ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

摩耶「ナメクジ」

悠「……」
ダッ、バッ!ザザザッ!

亘理『一瞬にして教室の天井の隅に!?』

神姫「蜘蛛みたいな男ね」

雨「やめて」

【葛ノ葉狐】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。歴史や神話に登場する偉大な人物が、人間以外の血を引いているという設定は世界各地で見られるのだ。異常な出産や陣がいの血筋が、その人に長城の力を与えるのだ。海外では、男女の交わりなしに生まれたイエス・キリストや、ギリシャ神話の全知全能の神ゼウスと人間女性のあいだに生まれた、西京の英雄ヘラクレスなどが知られているが、実は平安時代の陰陽師として有名な安倍晴明もそのひとりだという伝承が残っているのだ。彼は「葛ノ葉」という女性の化け狐が、人間の陰陽師との間に産んだ子供である、というのだ。」

摩耶「まぁ、嘘なんだけどね。」

悠「まったく摩耶は冗談がきついぜ」
ダラダラ

サタン「ヤバいレベルで汗が流れてるのだ。」

悠「はぁはぁ…」
ドッドッ

亘理『心音も尋常じゃ無いぐらい鳴ってる…』

千世子「葛ノ葉は現在の大阪府南部、和泉市にある「信田の森」に住んでいたため、「信田妻」「信太妻」「信太狐」などと呼ばれることもあるのだ。全身を白い毛皮に包まれた妖弧であり、一般的な化け狐と同じように人間の女性に変化できたというのだ。性格は慎み深く、愛情にあふれる女性だったと伝えられているのだ。」

神姫「どれだけビビってるのよ」

悠「ビビッてねーし!」
ガクガク

スキュラ「教室が揺れるレベルで足震えてますが」

悠「気のせいです。うっぷ……」

摩耶「精神まで折れかけてるね。」

千世子「葛ノ葉と安倍清明をむすびつけた最初の記述は、鎌倉時代末期に書かれた陰陽道の経典「三国相伝陰陽管轄ホキ内伝金鳥玉兎集(さんごくそうでんおんみょうかんかつほきないでんきんうぎょくとしゅう)」にあるのだ。この内容が脚色され、広まったが現在知られている葛ノ葉伝説なのだ。その集大成といわれる物語「しのたづまつりぎつね付あベノ清明出生」には、次のように記されているのだ。」

悠「もう生理的というかDNAレベルで拒否しているんだよ」

摩耶「小さいのが無数にいるのと巨大なのが一匹いるのはどっちがきつい?」

悠「きついわぁ。どっちもきついわぁ。」

サタン「なら、ナメクジの身体から手足が生えているのはどうなのだ?」

悠「それもうただの化け物だろ。っか、ナメクジが化物だ。」

千世子「安倍清明の父親で、摂津国(大阪府)の武士である安倍保名が信田の森を訪れたときに、保名は狩人に追われている白狐を見つけて助けたのだが、そのとき怪我を負い、動けなくなってしまうのだ。保名が困っていると、そこに葛ノ葉と名乗る女性が現れ、保名を介抱して家に送り届けたのだ。葛ノ葉は何度も保名の見舞いに訪れ、いつしか二人は恋仲になり結婚するのだ。葛ノ葉は安保の子を産み、童子丸と名付けたのだ……この子供こそが、のちの安倍清明なのだ。」

神姫「ナメクジは化け物ではない」

悠「そんなこともない」

神姫「あ?」

悠「(´・ω・`)」

摩耶「カタツムリは平気なのにね。」

千世子「保名と葛ノ葉は幸せに暮らしていたが、あるとき葛ノ葉は菊の花に見とれ、キツネの本性を現してしまうのだ。これを童子丸(清明)に見られてしまった葛ノ葉は、もう保名たちとは一緒に暮らせないと、別れの句を残して去っていったのだ。」

悠「別の生き物だからな」

神姫「ほぼ一緒でしょ」

悠「この話はやめよう。そろそろ胃液が逆流する……うっぷ。」

サタン「テロなのだ」

悠「みんながおれを追い込むからだからな!!」

千世子「「恋しくばたずね来てみよ和泉なる信太の森のうらみ葛ノ葉」この句を読んだ保名は、童子丸を連れて信田の森を訪れたのだ。すると信田の森には、今まで姿も見えなかった「葛」の葉っぱが一面に生い茂っていたのだ。保名はこの葉っぱを一枚持ち帰ってお守りにし、童子丸を立派に育て上げたというのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
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