ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー廊下ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「いってぇ」
餓鬼頭『……』

亘理『わー、悠ちゃん歯型だらけ…』

サタン「というか、なんか頭に刺さってるのだ」

摩耶「廊下に餓鬼があふれ出てね。悠君齧られちゃって」

悠「ガッツリ歯が髪の毛に食い込んで取れないんだよ」

【見越し入道】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。見越し入道は、東海地方をはじめとする全国各地によく似た伝承の残るメジャーな妖怪なのだ。この妖怪は夜道や道の曲がり角、坂道の突き当りなどに突然現れて、人をおどかすのだ。それだけなら害のない妖怪といえるのだが、地域や伝承によっては人を殺すこともあるため、充分に注意が必要なのだ。」

悠「見越し入道って目玉が弱点てイメージがある。」
餓鬼頭『……』

神姫「……目が弱点じゃないものっているの?]」

悠「…………手の目とか?」
餓鬼頭『……』

摩耶「むしろそれこそ弱点だよね」

悠「ですよねー」
餓鬼頭『……』

千世子「見越し入道は首の長い坊主頭の僧侶の姿をした妖怪なのだ。非常に大きな体をしており、人を上からのぞき込む……つまり「見越す」のだ。覗きこまれた人間は食い殺されてしまうとも、喉を噛みちぎられてしまうとも、はたまた巨体が上から倒れ込んできて押しつぶされてしまう、ともいわれるのだ。」

亘理『悠ちゃん、それ取らないの?』

悠「だから髪に食い込んで取れないんだよ」
餓鬼頭『……』

スキュラ「粘液ならありますよ」
ドロロッ

悠「……それ毒はいってない?」
餓鬼頭『……』

千世子「この見越し入道という妖怪は多くの場合、その正体が良く分かってないのだ。ただし、一部には、狸や狐、イタチといった動物妖怪が、化かす能力を使って生み出した幻覚だとする伝承もあるのだ。また、ごく一部の地域では、出会ったものを熱病にする疫病神の一種タダとしているのだ。」

スキュラ「大丈夫です。だいぶ薄めてあります」

ベヒモス「つまり毒は入ってるモス」

悠「しかたない、引きちぎるか」
餓鬼頭『……』

神姫「絡まってる部分だけ切ればいいじゃない髪」

摩耶「というか、餓鬼の頭を砕けばどうかな?」

千世子「見越し入道は知名度が高いためか、撃退する方法の伝承も多く残っているのだ。最も多いのは、見越し入道の目の前で特定の言葉を唱える方法なのだ。見越し入道が現れる前兆に合わせて、もしくは現れるときに、「見越し入道見越した」または単に「見越した」と口にすれば、見越し入道は消えるというのだ。但しこちらより先に見越し入道から「見越した」といわれると自分が死んでしまう、とする伝承もあるため、注意が必要なのだ。」

悠「それでいこう。摩耶、頼んだ」
餓鬼頭『……』

摩耶「え、僕は嫌だよ。」

悠「あらまぁ」
餓鬼頭『……』

ベヒモス「僕に任せるモス」
ブォォン!
ヂッ!
悠「あぶねっえ!」
餓鬼頭『……』

千世子「また東北地方南部の福島県付近では、見越し入道の退治方法がやや異なるのだ。この地方の見越し入道は必ず手に鉈や提灯などを持っているのだが、この持ち物を狙って叩けば、見越し入道を退治できるのだ。それというのも、実はこの持ち物こそが、見越し入道の本体であるイタチが化けた姿だからなのだ。」

悠「おれの頭蓋を砕くんじゃない!この餓鬼の頭だけ砕くんだ!」
餓鬼頭『……』

ベヒモス「細かい動作はできないモス」

摩耶「フルスイングだもんね」

神姫「そりゃ後のことなんか考えないわよね。」

悠「もういい、自分でとる!」
ブチっ!
餓鬼頭『ぎえぇぇっ!』

亘理『うわ、断末魔…』

千世子「これ以上にも、地方によっては、妖怪の嫌うタバコを吸う、定規で見越し入道の高さを図る、脚から見上げていくのではなく頭から足へ下に見ていく……などといった方法で見越し入道を追い払えるのだ。以上、見越し入道のじゅぎょーだったのだ。」
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