ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「あ、稲荷寿司食べたい。」

摩耶「今日は稲荷寿司なんだ」

悠「あと、女の子も」

神姫「……」
ガシッ!メリリッ
悠「あ、頭が頭が締まるぅ」

揺光【稲荷寿司といったかえ?】
ぼわんっ!

亘理『び、ビックリした!』

【夜道怪(やどうかい)】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。埼玉県西部には「宿かい」「ヤドウケ」と呼ばれる「夜道怪」という伝承が残っているのだ。その姿は白足袋に白装束という白ずくめの人型で、草履を履いて行燈を背負っているのだ。夜道怪は家の勝手口など裏手の方から民家に侵入し、子供を連れ去ってしまうというのだ。」

揺光【なんじゃ……稲荷寿司はないのか】

摩耶「むしろ、その単語だけでどこから現れたの?」

揺光「函館じゃ」

悠「北海道かよ!」

神姫「なんで聞こえたのかが不思議よね」

千世子「庶民の生活を研究してきた、民俗学者の柳田国男は、夜道怪という妖怪が生まれた由来は「高野聖」という集団にあると分析しているのだ。」

揺光【特定の単語は妾の耳に届くように悠に呪をかけておる】

悠「はいぃ!?」

揺光【冗談じゃ】

悠「冗談に聞こえなかった」

亘理『悠ちゃんは色々と憑いてたりしてるもんね……』

千世子「高野聖とは、日本仏教の聖地である和歌山県の高野山から諸国に旅立ち、各地で僧侶として仕事をしたり、仏具を売って高野山への寄付金を集めていた修行者の事なのだ。高野聖たちはそれぞれの方法で働き、夕方になると村の道に立って「ヤドウカ(宿をかしてくれ)」と叫んだというのだ。」

サタン「誰なのだ?」

悠「揺光、九尾の狐だ」

揺光【しばらく見ん間に面白いのや変わったのが増えておるな。そこの海洋生物と犬と人間の混じったのとか】

スキュラ「スキュラです」

揺光【西洋妖怪か】

千世子「高野聖が妖怪にされた根拠は他にもあるのだ。高野聖の多くは、宗教や、文化芸能で人々を楽しませるなどで人々に役立っていたのだが、真面目に修行する者だけではなく、中には悪事を働く者もいたのだ。また、高野聖に成りすまして盗みなどの狼藉を働くニセ僧侶までいたのだ。そのため「高野聖に宿貸すな、娘盗られて恥かくなり」という物騒なことわざもあったらしいのだ。」

悠「あと、サタンとベヒモスな」

揺光【うむ、よろしくのぅ。】

サタン「よろしくしてやるのだ!」

ベヒモス「よろしくモス」

摩耶「けど、相変わらずここの妖怪とモンスターのパワーバランスってぶっ飛んでるよね」

千世子「高野聖の活動は江戸時代ごろから制限されたのだ。その後悪事を働いた高野聖の言い伝えが次第に変化し、子供を攫う妖怪になった、というのが柳田の説なのだ。」

悠「それについて考えたら負けた。っか、北海道のミヤゲとかないのか?」

揺光【土産……あ、そうじゃ。おぬしらは菓子とかが好きじゃろ。ほれ】
スッ
亘理『あ、ありがとうございます』

雨「なにもらったの?」

亘理『ええと、ジンギスカンキャラメル…………。』

千世子「夜見使いの名前の由来には「ヤドウカ」の叫び声がもとになった説のほかに「道可」という僧侶が初めて高野聖という商売を始めたからだという説があるのだ。この道可には、同僚を殺された恨みで化けて出たという伝承があるのだ。」

揺光【なかなか不可思議な味ぞ】

悠「いっちゃ悪いがクソマズいだろこれ」

摩耶「ちなみにバンガードヴィレッジとかで普通に買えたりするよね。このご当地お菓子って」

神姫「そうね」

揺光【妾にとってもひとっ飛びじゃからご当地感はあまりないのぅ】

悠「なら、なぜこれを買った……」

千世子「道可はケチで有名な僧侶で、旅をしながらかなりの金をため込んでいたのだ。同行者の僧侶「快念」は金を目当てに道可を襲い、斬り合いの末に道可の首を切り落としたが、快念自身も深い傷を受けており間もなく死んでしまったのだ。次の日から、そこには道可の首が化けて出るようになったのだ。道可は手足がないせいで快念にこき使われていると嘆いていたが、通りかかった僧侶の身体を借りて快念の霊を倒したというのだ。以上夜道怪のじゅぎょーだったのだ。」
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