもしれないのだ。」

悠「崖から突き落とされたり樹海に放置されたときはそんな感じになったわ」

摩耶「ヒダル神だね」

亘理『違うと思うよ』

サタン「もっと別の呪いなのだ?」

亘理『いや、そういうんじゃなくてね……』

千世子「九州を始め、主に西日本に伝承に残るヒダル神は、いわゆる憑き物の一種なのだ。主に山間部や道の交わる交差点、人が死んだ場所などに出現するというのだ。このヒダル神に憑かれてしまうと、動くことすら困難なほどの空腹に見舞われ、そのまま死んでしまうことまであるという恐ろしい妖怪なのだ。なおヒダルは「ダルイ」「ヒダルイ(ひもじい)」からきた名称だといわれているのだ。」

悠「……」

摩耶「どうかした?」

悠「ゆえにはヒダル神が常についているんじゃないかな」

神姫「餓鬼じゃない?」

悠「まぁ、似たようなもんか」

千世子「もしこの妖怪に憑かれたら、食べ物を口に入れるか藪に投げると回復するといわれているのだ。食料がない場合でも、手のひらに指でコメの文字を書き、それを飲み込んでも効果があるらしい。ヒダル神の伝承が伝わる地域の人々は、ヒダル神対策として、弁当をひと口分だけ残したり、余分に持っていったというのだ。」

摩耶「動かなくなることはないから単にお腹が空いてるだけだよきっと」

悠「それはそれで引っかかるんだが」

スキュラ「一度満足するまで食べさせてあげてはいかがいですか?」

悠「その一回で破産する。」

摩耶「食べてるうちにお腹が空いて無限ループかな」

千世子「高知県や長崎県などでは、峠や道の橋に柴折様と呼ばれる神を祭る祠が点在していて、この祠の前を通るときに柴を折ってお供えすれば、ヒダル神に憑かれずに済むといわれていたのだ。」

ベヒモス「お腹がすいたら石を食べればいいモス。」

スキュラ「塩水を飲むのもいいですね。」

悠「塩水はともかく石食えるのはある意味無限食糧だな」

ベヒモス「本当はもっとちゃんとした鉱石がいいモス。あと、コンクリはマズいモス」

摩耶「へー、やっぱり違いはあるんだ」

千世子「ヒダル神の正体は「変死者」「非業の死を遂げた人間」といった浮かばれない霊であるとされるほか、山の神や水の神だと伝える地域もあるのだ。妖怪研究科の村上健司は、山に出現するヒダル神の正体は「低血糖状態(いわゆるハンガーノック)」「二酸化炭素中毒」などではないかと推測しているのだ。」

悠「低血糖になったらカエルを食えばいい」

亘理『どういうこと?!』

悠「帝王はそうやって生き延びたのだぁァ!」

亘理『そんな帝王嫌!!』

悠「いや、ディアボロさんは偉大ですよ。」

千世子「基本的にヒダル神は、人間に憑りつく幽霊のような妖怪だが、滋賀県と三重県の境にある御斎峠(おとぎとうげ)には、物理的に人間を襲うヒダル神の伝承があるのだ。その物語によると、朝方山を通っていた旅人の前に、腹を出した姿のヒダル神が現れて「茶づけは食べたか?」と質問するのだ。旅人が、「食った」と答えると、ヒダル神は襲い掛かり旅人の腹を引き裂いて胃に残った米粒を食べるというのだ。ちなみにこの御斎峠は、織田信長が暗殺された本能寺の変の後、徳川家康が領地に逃げるときに通行しており、物理的か憑依的かは不明だが、一行がヒダル神に襲われたとされているのだ。以上、ヒダル神のじゅぎょーだったのだ。」
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