ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「梅雨入りといったのに今日はカラッカラの晴天なのだ」

悠「太陽の波紋!」

サタン「魔王のオーラなのだ!」
ズドンッ!
悠「ぷれきしぶるっ!」

摩耶「派手に飛んだね」

悠「こんな……壁ドンは……嫌だっ」
ガクッ

亘理『悠ちゃーん!』

【朱の盤】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。朱の盤は、現在の福島県や新潟にあたる地域に伝承が伝わる妖怪なのだ。朱の盤の特徴はその外見で、真っ赤な顔に角1本と針のような髪の毛が生え、目は皿のようで、口は耳まで裂けているのだ。歯を噛み鳴らす音は雷のようだったとも伝えられているのだ。この異様な顔でひとをおどかすのが朱の盤の習性なのだ。」

悠「おー、痛てて」

亘理『何だかんだでタフだよね』

摩耶「現代を代表する不死身人間だからね」

サタン「流石なのだ!」
ゴゴゴッ!

悠「そのオーラをひっこめなさい。」

千世子「朱の盤が人間をおどかす方法には一定のパターンがあるのだ。朱の盤はまず普通の人間に化けて犠牲者に接近し、犠牲者が朱の盤の噂について話すと「その種の盤」とはこんな顔だったか?」といい、本来の姿に戻って犠牲者を驚かすのだ。」

赤い顔の何か「……」
バッ!

亘理『……』

赤い顔の何か「……」
サッ!

亘理『……神姫さん』

神姫「なに?」

亘理『今、廊下になにかいませんでした?』

千世子「朱の盤の顔を見て驚いて逃げた犠牲者を、朱の盤はさらに追いつめるのだ。逃げ込んだ民家で、犠牲者が「種の盤に出会った」という話をすると、家主に化けた朱の盤が再び本性を表すのだ。振り向きながら「その朱の盤とはこんな顔でしたか」と言い、もう一度犠牲者をおどかすのだ。ちなみに福島県の伝承では、朱の盤に2回おどかされた若者が、100日間寝込んだ後に死んでしまったというのだ。」

神姫「廊下?さぁ、見なかったけど」

亘理『そうですか…』

赤い顔のなにか「……」
バッ!

亘理『悠ちゃん、廊下!』

悠「あ?」

赤い顔のなにか「……」
サッ!

千世子「今まで紹介したものは福島県の伝承だが、朱の盤を「朱盤」の名前で呼ぶ新潟県では、朱の盤は外見も特徴もかなり違う妖怪になっているのだ。」

亘理『見た!?』

悠「なにが?」

亘理『廊下!赤いの!何かいた!』

悠「オレサマオマエマルカジリ?」

亘理『いってない!』

千世子「新潟県の伝承では、朱の盤は「朱盤(朱色のお盆)のような顔をした坊主」とあるだけで、福島県の伝承に見られる、鬼のような外見的特徴が全くないのだ。物語の展開も大きく違い、朱の盤は「舌長婆」という妖怪とコンビで現れるのだ。」

赤い顔のなにか「……」
バッ!

亘理『ほら!』

赤い顔のなにか「……」
サッ!

悠「いたか?」

神姫「さぁ」

千世子「新潟から関東へ向かう武士二人組が道に迷い、老婆の住むあばら家に一夜の宿を求めた時の事。旅の疲れから眠り込んでしまった武士のひとりが目を覚ますと、老婆がもう一人野武士の顔を舐めているのだ。咳払いをしてこれをやめさせると、突然「舌長婆、何を手間取っている」と声がかかったのだ。声の主は「諏訪の朱の盤坊」と名乗ると姿を現すのだ。起きていた武士が斬りつけると朱の盤坊の姿は消えたが、その隙に老婆は寝ている武士をかかえて屋敷の外に飛び出してしまったのだ。」

亘理『居たの!』

悠「ふむ……ちょい耳貸してくれ」

赤い顔のなにか「……」
バッ!

悠「龍剄気功……」
神姫「龍剄気功……」
サタン「魔王の……」
スキュラ「猛毒……」

「「「弾針・蒼龍爪・オーラ・ブレス」」」

どっがしゃあぁぁぁっ!
「ぎゃあああっーーー!」

亘理『Oh…』

摩耶「当たったみたいだね」

ベヒモス「きっと死んだモス」

千世子「長舌婆が家を飛び出すと同時にあばら家は消え失せてしまったのだ。連れ去られた方の武士は全身の肉を舐めとられ、白骨化した姿で見つかったというのだ。以上、朱の盤のじゅぎょーだったのだ。」
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