ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「とりあえず、もう逃がしてやればいいんじゃね?」

メフィスト「生態系の破壊はいけマせーん」

悠「じゃあ、自分でどうにかするか義鷹に食ってもらえ」

摩耶「真の意味の雑食義鷹さん」

亘理『扱いがポリバケツみたくなってるけどね』

【隠神刑部狸】

千世子「じゅぎょーするのだ。隠神刑部狸は、愛媛県に存在したという伝説の化け狸なのだ。彼は狸の軍団を率いて、大名家の御家騒動に介入したという講談で知られているのだ。この古狸は、別名を八百八狸といい、四国に808家ある狸一族の頂点に君臨していたのだ。刑部とというのは、この地方の殿様の先祖から貰った地位なのだ。少なくとも1000歳を超えるこの長老は、土地の人間からも尊敬を集めていたほどの偉大な狸なのだ。」

悠「狸……タヌキコロス」

サタン「悠から殺意の波動が漏れているのだ。」

摩耶「狸というワードだけでこの状態になるようになったかぁ」

神姫「駒狸さんも「狸」って字が入ってるけどね」

悠「イイ狸はセーフ」

千世子「ところがこの事件が起きた時代の殿様は狸たちを尊敬せず、供え物を収めることもなかったのだ。これに反感を持っていた隠神刑部のもとに耳寄りな情報が飛び込んでくるのだ。殿様の部下が反乱を起こそうとしているのだというのだ。それを知った隠神刑部は、これ幸いと反乱に協力することにしたのだ。」

サタン「ご都合なのだ」

スキュラ「ご都合ですね」

ベヒモス「ご都合モス」

悠「いいだよ。ただ後楽は殺す。皮はいでジョロギアを塗り込む」

亘理『ひぇっ』

千世子「狸に負けてはいられないと、殿様側もスケットを呼ぶのだ。その名も稲生武大夫(いのうぶだゆう)といい、妖怪絵巻「稲生怪物録」で数々の怪異を払いのけ、真桜から不思議な小槌をもらった英雄なのだ。武大夫は隠神刑部のところに直談判に行くが、殿様に腹を立てている隠神刑部はまったく話を聞かず話し合いは決裂。武大夫は謀叛人たちを打ち破って隠神刑部を追いつめ、一族ごと洞窟に封じ込めたというのだ。」

摩耶「後楽さんって最近何してるの?」

悠「パチンコ、競馬、競輪、キャバクラ、他。ブチッ、ブチコロシタイィ……!」
ビジッ!バリリッ!

亘理『悠ちゃんが人間をやめようとしている気がする。』

摩耶「アレが真の人間の姿なんだよ。枷から解き放たれたリリンの産んだ……」

神姫「それなんてエヴァ?」

千世子「この話には様々な亜種があるのだ。稲生武大夫が持っていたのが木槌ではなく、九州の神社で授かった杖であったり、そもそも武大夫が登場しないのもあるのだ。」

悠「フシュー、フシュー」

ベヒモス「火でも噴きそうなのだ。」

摩耶「なんか甘いもの食べさせたら落ち着くから平気平気」

神姫「どんな症状なんだか」

亘理『砂糖水でもいい?』

千世子「中には隠神刑部狸が殿様側で、謀叛人たちと敵対している場合さえあるのだ。このバージョンでは、犬の乳で育てられたため、犬を苦手とする狸の術が効かない謀叛側の武士後藤小源太と、お互い手出しをしないよう過去に約束していたせいで、狸たちは小源太に手を出せない。それならば、と別の謀叛人を懲らしめようとするが、逆に狸の悪行と糾弾され、謀叛側を余計に勢いづかせてしまうのだ。」

悠「砂糖水っておれはカブトムシか」

摩耶「じゃあ、チョコレート」

悠「うおおぉぉっ!おれは人間をやめるぞ、摩耶ァーーーー!」

亘理『そこまで?!』

神姫「うるさい」

悠「すんません」

千世子「そしてこのときは呼ばれてではなくふらりと城下に現れた稲生武大夫に対して、彼は謀叛側については勝ち目がないと、美女に化けたメス狸を送って骨抜きにしてしまったのだ。だがその後、メス狸の正体を見破った武大夫は激怒、隠神刑部狸たちを洞窟へと封じ込めてしまうのであったのだ。以上、隠神刑部狸のじゅぎょーだったのだ。」
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