ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「アフガニスタン料理が食べたいな」

千世子「また、ニッチなものなのだ」

悠「ドーグとかうまいんだぞ?」

サタン「道具?」

悠「ドーグ、ヨーグルト系の飲み物でシナモンとか香辛料が入ってる。」

【オボ】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。群馬県の山中に現れるというオボは、山道を行く人間を妨害する妖怪で、赤ん坊のような声をあげたり、足元にまとわりつく性質があるのだ。オボの姿は「イタチが化けたようなもの」という記述があるが、詳しくは描写されていないのだ。ちなみにオボのせいでまともに歩けなくなったときは、刀を帯にぶら下げる紐や、着物の裾などを少し切って与えると、オボは足にまとわりつかなくなる。」

神姫「でも、それ飲み物よね。」

摩耶「アフガニスタン料理ってメインは肉だよね?」

悠「羊とかだな。香辛料バッチリきかせて金属の串に刺して焼いたのを食う」

亘理『焼き鳥ならぬ焼き羊?』

千世子「オボという名前の妖怪は他の地方にも居るのだ。福島県のオボは、赤ん坊を人間に抱かせた後にその人間を殺す「産女」という妖怪の亜種なのだ。彼女は子供を産めずに死んだ妊婦があの世で子供を産んで妖怪化したもので、通行人に子供を抱かせているうちに、自分は念仏を唱えて成仏してしまうという迷惑な妖怪なのだ。」

悠「あと、ラムロースのたたきとか」

サタン「羊肉サイコーなのだ!」

摩耶「サタンちゃんのテンションが上がりました」

スキュラ「たたきという事はレアという事でしょうけど、臭みはないのですか?」

悠「まったくない。オリーブオイルをちょっと着けて食べるんだ」

千世子「新潟県沖の佐渡島では、オボはうぶと呼ばれているのだ。うぶは幼くして死んだ子供の霊だといわれ、大きな蜘蛛の姿で赤ん坊のように泣き、人間を追って命を奪うのだ。このとき、草履の片方を投げて「お前の母はこれだ」といえば逃れられるというのだ。」

亘理『美味しそう』

ベヒモス「お野菜はないモス?」

悠「あるっちゃあるけど、やっぱり肉がメインだな。」

サタン「ひつじ食べたいのだー!」
グィグィ
悠「揺らすな揺らすな」

千世子「足にまとわりつく妖怪の伝承は全国に実例があるが、オボのように草履や紐で大人しくなるものは少ないのだ。妖怪研究科の村上健司は、草履や紐で満足する理由は死んだ子供と関係がある、という説を提唱しているのだ。」

神姫「カラヒィとかもそうよね。」

悠「そうそう」

亘理『カルビー』

悠「カラヒィ。アフガニスタン、パキスタンだと鍋で調理した料理のことをざっくりとカラヒィっていうんだが。 羊肉・獅子唐・トマトをスパイスで炒めたもののことだ」

スキュラ「ほぉ、辛そうですね」

千世子「草履や紐と子供の詩の関係は、村社会での子供の葬式習慣に見られるのだ。医療技術が未熟だったかこの時代、子供はふとしたことで死んでしまう不安定な存在であったのだ。そのため人々は、子供は半分この世の存在ではないと考えていたのだ。」

悠「いや、結構マイルド。でも、カーッと辛くなるタイプじゃなく、じわじわと辛くなってくる系」

サタン「ヒツジ肉~」
ぎゅーっ!
悠「首閉まってる、首。でも、おっぱいもあたっているから良し!」

亘理『ガブッ!』
悠「アーーーッ!」

摩耶「はい、いつものいつもの」

千世子「幼くして死んだ子供の葬儀はごく簡単に済まされ、大人とは別の墓に入れられるのだ。これは子供の霊を家の近くで休ませて、すぐにでも生まれ変わってくれることを願ったからだというのだ。だが親が転生を望まない場合は、肉親の履いていた草履を鼻緒など紐の部分をちぎってから墓に入れたのだ。鼻緒をちぎった草履は履物としての機能を失っているので、子供の霊は道に迷って家に帰れなくなるのだ。村上健司は、こうして家に帰れなくなった子供の霊が妖怪化したのがオボだと考えているのだ。オボは、家に帰りたくて人の足に縋りつく、悲しい妖怪なのだ。以上、オボのじゅぎょーだったのだ。」
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