ー奇談ー學校へ行こう(2)

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「あ、お茶が飲みたい」

摩耶「何茶?」

悠「んー、ほうじ茶かな」

亘理『ペットボトルのお茶ならあるけど』

悠「ああ、くれ」

サタン「結局なんでもいいのだ。」

【茂林寺の釜】

千世子「はい、じゅぎょーなのだ。人間を化かす動物としてとくに有名なのが狐と狸なのだ。彼らが人間を化かす話はしばしば昔話の題材になっているのだ。中でも変化の術に失敗した狸の物語「文福茶釜」は、日本で最も有名な狸の話といっても過言ではないのだ。」

悠「狸……おのれ狸、おのれ狸、おのれ狸」

摩耶「ああ、スイッチはいっちゃった」

スキュラ「なんのスイッチです?」

摩耶「狸ジジイコロスイッチ」

ベヒモス「物騒モス」

千世子「文福茶釜は狸の恩返しの物語なのだ。狸を助けた男は金に困っていたため、「狸は自分が茶釜に化けるので、寺に売ればいい」と申し出るのだ。茶釜は無事に寺の和尚に売られたが、その後が良くなかったのだ。和尚が茶釜を火にかけると、狸はあまりの熱さに尻尾を出し、変化の術を解除できなくなってしまったのだ。狸は茶釜から狸の手足と尻尾が飛び出した奇妙な姿のまま、男のところに逃げ帰ったのだ。」

悠「おれも狸を煮た立つ油の中に投げ込みたい」

神姫「茶の湯でも何でもないただの拷問よね」

摩耶「大泥棒の処刑方」

亘理『いやな天ぷら』

サタン「いや、衣とかはつけてないからただの揚げなのだ。」

千世子「狸はその後も中途半端な変化を解けなかったが、その姿を生かし、見世物小屋で曲芸を始めたのだ。茶釜狸は人気者になり、男と一緒に幸せに暮らしたというのだ。」

悠「カラッと揚げてしまいたい」

神姫「おっさん狸を揚げたところでなんの旨みもないわよね」

悠「おれのストレス原がなくなる。ふひ、ふひひっ」

スキュラ「だいぶきてますね。」

サタン「なんか怖いのだ」

千世子「この「文福茶釜」の物語には元ネタがあるのだ。群馬県南東部にある館林市の寺「茂林寺」に残る伝承「茂林寺の釜」がそれなのだ。茂林寺には今も「文福茶釜」が残されているが、茂林寺の伝承によれば、この茶釜は狸が変身したものではないのだ。」

摩耶「悠君はいくつかおかしくなるスイッチを持ってるけど「後楽」ってワードはその一つだわよ」

ベヒモス「特に知りたくなかったモス」

神姫「知ってても得はないからね。」

摩耶「ちなみにほかにおかしくなる言葉は「ジョジョ」とか「ロマサガ」とかだよ」

べヒモス「やっぱり別に知りたくないモス」

千世子「室町時代初期のころ、茂林寺に守鶴という僧侶が居たのだ。主格は大変長生きで、何人もの住職に仕えたというのだ。この守鶴という僧侶、実は千数百年の年を重ねた古だぬきが化けていたのだ。」

悠「たぬきのけがわ、たぬきなべ、はくせい……」

亘理『元に戻せない?』

摩耶「んー、手っ取り早い方法は……」

亘理『方法は?』

摩耶「おっぱいを揉ませるとかかな」

千世子「茂林寺の住職が7代目になった頃、茂林寺で1000人の僧侶が集まる「千人法会」というイベントが行われることになったのだ。だが1000人もの僧侶にお茶を出すとなれば、大量の湯を沸かせる大きな釜が必要になるのだ。もちろん茂林寺にはそのような大釜があるわけもなく、僧侶たちは途方に暮れていたのだ。」

亘理『ソレハチョット、イヤ、ヤブサカデハナクモナイノデスガ……///』

神姫「仕方ないわね。私に任せて」

亘理『神姫さん?!』

神姫「……ふんっ!」
パァン!
悠「超痛い!」

摩耶「他にも殴るっていう方法があるよ」

亘理『うん、今見た』

ベヒモス「いつも通りモス」

スキュラ「ですね」

千世子「そこで立ち上がったのが狸の変化、守鶴和尚なのだ。守鶴がどこからか持ってきた釜は、どれだけ湯を汲んでも次から次へと湯が湧きだし、尽きることがなかったというのだ。守鶴はこの釜を、多くの人に福を分け与えるという意味で「文福茶釜」と呼んでいたのだ。だがその後、守鶴は10代目の住職にうっかり正体を見せてしまい皆に引き留められつつも寺を去ったというのだ。以上、茂林寺の釜のじゅぎょーだったのだ。」
6/100ページ
スキ