ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「雨っすなぁ」
ぐりぐり
雨「ひとの頬をぐりぐりして何言ってるコラ。つるし上げてやろうか!あ!」

千世子「雨ちゃんがなんかガチギレしてるのだ」

悠「女の子の日なんじゃね?」

雨「すっ……プシャー!」
どばっ!
亘理『きゃーー!』

悠「……」

雨「あ……」

摩耶「まぁ、上に吹きだしたら亘理ちゃん当たる確率の方が大きいよね。」

【イジャロコロガシ】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。風もないのにナニカが道を転がっていたら誰もが奇妙に思うのだ。もしかしたら、それは妖怪によるものかもしれないのだ。」

亘理『うー、べたべたするっー!』
じたばた

神姫「暴れると余計に絡まるわよ」
ササッ

悠「しっかり安全圏に逃げてるな」

雨「ごめんなさい、水で濡らした方がいいわ!」

スキュラ「粘液なら」
ドロロッ

雨「いや、それ余計悪化する。」

千世子「長野県東部の南佐久郡南牧村には、イジャロコロガシという妖怪の伝承があるのだ。この妖怪は荒れたお堂に現れるとされ、夜にお堂の側を通るとイジャロ(ざるの事)がころころと転がってくるのだ。そしてイジャロは人間のすぐ近くに来ると、窮に人間の姿になって驚かしてくるのだ。特に子供が驚かされたというのだ。」

摩耶「蜘蛛糸って……燃えるよね」

悠「火をつけたら一発だろうけど同時に亘理の丸焼きができるな」

亘理『いやー!』

サタン「なら、我が吹き飛ばしてやるのだ!」
ゴゴゴッ!

神姫「いや、それ亘理もろとも吹き飛ぶでしょ」

千世子「この妖怪の正体は明らかになっておらず、狸や狐のような化かす妖怪のイタズラの類なのか、物品が妖怪となったいわゆる付喪神の仲間なのか、はたまたそれ以外の妖怪なのか、残念ながら伝承からは読み取ることができないのだ。」

悠「なら、逆転の発想でもう一回糸を吹きかけて引っ張って現絡まっている糸を回収する」

摩耶「なるほど!いい手だっ!……これでいい?」

悠「あざーっす。」

神姫「まぁ、やったら糸達磨になるだけよね。」

亘理『何でもいいから助けてぇ』
ジタ…バタ…

千世子「器物がひとりでに動く妖怪」というのは日本各地に伝わっていて、その転がってくるものは茶碗、薬缶、木槌、石など、バリエーションも豊富なのだ。」

神姫「普通にシャワー浴びてきなさい……って、もうあんまり動けてないわね。」

悠「緊迫プレイだな」

神姫「弾針剄(弱)」
バスッ!
悠「ピンポイントっ!?」

雨「運ぶにしても触ったら絡んじゃいそうね。」

悠「やったのはお前だけどな」

雨「黙れ」

千世子「高知県の南西部に位置する幡多郡には、タテクリカエシという妖怪が伝わるのだ。これは餅をつく手杵(てぎね)のような形をしていて「スットンスットン」と音をさせながら現れて、人間を転ばせようとするのだ。しかしタテクリカエシは急な方向転換ができないので、ぶつかる瞬間に脇によれば転ばされずに済むのだ。」

ベヒモス「じゃあ、ボクが運ぶモス」

悠「どうやって?」

ベヒモス「こうやってモス」
ブォン!
ベタッ…
亘理『うわっ?!』

ベヒモス「それじゃ、ちょっと行ってきますモス」
ズシッ、ズシッ!
亘理『ひぇー』

悠「すげぇ、尻尾に貼りつけて持っていった」

スキュラ「ただの力だけならサタン殿にも負けないんじゃないでしょうか。」

千世子「少し変わったところでは、山口県に伝わる鑵子転げ、あるいは鑵子転がしと呼ばれる妖怪があるのだ。酒を温める釜のような器「鑵子」が、なぜか崖の上から転がってくるようんいで、これに驚いて腰を抜かすと足が萎えてしまうというのだ。なお、福島県にも鑵子転げという妖怪が居るが、夜に山道を通る人間めがけて「鑵子」を転がしてくるという妖怪なのだ。以上、イジャロコロガシのじゅぎょーだったのだ。」
40/100ページ
スキ