ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

亘理『ふふっ、綺麗』

摩耶「綺麗なのは分かるけど机に一輪挿し状態で置いとくのはどうなんだろう」

悠「いじめっぽく見えなくもないが、それ以前に天井からぶら下がって愛でてる時点でガチホラーだよな」

サタン「それより、桜を引っこ抜いた穴からめちゃめちゃ幽霊が噴き出てるのだ」

神姫「肉眼でガッツリ幽霊見えてるんだけど平気なの?」

スキュラ「はい、あれ全部成仏しているっている幽霊なので。霊道と地脈がぶつかって強制成仏状態です。」

悠「なんかすげぇな……」

【牛御前】

千世子「ということで久々にじゅぎょーなのだ。雷門で有名な浅草の浅草寺は、かつて妖怪に襲撃されたことがあるというのだ。浅草寺を襲った妖怪は「牛御前」という、牛のような姿をした妖怪なのだ。」

亘理『そういえば桜はどこに移植したの?』

悠「校庭のど真ん中」

亘理『なんで?!』

摩耶「冥ちゃん曰く、まだまだ大きくなるから一番邪魔にならない場所がそこなんだって。」

サタン「もはやアレは桜じゃないのだ。」

千世子「伝説によれば、牛御前は浅草寺に乱入すると、そこにいた僧侶たちに毒息を振りまいたのだ。その毒で24人が昏睡、7人が即死したのだ。牛御前はそのまま川を渡って逃げ川の対岸にある牛御前社という神社に、牛玉という宝玉を残して消えたというのだ。」

悠「ばあちゃんが気にいってガリガリ樹皮削りとっても即再生してたしな」

亘理『ミーナさん何か怖い』

摩耶「一番ああいうタイプが危ないからね。」

スキュラ「そういえばメフィスト殿も一緒になって桜の枝から何から採取していましたね。」

悠「そのコンビはマズい」

千世子「牛御前の正体については二つの説があるのだ。ひとつめの説では、牛御前の正体は平安時代の武士「源瀬光」の弟、または妹だというのだ。『牛御前の本地』という物語によれば、源瀬光の弟で、丑年丑の日丑の刻(午前二時ごろ)に生まれたため「牛御前」と呼ばれたのだ。だが生まれた時から牙が二本有る異形の外見で、性格も乱暴だったため関東に追放されたのだ。牛御前は後に反乱を起こすが兄の雷光に討伐されて敗北。最後の力で水に飛び込むと、巨大な牛に変化したといわれているのだ。この牛御前を祀っているのが牛御前社、現在の牛嶋神社なのだ。」

神姫「悪魔と科学者って反してる存在なんだけどね」

悠「片方は人間大好き科学大好き悪魔で片方は超常現象も受け入れる変人博士……反するどころか混ざり合ってる」

摩耶「美味しいものと美味しいものを掛け合わせるパターンだね」

悠「毒と毒だろ」

亘理『毒をもって毒を制せないかな』

千世子「ふたつめの説は牛嶋神社がまつる神『スサノオ』の化身なのだ。なぜ牛賀スサノオの化身なのかと言うと、日本の神と仏教の神を同一の存在だと定義する「神仏複合」により、スサノオは牛頭の仏「牛頭大王」と同一神格になったからなのだ。スサノオが浅草寺の僧侶を祟るため、牛頭の怪物を遣わしたという解釈なのだ。」

悠「無理無理」

ベヒモス「そういえば虫はもうでてこないモス?」

サタン「あの毒ガスで大半というか広域にわたって死滅したっポイのだ」

神姫「あのガスヤバいわね」

悠「色がコジマだったもんな……」

千世子「牛御前の物語は、鎌倉時代初期に書かれた歴史書「吾妻鏡」にも記録されている由緒正しいものなのだ。だがその記述を詳しく見ていくと、現在知られている牛御前伝説にはかなりの脚色が加えられていることが分かるのだ。「吾妻鏡」には鎌倉時代初期の1251年、浅草寺に牛のようなものが乱入し、これを見た僧侶7名が即死、24名が病気になったとあるのだ。つまり牛御前が毒を吐いたとも、化け物の呼び名が「牛御前」だとも「吾妻鏡」には書かれていないのだ。」

摩耶「昼間でなくて良かったよね。通報もんの色だったし」

悠「あれで無臭なのがまたやばい、あの婆さんひとりで戦争起こせるぞ多分」

摩耶「そんな人ばっかりだけどね。」

悠「……確かに」

亘理『人間怖いわぁ』

千世子「牛御前が牛玉を残して去ったという記述も「吾妻鏡」ではなく、事件より500年以上も後の江戸時代に編集された歴史書「新編武蔵風土記稿」に書かれたものなのだ。牛御前の伝説が「吾妻鏡」よりのちの時代に改変された可能性は否定できないのだ。以上、牛御前のじゅぎょーだったのだ。」
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