ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ん゛っ、んん゛っ……」

摩耶「どしたの?口から卵産むの?」

悠「ポコペンポコペン……じゃなくて喉になんか引っかかってる感じがするんだ」

摩耶「喉突こうか?」

悠「ただの地獄突きな件」

神姫「ならボディブローかしら」

亘理『全部を吐き出す系』

【鬼女紅葉】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。長野県北部の戸隠地方には、紅葉という美しい鬼女の伝説があるのだ。紅葉は妖術に長け、相手を呪って衰弱させたり、病気や怪我を治したり、自分の分身を作りだすこともできたというのだ。なぜなら彼女は、仏教の魔王「第六天魔王」が、子宝の恵まれない夫婦に授けた異端の子供だからなのだ。」

悠「普通に水とか渡してくれないかな」

サタン「ほいなのだ」

悠「おお、サタンキュー。ゴクッ……ぶぇっ!」

摩耶「サタンキューとかいってるから器官に入るんだよ」

悠「ぞヴじゃね゛ぇ……なにこれ。」

サタン「地獄トカゲのラム酒漬けなのだ。」

千世子「鬼女紅葉の物語は「北向山霊験記・戸隠山鬼女紅葉退治之伝」という明治時代の小説に詳しいのだ。この物語によれば、心優しかった紅葉が鬼としての本性を現し始めたのは、16歳になり故郷の福島から京都へと移り住んでからの事なのだ。」

亘理『……美味しいの?』

サタン「臭いは強いけどいい塩梅なのだ」

神姫「悠的にどうだったの?」

悠「喉になんか絡んでるときに飲むもんじゃねぇことは確かだ……ん゛っ、誰か飲み物」

スキュラ「海水なら」

悠「飲み物じゃねぇ」

千世子「紅葉は、呪術を乗せた琴の音色で「源経基」という皇族の目にとまり、彼の寵愛を受けるようになるのだ。しかし源経基の本妻を妖術で呪い殺そうとしたことが発覚し、紅葉は戸隠へと追放されてしまうのだ。」

ベヒモス「なにかよく分からない液体ならあるモス」

悠「ちゃんと安全な捨て方しろよ」

摩耶「醤油で良かったら」

悠「だから飲み物では無い」

亘理『飲み物……カレー!』

千世子「流刑にされた紅葉であったが、皇族の子を宿していたことに加え、その美貌と知識によって村人たちから強い信頼を得て、しばらくは平和に暮らしていたのだ。しかし都でのぜいたくな暮らしへの執着を捨てきれない彼女は、やがてやがて山賊たちを従えて村々を襲い、金品を奪い、あげく生き血を啜る鬼女と化したのだ。その紅葉の悪行は京都にも伝わり、朝廷は平良の維茂という武将に紅葉討伐を命じるのだ。紅葉は得意の妖術で維茂と彼の率いる軍を苦しめるが、最後は神仏の力を借りた維茂に斬り殺されたというのだ。」

悠「カレーは飲み物っていうけどな。っか、何度も言ってますが喉になんか絡んでるの!!」

神姫「イソジンならあるけど」

悠「うわーぴったりだけどぴったりじゃない。もう普通にお茶とかちょうだいよ!」

摩耶「茶葉ならいいのがあるんだけどなぁ」

悠「ああ、おれも茶葉なら持ってる」

亘理『むしろ何で茶葉は持ってるの?』

千世子「室町時代に成立した舞台芸能「能」に「紅葉狩」という演目があるのだ。これは、戸隠に紅葉鑑賞に来た平維茂が、神仏のお告げを受けて、女に化けていた鬼を退治する話なのだ。さっき説明した鬼女紅葉の伝説は、もともと戸隠地方に多く伝わっている鬼の伝承が、この「紅葉狩」と組み合わさって江戸時代に生まれ広まった比較的新しい時代のものだと考えられているのだ。以上、鬼女紅葉のじゅぎょーだったのだ。」
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