ー放送ー⚡電脳ラジオ(仮)⚡

ー稲葉の部屋(仮)ー

稲葉「毎回お馴染み。古川稲葉と…」

禅「烏哭禅の…」

稲葉・禅「「電脳ラジオ!」」

稲葉「今日はゲストは無しで、私と禅君が話すわ。どっちが先に話す?」

禅「レディ…ファーストで…稲葉さん…から。」

稲葉「ふふ、わかったわ。プログラマーの知り合いから聞いた話でね…」

夏のある日、プログラマーの俺は納期に追われて先輩と二人で残業してた。

突然先輩が「なんか変な声がしない?」と言い出した。
「そうか?俺には聞こえないけど」と答えると

「いや、するって。女のすすり泣く ような…」と答える。
俺はキーボードを打つ手をとめ、耳を澄ました。
そんな声は聞こえなかったが、かわりにゴロゴロと遠くで音がした。

…雷だ。

雷は怖い。 停電になったら打ち込んだデータは消えてしまうし、マザーボードがやられる危険性もある。
仕事のめどはいまいちつかなかったが、仕事を切り上げ、帰ることにした。

先輩は一人で帰るのを怖がったが、あいにく帰る方向は逆方向だ。
会社の前で別れ、俺は栄駅から地下鉄名城線に乗った。

今日も疲れたな、とため息をついていると、ぽつぽつと音がする。
「雨かよ…傘持ってきてねーや」
俺は舌打ちし、俺が降りる日比野からはファミリーマートとローソンのどちらが近かったか考えた。
そうしているうちに、金山に着いた。
夜は新瑞橋行きのみになってしまうので乗り換えなければならない。
俺はホームに降りた。
そこでふと気が付いた。

稲葉「…地下鉄で雨?ってね…」

禅「では…闘路の…人から聞いた…話です。」

今から4年ほど前の今ぐらいの季節の話です。

夜の11時頃、東大阪まで彼女を車で送って、奈良の自宅へ帰ろうとしていたんですが、阪奈道路の登り道に入ってすぐちょっと眠気が出てきたため、空気を入れ換えようと指が出る程度に少し窓を開けました。

平日だったので周りには他の車が走っておらず、とても静かでした。

2、3ヶ月前ににねずみ取りにやられたばかりでそれ以来おとなしく走っていたのですがこの時間で周りに誰もいないし、この道はねずみ取りの場所が決まっていたのでちょっとアクセルを踏み込んで夜景の見える場所まで飛ばそうと考えました。

何度かカーブを切った後、直線になったのでスピードを緩め、惰力で走っているとピチピチピチという音が聞こえてきました。

すぐタイヤに石が挟まった音だと気づき、広くなった場所で車を路肩に寄せて後輪のあたりをチェックしていると、突然背後から馴れ馴れしく「どうしたん?」と声をかけられました。

一瞬心臓が飛び出るほどビックリしたんですが、すぐ気を取り直して相手の顔を見ると、20歳くらいの気の弱そうな青年でした。

別に大したことじゃないので内心放って置いてくれと思いましたが邪険にする理由もないので「タイヤに石が挟まったみたい」というと、「これちゃう?」といって彼が指さしたのでそこをみるとけっこう深く石が突き刺さっていました。

手や木の枝では取れそうにないので車に積んでいる工具を出そうとすると彼はすかさず「これ使い?」とドライバーを差し出してくれました。

すぐ石ころを取ってドライバーを返そうと立ち上がると彼はいつの間にか車を離れ道の上の方に向かって歩いていました。

「ありがとう!これ!」と結構大きい声で呼んだのですが彼は気づかずに上の方に止めてある白い車に向かって歩いていき、ドアを開けて乗り込んでしまいました。

車までは60mくらいの距離でしたが僕は自分の車に乗り、彼の車のそばまでゆっくり寄せようとして唖然となりました。

さっき開けるところを確かに見たのに車にはドアが無いのです。
そればかりか停めてある場所は草むらの中、タイヤもなく窓ガラスもなく捨てられている車だったのです。
もちろん人の気配はありません。
慌てて手に握っているドライバーを見ると手に赤錆が付くようなサビだらけのドライバーでした。

僕は急に怖くなり助手席の窓を開けて草むらへドライバーを投げ捨て車を加速させました。

すると突然耳元で……

禅「「乗せてってや!」…という…声が…聞こえたそう…です。」
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