ー奇談ー學校へ行こう

ー教室ー

夜の八時、いつもの様に授業が始まった。
先生の号令がかかる。

千世子「悠のあんちん」

悠「へいへい。」

千世子「まーや」

摩耶「はぁーい。元気です。」

千世子「うん。全員の出席を確認。ところで、あんちん。」

悠「うい?」

千世子「それはなんだ?」
悠の膝にオレンジ色の容器をが乗ってある。

悠「湯タンポだ。」

摩耶「もってきたの?」

悠「これでひと冬越せる」

摩耶「それは湯タンポには荷が重いと思うなぁ。」

千世子「はいはい、湯タンポは許可するから授業ですよ。それで、まーやはなんの妖怪について聞きたい?」

摩耶「そうだね……」

隣に座っている悠の姿を上から下と一見してた。

悠「なんだ?」

摩耶「はーい、チョコ先生「天の邪鬼」について教えてくださーい。」

悠「おい、どういう意味だ?うん?」

摩耶「あはは」

千世子「天の邪鬼。千年前からチョイ悪人生~。」

悠「はい?」

千世子「コホン、え~東北地方、秋田県の山中には、小鬼のような妖怪「天邪鬼」が住んでるといわれてて、この妖怪は他人の言葉に対してどんな小さな事でも逆らうひねくれた性格をしている。」

摩耶「にこにこ」

悠「はい、こっち見な~い!」

千世子「また他人の心を読むのが得意で、口真似や物真似で人間をからかって楽しむという。」

摩耶「悠くんだね。」

悠「もうええちゅうねん!」

千世子「はーい、私語しない。天邪鬼の本場は秋田だけど、それ以外の地域にも広く分布していて、能力や行う悪事についても、地域ごとに多種多様な伝承がある。」

摩耶「先生。質問」

千世子「はい、まーや」

摩耶「天邪鬼ってそんなに種類がいるんですか?」

千世子「いるぞー。それを含めて、一般的な天邪鬼は、心を読む能力で人間をからかったり、花嫁と入れ替わってぜいたくな暮らしをしようとする程度で、人の命にかかわる重大な悪事をはたらくことは少ない。ただし中には、大がかりな事件を起こす天邪鬼もいる。悠のあんちんわかりますか?」

悠「神奈川県には天邪鬼が富士山を崩そうとした伝承、兵庫県には山と山のあいだに巨大な橋をかけようとした天邪鬼。」

千世子「正解です。これらの天邪鬼は一般的に知られている小鬼のような天邪鬼とはちがい、巨人のような存在として語り継がれているようです。このように一匹の妖怪が地方によって名前や性質を変えるというのはよくあることだが、天邪鬼は特にそれが多い。」

千世子は背伸びして黒板に文字を書いていく。

天邪鬼
アマグシャグメ
アマネジャク
アマノシャク

摩耶「地域によってたくさんの名前があるんだね」

悠「山姥や山びことは、名前が違うだけで天邪鬼と同じ妖怪って伝える地方もあるしな。」

千世子「天邪鬼には、神話の登場人物をモデルとする説がいくつかある。天邪鬼のモデルとしてもっとも有名なのは、約1400年前に書かれた歴史書「日本書紀」に登場する女神「天探女(あめのさぐめ)」。だが、天探女の性格は天邪鬼と違う部分が多くて、どうして天邪鬼へと変化していったのかはわかっていない現状なのだ。」
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