ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

一成「あははっ」

七緒「はははっ」

悠「第一声目から出てきてんじゃねぇ!」
ゲシッ!
一成「ケンチンボー!」

七緒「イカに墨を吐きかけられろー」

悠「あいつら何なんだ」

摩耶「暇なんじゃないかな」

【一本だたら】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。奈良県と和歌山県にまたがる果無山脈をはじめとする紀伊半島の一部の地域では、12月20日を「果ての二十日」と呼び、厄日とする習慣があったのだ。なぜなら12月20日は妖怪一本だたらが現れる日なのだ。」

亘理『そういえばなんでイカ墨パスタはあるのにタコ墨パスタはないんだろう』

悠「イカ娘はいるけどタコ娘はいないからだ」

スキュラ「私の仲間ですか?」

悠「……似たようなもんだな」

神姫「色々と間違ってる」

千世子「紀伊半島の広い地域に伝わる一本だタラは、伝承によって外見やその性格はばらばらであるが、ほぼ共通して一本足の妖怪だとされているのだ。12月20日のみ山中に現れて人間を襲ったり、病気にしてしまうのだ。果無山脈周辺に出没する一本だたらは、ひとつの足と皿のような目を持っているのだ。奈良県の伯母峰にあらわれるといういっぽんだたらは、電信柱のような体に目鼻を付けたような姿で、宙返りをしながら移動して一本足の足跡を残すというのだ。」

悠「まぁ、端的に言うとイカスミはうまいけど、タコスミは水っぽくてまずいからだ」

亘理『へー、そうなんだ』

ベヒモス「スキュラは墨を吐けるモス?」

スキュラ「毒なら吐けますよ」

悠「まるで別物」

千世子「なお一本だたらのような一本足の妖怪をそのままずばり「一本足」という名前で伝える伝承は各地にあるのだ。例えば静岡県では、雪が積もった山中で片足だけの足跡が発見されると、一本足の足跡だと考えられたのだ。この伝承では、一本足の正体は片足を斧で切り落として死んでしまった人間の怨念なのだとされているのだ。」

亘理『毒も一応ブレス?』

神姫「毒霧とか毒の息とかいうからブレスでしょ」

悠「おれもため息とかなら吐ける」

摩耶「ダメージもバステも入らないね」

神姫「酸欠になるまで吐けばいいのに」

千世子「こうした一本足の妖怪は、ほとんどの場合、山と密接な関係にあるのだ。古来からの自然信仰の中では「山の神」が一本足とされることが多いため、一本だたらもまた、山の神と何らかのかかわりがあるのではないかと推測されるのだ。」

悠「ああ、でも度数の高い酒ととライターがあれば炎は吐ける」

摩耶「宴会芸」

悠「吐き出すより飲むほうがいいけどな」

神姫「工業用アルコールを?」

悠「そもそも飲み物ではない!」

千世子「奈良県南西部に位置する山「伯母峰」とその周辺地域には「猪笹王」という一本足の妖怪にまつわる伝承があり、この妖怪と一本だたたらを結び付けることが多いのだ。」

摩耶「ジャッキーは飲んでたけど」

悠「飲んでたけども…」

サタン「地獄の銘酒テンペストならあるのだ」

悠「上級呪文みたいな酒だな、おい」

サタン「一飲みで嵐が吹き荒れるのだ。」

千世子「有名な物語では、猟師が伯母峰で背中に多数の笹が生えた猪と遭遇し、鉄砲で足のひとつを撃つ。その後、猪笹王の亡霊が一本足の鬼となって伯母峰を行く旅人を襲い始めてしまったのだ。」

摩耶「文字通りテンペストだね」

サタン「この酒を飲んで何百もの悪魔が弾け飛んだのだ」

亘理『飲んで弾けるの?!』

サタン「弾けるのだ。ぐちゃぐちゃに」

悠「おい、その危険物とっとと片付けろ」

千世子「猪笹王による被害は、丹誠上人という僧侶がこの妖怪を封印したことでおさまったのだ。しかし、封印の条件として12月20日だけは猪笹王は自由に動けることになったため、人々はこの日だけは山に近づかないようにしたというのだ。「果ての二十日」の伝承はこの物語から生まれたともいわれるのだ。以上、一本だたらのじゅぎょーだったのだ。」
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