ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「それでもおれは転がす!」
ころろっ……【外】

摩耶「そして案の定外れ」

サタン「あっ!サイコロが飛んでったのだ!」
ゴスッ!
悠「まぶた!?」

摩耶「外れたら普通に不幸が来たね」

神姫「数十円程度の被害でよかったわね。」

悠「お目目が痛いDEATH…」

【鈴鹿御前】

千世子「まぁ、あんちんは平気そうなのでじゅぎょーしますなのだ。近畿地方の三重県と滋賀県にまたがる鈴鹿山には、その昔、「鈴鹿御前」または「立烏帽子」という名で呼ばれる美しい女性が住んでいたのだ。東北地方に伝わる「田村三代記」では、彼女は外見年齢16歳くらいの美しい娘で、色の良い小袖を重ね着し、赤い袴をはいているのだ。彼女の3本の愛刀「大通連(だいとうれん)」「小通連(しょうとうれん)」「顕明連(けんみょうれん)」は、空中に投げ上げれば豪雨のように降り注いで敵をひとりでに攻撃するのだ。鞠のような光る乗り物「小りん車」で空を飛ぶこともできたというのだ。」

悠「おー、痛ってて」

摩耶「眼球直撃じゃなくて良かったね」

亘理『大丈夫?』

悠「瞼がひりひりしてる舐めてくれ」

神姫「おろし金ある?」

スキュラ「紙鑢でしたら」

悠「やめてっ!」

千世子「鈴鹿御前について語る文献は多く、その正体は文献ごとに違うのだ。もっとも有名なのは、鈴鹿御前は鬼であるという伝承だが、そのほかにも天女だったり、ただ強力な山賊だったりするのだ。さっき説明した「田村三代記」では、彼女は何と仏教の悪魔「第六天魔王」の娘で、わざわざ遠く離れた天竺(現在のインド)からやってきた設定になっているのだ。」

摩耶「すぐに調子に乗るんだから」

悠「やはりこのダイスは危険だな」

神姫「この校舎内にあるものは大抵危険でしょ」

ベヒモス「いわくつきだらけモス」

悠「あとでメフィストの瞼に叩きつけておこう」

千世子「異説の多い鈴鹿御前伝承だが、その伝承の多くには、平安時代に東北を平定した征夷大将軍「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)」もしくは彼をモデルにした主人公が関わっているのだ。物語の伝承地も、鈴鹿御前のおひざ元である近畿地方ではなく、東北地方で語られているものが多いのだ。物語の筋はおおむね、鈴鹿御前と田村麻呂が結婚し、強大な鬼(大嶽丸、悪路王など)に立ち向かうというものなのだ。」

亘理『酷い奴当たりっぽい』

摩耶「ぽいじゃなくて八つ当たりだよ」

悠「ちーがーいーまーすぅー」

神姫「うざい」

悠「酷いわぁ」

亘理『いやぁ、今のは悠ちゃんが悪いと思う』

千世子「歴史を紐解くと、鎌倉時代のことに三重県の鈴鹿山に、立烏帽子という棟梁に率いられた山賊集団が居たことは事実なのだ。東北の鈴鹿御前伝承は、平安時代の東北でおきた戦争と、鎌倉時代の盗賊の逸話が組み合わさって生まれ、民間で磨き上げられてきた物語である可能性が高いのだ。以上、鈴鹿御前のじゅぎょーだったのだ。」
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