ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ふぁーぁ……ねむい。」

摩耶「リオ見てたの?」

悠「リオ?誰だ?」

神姫「オリンピックでしょ」

悠「えっ、してんの?」

亘理『まるで興味なしだね。』

【清姫】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。妖怪の多くは、動物や不思議な自然現象に名前をつけたものだが、もともと人間だった妖怪というのも珍しくないのだ。この清姫という妖怪は、男性への熱い思いが暴走し、肉体を変化させてしまった女性なのだ。この妖怪に変身した清姫の体は蛇とも龍ともいえる姿であり、口から高温の炎を吐き出したというのだ。」

一成「まったく、少しは興味を持っておかないと時代に取り残されるぞ」

七緒「まったくだ。」

悠「ナチュラルに混ざってないで出ていけ」

一成「ケチンボめ」

七緒「靴紐が全部ヒモグミになってしまえ!」

悠「なってたまるか!」

千世子「清姫の物語は、登場人物の名前をとって「安珍・清姫伝説」として広く知られているのだ。この物語の一方の主人公、福島出身の美青年僧侶「安珍」は、紀伊半島にある熊野神社に毎年参詣していて、その途中で現在の和歌山県にある家に泊まっていたのだ。家の主は毎年やってくる安珍に「娘の清姫の結婚相手に」と冗談を飛ばすなど、安珍を気に入っていたのだ。だがここで大きな問題が起こるのだ。娘の清姫は「結婚相手」という父の発言を、冗談ではなく本気でとらえていたのだ。」

亘理『あの二人なんなんだろうね。』

摩耶「ただのかまってちゃん……ではなくて、単に暇なだけだと思う」

神姫「そんな感じがするわね」

Q子『エロスの波動は感じるけど私とは感じが違う波動なのよね。』

悠「どんな波動だ」

千世子「何年かたって年ごろの娘になった清姫は、安珍に「いつ自分を嫁にしてくれるのか」と迫るのだ。その執念に恐れを抱いたあんちんは、結婚話を誤魔化して逃げ出してしまうのだ。安珍に裏切られたと思った清姫は、その恨みと悲しみで蛇の化け物へと変わってしまったのだ。安珍は和歌山県の道成寺に逃げ込み、地面におろした釣り鐘の中にかくまってもらったが、蛇の姿で追ってきた清姫に見つかってしまうのだ。清姫は釣り鐘に巻き付いて恨みの炎で鐘を焼き、中の安珍は灰になってしまったのだ。」

サタン「でも、好きにさせといていいのだ?」

スキュラ「殲滅とかいってましたしね。」

ベヒモス「過激派モス」

悠「いや、お前らの存在に比べたらぜんぜんマイルドだと思うが」

摩耶「地獄の魔王、神話の怪物、聖書の怪獣」

亘理『ひえっ』

千世子「今話した清姫の伝説は、安珍・清姫伝説の1パターンに過ぎないのだ。鐘り中に逃げ込んだ安珍を清姫の蛇が焼き殺すという結末は同じだが、それぞれ清姫の年齢が違う、清姫が人妻または未亡人であるなど、設定や話の展開に違いがあるのだ。」

悠「じっさいあの二人がどれだけ凄くてもお前ら一体も倒せないだろ」

摩耶「むしろ、現存する霊能力者を束にしても封印できるかどうかだと思う。」

神姫「普通に鵺とか悪魔とかもゴロゴロしてるし」

悠「よく考えたらこの校舎、ラストダンジョンよりヤバいよな」

亘理『わ、私は無害だよ?』

千世子「また、この話には後日談もあるのだ。の能楽の演目「道成寺」によると、清姫のせいで長らく失われていた道成寺の鐘が再建されたとき、道成寺の白拍子(女芸人のこと)が現れたのだ。実はこの白拍子の正体は清姫だったのだ。安珍を隠した道成寺の鐘を恨むあまり、彼女は怨霊と化して再び道成寺に現れたのだが、清姫の執念のためか、その鐘はよい音が鳴らず、さらには付近に災害や疫病が続いたため、捨てられてしまったというのだ。以上、清姫のじゅぎょーだったのだ。」
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