ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー廊下ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「暑っいのだ…」

悠「去年てこんな感じだっけ?」

摩耶「さー、どうだったかなぁ。でも去年も暑い暑いいってたのは確かだけど」

亘理『今年も暑くなってきたってことかぁー』

神姫「年々熱くなってる気がするわ」

【千疋狼】

千世子「千疋狼(せんびきおおかみ)とは、送り犬や山犬とも呼ばれる、山に出現するイヌ科動物の妖怪なのだ。山犬という名前は、東北から九州まで広い範囲で、オオカミをあらわす単語として使われていたのだ。山犬(狼)は狐や狸と同じく怪現象を引き起こすと考えられた動物であり、妖怪と呼ぶにふさわしい動物なのだ。」

悠「オオカミは怖くないけど虎狗琥と大神(伊都)は怖い」

摩耶「虎は?」

悠「ああ、怖い。ついでに鬼と竜も怖い」

神姫「あ?」

悠「ごめんなさい」

千世子「全国に伝わる怪現象のうち、千疋狼が引き起こす現象として最も有名なのが、「送り犬」という現象なのだ。地域によっては「送り狼」と呼ばれることもあるのだ。」

摩耶「送り狼……ああ、悠君のことだね」

悠「ちっげーし!でへへ」

亘理『……』
ガシッ!
ミギギッ
悠「頭取れるからやめて、引っ張らないで」

摩耶「手動ろくろっ首」

千世子「送り犬は参道なので狼や犬が人間の後をついてくるという現象なのだ。そのあと狼や犬が事件を引き起こすのだが、起こる事件の内容が伝承ごとに異なるのだ。送り犬現象は、危険な送り犬と、人間を助ける送り犬の二つに分類できるのだ。」

サタン「悠が送り狼ってどういう意味なのだ?」

神姫「送って食べちゃうって意味よ」

サタン「あー……?」

神姫「わかってないわね」

摩耶「悠君がスケベってことだよ」

千世子「人間を助ける送り犬は、人間が転んでも襲わないどころか、危険な獣や悪霊などから、人間をまるでボディガードのように守ってくれるというのだ。だが危険な送り犬は、山道などを歩いている人間の動向を見張っているのだ。このとき人間が転ぶと、送り犬は転んだ人間を飛び越えて襲い掛かり、食い殺してしまうのだ。」

悠「誰がスケベやねん!」

「「「『……』」」」
スッ
悠「あ、やめて全員で無言で指さすのやめて」

摩耶「殴る?」

ベヒモス「薙ぎ払うモス?」

悠「……優しくしてください」

千世子「「千疋狼」の伝承として有名な新潟の伝承「弥三郎婆」は年老いた母親と暮らす若者が、たくさんの狼たちに襲われる話なのだ。この話の冒頭で、山道を一人歩く若者をオオカミが襲う「送り狼」現象が発生しているのだ。」

神姫「これ以上?」

悠「うん。」

神姫「ふざけるな」

悠「なんかガチで言われた」

亘理『悠ちゃんが悪い』

千世子「山中でオオカミに襲われた弥三郎は、狼をやり過ごすために気に上るのだが、狼たちは梯子のように何段も肩車をして木の上の若者を襲おうとするのだ。だが肩車をする狼の数が足りなかったのだ。そこで一番上の狼が「弥三郎の婆を呼べ」と吠えたてたところ、空から腕が現れて弥三郎を掴んだのだ。しかし弥三郎が腕を刀で切ったとたんに狼たちは消えたというのだ。」

悠「おれ悪かった?」

摩耶「大抵のことは悠君が悪いから気にしても仕方ないよ」

悠「それもそうだな」

サタン「じゃあ、この暑さも悠のせいなのだ?」

悠「いいや、これはなんか低気圧だか何だかが重なり合ってるのが悪い」

千世子「千疋狼形式の物語には、このほかにも「鍛冶が姥」「小池婆」などさまざまな題名を持つ物語があり、それぞれ違った内容と結末となっているが、狼たちが肩車ではしごを組む、という点だけはどの話でも共通しているのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
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