ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

亘理『今日も霊魂が綺麗』

悠「あふれかえってる時点でヤバいよな普通」

摩耶「右見て」

悠「……」

サタン「?」

摩耶「左見て?」

悠「…………」

スキュラ「?」

摩耶「どう?」

悠「外より仲がヤバいですハイ。」

【イクチ】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。イクチは、茨城県沖の海に住む、巨大なウナギに似た妖怪なのだ。その巨体は測りきれないほどの長さで、巨体がひとたび船を上を通り過ぎようとすれば、身体が全部通り過ぎるまでに3時間前後はかかるというのだ。九州には「イクジ」という名前で伝わっており、こちらは通りすぎるまでに2~3日はかかる長さだというのだ。」

悠「水辺の妖怪ってなんか怖いよな」

神姫「あら、そんなこと思うの?」

悠「おれ、結構海とか苦手なんだよ……爺に断崖とかから投げられまくってたし」

摩耶「それは海とか水が怖いんじゃなくておじいさんが怖いんじゃない?」

悠「ジジイなんかこわかねぇし!あんな野郎ぶっ殺してやる!」

亘理『それ死亡フラグ』

千世子「イクチは全身からねばねばとした油を分泌する特徴があり船の上を巨体がまたぐと、この油が船の上に落ちるのだ。放置すると油の重みで船が沈むので船員は油を船の外にくみ出さなくてはならないが、それ以上の害はないといわれているのだ。」

神姫「まぁ、クラゲとかタコとかは怖いかもね。毒が」

摩耶「虎魚とかもね」

ラヴクラフト「……」

悠「おっさん、どっから湧いた……」

ラヴクラフト「呼ばれた……気がした…?」

千世子「江戸時代の妖怪画家「鳥山石燕」は、妖怪画集「今昔百鬼拾遺」に『あやかし』という妖怪を書いているのだ。あやかしの解説文はイクチの特徴とまったく同じなので、石燕はイクチのことを「あやかし」という名前で描いたと思われるのだ。」

悠「読んでないです。」

ラヴクラフト「そう、かっ……。」
ズズッ、ズズッ

サタン「不気味な奴なのだ」

悠「サタンでも不気味がるレベル」

亘理『今あの人の影が人の形してなかった』

千世子「とはいえ、石燕がイクチを「あやかし」と呼んだのは的外れなことではないのだ。日本では、海上で起こる怪現象のことを、まとめて『あやかし』と呼んでいたようなのだ。例えば長崎県では、海上に浮かぶ火の玉を『あやかし』と呼び、山口県や佐賀県では、船に水を組み入れて沈めてしまう幽霊「船幽霊」をあやかしと呼んだのだ。」

スキュラ「私は海は好きですけどね」

悠「完全に海がフィールドの捕食者だもんな」

スキュラ「古い魔物じゃあるまいし。そんなまねいたしませんわ。それに海には魚や海藻美味しいものはいくらでもあります」

亘理『人間が美味しかったら?』

スキュラ「……その時の状況によりますわね」

悠「あ、ゾクッと来たわ。うん。」

千世子「千葉県のあやかしは海の妖怪としては珍しく陸上に現れるのだ。ある猟師が現在の千葉県に上陸し、井戸を探していると、女性が井戸水を組んでいたので、彼はその水をもらって帰ったのだ。所が仲間の猟師曰く、彼が上陸した辺りにはそもそも井戸はないし、数年前にその近辺に出かけた猟師が行方不明になっているというのだ。そう井戸の近くにいた女性は妖怪あやかしだったのだ。ちょうどそのとき、先ほどの女が漁船に齧りつき、今にも襲い掛かろうとしていたのだ。漁師たちは舟を漕ぐ艪で女を殴りつけて逃げ、何とか助かったというのだ。このあやかしは、海辺に現れる女妖怪、磯女の一種だと考えられているのだ。以上、イクチのじゅぎょーだったのだ。」
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