ー放送ー⚡電脳ラジオ(仮)⚡

ー稲葉の部屋(仮)ー

稲葉「毎回お馴染み。古川稲葉と…」

禅「烏哭禅の…」

稲葉・禅「「電脳ラジオ!」」

稲葉「今日のゲストは空さんと柳お爺様よ。」

柳「七夕に怪談とはのぅ」

空「私ら暇ですもんね。」

柳「ほっほほ。」

空「ほな、いきます。深夜、誰もいないビルに一人でいた事…ありますか?この話しは友達の体験談です」


薄暗い廊下で立ち止まると、ボーッいうような耳鳴りが聞こえそれが次第にじんじんとした痛みに変わり、一瞬でも気を緩めると頭から次第に暗がりに溶けていくような錯覚がする。

親戚からの頼みごとを安請け合いして、私は思いっきり後悔していました。

「さっき車で通りかかったら入口にタチの悪そうなヤツがいたから、念のため見回りに行って欲しい」

場所は私の家から車で数分、日ごろお世話になっている親戚であるし、足が不自由な人なので2つ返事しました。

親戚がオーナーのそのビルは1階建てで、1、2階はテナント、3階には親戚が書斎代わりに使う部屋と、私が倉庫として借りている部屋がありました。
到着したのが夜の11時頃。

ビルと言ってもかなり小さく、全部の階を回っても30分はかからない。
手早く済まそうと駆け込みました。

1階から順に回り始め最後の3階まで異常はありませんでした。

3階の書斎で一息つくため、煙草に火をつけましたが、何恐怖が段々と重くのしかかってきて、さっさと引き上げる事にしました。

3階建てですが足の不自由なオーナーのためにエレベーターが有るので、早速それに乗り込み1階のボタンを焦っていたのか2階のボタンも押していました。

2階に到着。

軽い振動とともに扉がスーッと開きました。

私はぼんやりと扉の向こうの2階の壁を見ていました。

エレベーター内の灯りがフロアにもれる…
いつもならそこには少し黄ばんだ白い壁があるはずでした。

何かが違う

初めはシミか何かと思っていたソレに気づいた瞬間身体は硬直して動かなくなりました。

無表情な女の顔でした。
扉越しに見える壁いっぱいの大きな顔でした。
透けたその顔はシーンと静まりかえった中に浮かんでいました。

私は目を外すことが出来ませんでした。
その顔は表情を段々と変えていくのです。

笑っていました。
精神を病んでいる様な笑い方でした。
でも声は全く聞こえず、相変わらず静まりかえっていました。

エレベーターの扉はオーナーの為に時間設定を変えてあり、通常より閉まる時間が遅くなっていました。
身体が動かずボタンも押せない。視線も顔から外せない

数十秒後に扉が閉まるまで、ずぅっと狂った様に笑い続けていました。

空「その友達は逃げるように家に帰ったそうや。」


柳「かなり古いですが…知り合いの話じゃ。」

当時家には風呂が無く、よく母親と銭湯に行っていました。

ある日銭湯の帰り道、ある公営住宅が立ち並んでいる場所を通りかかると、ある家の玄関先に警官が2人居て、女性が何かを大声でまくしたてているのです。

なんだろう?と訝しんだものの、まぁ警察が居るのだから大丈夫と私たちは帰宅しました。

次の日、昨日の件の家の隣の住人が母親の知り合いらしく話を聞いてきたのでした。

それによると、昨日の女性はその住宅に越して来てまだ一週間足らずだったのですが、引っ越して三日目辺りから、寝室にしていた和室で次のような変なことが起こりはじめたそうです。

夜中、人の気配で目を覚ますと、なんだか子供が騒いでいるような気配だった。
キャッキャという子供の笑い声。
同時に畳をみしみし踏む様子がハッキリわかった。
部屋には霧のようなものが漂い、その中を3人の子供がはしゃぎまわっているのだそうです。

そしてさらに母親とおぼしき女性の声が「ごめんね、ごめんね……」とボソボソ言っている。

目をこらしてみると、部屋の隅の方に女性が正座をしてひたすら頭を下げている……

その女性がハッとしたように顔を上げ、こちらを向いたそうです。そのギラギラした目と視線が合った瞬間、その住人は気を失ったのだそうです。

次の日、ヒドい悪夢だったと半ば思い込んだのだそうです。
しかしそれは次の日にも、さらには三日目に現われた。

そして挙句の果てには、まだ深夜でもない時間に部屋が妙に霧がかかったように霞始めた。
住人は堪らず半ば半狂乱になって警察を呼んだのでした。

後日、詳しい経緯は知らされませんでしたが、その住宅の前の住人が逮捕されたのでした。

そして立会いの元、その寝室の床下が掘り返されたところ…案の定、発見されたんでした。
合計4体、バラバラだったそうです。

怖かったのは、その犯人は「家族は実家に帰した」と触れ回り、自分は一人で住み込みで働いていたのです。

柳「友人がいつも行っていた風呂屋でしたそうじゃ。」
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