ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

亘理『ということで出来ました。シチューみたいなもの』

悠「誰かポリバケツ」

亘理『食えー!』

悠「みたいなものは食わない。シチューと断定しろ。そして味見しろ」

亘理『……まま、どうぞ熱々ですよ。』

【シチューみたいなもの】
ゴボコボボッ

摩耶「煮立ってるんだか発酵してるんだか……。」

【足洗邸】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。特定の地域で起こる複数の不思議な出来事をまとめて「七不思議」と呼ぶことがあるのだ。七不思議は全国各地に存在するが、そのなかでもっとも有名なもののひとつが、東京の墨田区周辺に伝わる怪談話を集めた「本所七不思議」なのだ。本所とは昔の墨田区周辺の呼び名で今でも同じ地名が残っているのだ。」

亘理『はい、あーん。』

悠「例え口移しでもソレは食わん」

摩耶「神姫さんの口移しだったら?」

悠「……」

亘理『カプッ!』
悠「いてぇ!」

神姫「弾針剄」
スドッ!
悠「ぐぇっ!ってか、今のおれ!?」

千世子「本所七不思議のひとつに「足洗邸」という話があるのだ。江戸時代、ある武士の屋敷では、夜中になると「足を洗え」という声とともに、バリバリと音を立て天井から巨大な毛深い足が降りてくる。足は泥や血で汚れており、アラゃってやると消える。たがいい加減に洗うと、足は怒って家を壊しかねないほど暴れ出すのだ。」

サタン「クンクンッ」

摩耶「食べる?」

サタン「……匂いがしないのだ」

悠「え?そういえば……スンスン。まったくしない」

摩耶「悠くん、一口どうぞ」

千世子「子の足の正体ははっきりしないが、よく似た話に、狸が巨大な足を出現させたものがあるのだ。その話は、ある武士が大けがを負った狸を助けたとこから始まるのだ。」

悠「おれの勇気が足りない」

神姫「いいから食え」
ズボッ!
悠「あぐっ!……ん?んん?」

サタン「不味いのだ?」

悠「んー……」

亘理『美味しいの!』

千世子「その狸が女に化けて武士の枕元に現れ、助けられたお礼として「召使の女が家を乗っ取ろうしている」と忠告するのだが、その忠告も空しく、武士は家を乗っ取られ殺されてしまうのだ。だが、その後狸は、武士の息子に協力して仇討ちを成功させたというのだ。以来この屋敷では、悪い兆しがあるときに、狸が大きな足を天上からおろして「足を洗え」と叫ぶようになったというのだ。」

悠「まったく味がない。無味無臭だ」

亘理『そんなわけないでしょ!』

摩耶「あむっ……わ、ホントに無味無臭」

スキュラ「ぺろっ、気持ち悪いぐらい味がしませんね。」

神姫「はむっ……これは確かに味がないわ」

千世子「本所七不思議のように「○○七不思議」と呼ばれる物語郡は全国各地にあるが、実際には8つ以上の不思議があることも多いのだ。これは本所以外の七不思議でも同様であり、地域の七不思議から7つを選んだものが複数いるため、誰が選んだかによって7つの不思議のリストが違ってくるせいなのだ。」

亘理『じゃあ、食べられるよね!』

悠「食べられるだけであって無味無臭はきつい」

摩耶「柔らかい粘土食べてる感じ。べヒちゃん食べてみる?」

ベヒモス「ゴクゴクッ。美味しくはないけど薬と思って食べれば問題ないモス。」

亘理『えっへん!』

神姫「威張るところじゃないから」

千世子「例えば本所七不思議の場合は全部で9つの話があるのだ。また長野県の諏訪大社の七不思議は、川の上流にある「上社」と下流の「下社」にそれぞれ7つの不思議があり、重複を取り除くと11種類になるのだ。以上、足洗邸のじゅぎょーだったのだ。」
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