ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「ということで今日はじゅぎょーしますなのだ。」

一成「ふむ」

七緒「やれやれ」

悠「いや、なんで我が物顔でいるの?」

一成「気にするな、悠」

七緒「そうだぞ、悠」

悠「フレンドリーに名前で呼ぶな!!」

【鞍馬天狗】

千世子「はい、妖怪の中でも広く名前の知られている天狗の最上位といえば、京の都の北にある「鞍馬山」の大天狗、鞍馬山僧正坊(そうじょうぼう)なのだ。またの名を鞍馬天狗なのだ。鞍馬山は多くの天狗が集まる山だが、鞍馬天狗は彼らを束ねる天狗の総帥なのだ。」

摩耶「あれ、寧々ってひとは?」

七緒「あっちの教室で紅茶をお召し上がりになっている」

一成「おひとりで!!」

亘理『なんか可哀想』

悠「わざとやってるだろ」

千世子「鞍馬天狗は、天狗の代名詞である高い鼻の元祖でもあるのだ。室町幕府お抱え画家「狩野元信」が鞍馬天狗を赤顔高鼻で描いたため、それ以降、天狗といえば赤い顔をしているのが定番になったというのだ。」

神姫「護衛じゃないの」

一成「もちろんだ。危険になって呼ばれたらすぐに駆けつける!」

七緒「そう呼ばれたら!」

サタン「このダブル眼鏡ダメな気がするのだ」

神姫「悠と同じタイプね」

悠「?!」

千世子「鞍馬天狗は様々なところで人間世界と関わっているの゛た。特に有名なのが、平安時代の終わりに源氏と平氏の戦いで大活躍した若武者、源義経との関係なのだ。義経が牛若丸という幼名を名乗っていたころ、鞍馬天狗は牛若丸に剣術と兵法を教えた、という伝説が残っているのだ。」

悠「おれこんな馬鹿じゃないぞ!」

神姫「それはない」

悠「アッハイ」

一成「プーックスクスッ」
七緒「プーックスクスッ」

悠「あ、うぜぇ」

千世子「室町時代ごろ描かれた『義経記』という物語には、鞍馬天狗ではなく、陰陽師にして剣術家の「鬼一法眼」という架空の人物が登場するのだ。この人物は多くの剣術流派の祖になった「京八流」という流派の創始者という設定で、鞍馬天狗と同じく物語中で源義経に剣術を教えているのだ。ここから鞍馬天狗と鬼一法眼は同一人物と考えられるようになり、剣術の神として信仰を集めているのだ。」

亘理『まぁまぁ、悠ちゃん落ち着いて』

悠「落ち着いてぶん殴る。まかせろ。」

亘理『違うよ?!』

摩耶「まぁ、ぶん殴るときには落ち着いていかないとね」

神姫「そうね、一発で仕留められるように」

千世子「八百万の神という言葉の通り、何でも神様にしてしまう日本人は、妖怪であるはずの鞍馬天狗のことも神様として扱っており、魔を祓い福を呼び込む後利益があると考えているのだ。さらに鞍馬天狗は仏教の神『多聞天』と同一人物で、夜になると鞍馬天狗の姿を取るともされているのだ。ちなみに多聞天の別名は毘沙門天といい、戦国武将上杉謙信に信仰されるなど戦いの神として名高いのだ。」

スキュラ「恐ろしい人間たち」

一成「ひぃぃ」
七緒「ガタガタ」

ベヒモス「そして一番ビビっているのはこっちの二人モス」

悠「こいつらめんどくせぇな」

千世子「鞍馬天狗は宇宙からやってきたという説もあるのだ。彼の本名はサナートクラマといい、650万年前、人類救済のため金星からやってきた使者だというのだ。宇宙人説の真偽は定かではないが、毎年5月、鞍馬寺では満月の夜に人類の幸福を鞍馬天狗に祈る五月満月祭が行われるのだ。国や地方ではなく、人類全体の幸福なのだ。他の妖怪や天狗とはスケールが違う、まさに宇宙的存在ではあるのかもしれないのだ。以上、鞍馬天狗のじゅぎょーなのだ。」
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