ｰ小鳥遊邸裏庭:蔵前(1/12/朝)ｰ

梔「何か用意しとくもんはありますやろか?」

揺光【これといった道具などは要らぬが……この死骸は妾が葬って構わぬか?瘴気が湧いたり善からぬものを呼ぶやもしれんし】

梔「何があったかわかりまへんけど、無残な死に様や可哀想やし、手厚く葬ってあげておくれやす」

揺光【うむ。承った。それともう一つ】

梔「はい?」

揺光【この大蛇は裏山で見つかったといったが、この山に他に出入りしてる人間は沢山おるのか?】

梔「中腹まではお客はんや参拝人もきはりますけど、ここから頂上にかけては限られた人しかはいりまへん。携帯の電波も入らんどすから危ないんどす」

揺光【ふむ。では……仮に不法新入している人間がいる可能性は?】

梔「まず、ありえへんとは思いますけど…。」

揺光【あい、わかった。妾がしっかり調べておくし結界が必要なら張っておこう。】

梔「ほな、お願いますえ」

揺光【うむ、では後ほどの】

ヒュパッ……

悠「……いつの間にか蛇の死骸も消えてる。」

梔「揺光さんはええひとやね」

悠「人では無いですけどね……っか、梔姉さんもタフっていうか神経太いっすよね。妖怪も余裕で受け入れるって」

梔「うちは陰陽師の家系なんどすえ?」

悠「うぇい?!」

梔「冗談どす」

悠「えぇ……」

梔「けど、昔弥一さんが「俺は昔、魔獣を殺した」といっとたんどす。せやから、この世にはそういう人外の物も居るんやなと思っとっただけどすえ」

悠「は、はぁ……。」

梔「それより、さっ、悠ちゃんはおめかししましょね。髪といて、お着替えして……あ、お化粧して…」

悠「すいません、着替えと化粧は要らんです。っか、断ります」





ｰ西本家:小鳥遊邸本堂ｰ

鈴蘭「どうぞ、こちらです」

兜馬「ふぅ、私も年だな。少しばかり階段をあがって息を切らすなんて」

寿「エレベーターをお使いになればよかったのに」

兜馬「本堂へくらいは自分の足で行くべきだろう」

寿「坊ちゃんなら下から頂上まで登りますよ」

兜馬「アレと私の体力を一緒にするな」

鈴蘭「少し休憩なさいますか?」

兜馬「いや、大丈夫だ。君は梔君の生徒か?」

鈴蘭「はい。楓子お姉さまのひとつ下の生徒です」

兜馬「なるほど、どおりで足腰が強い訳わけだ。」

悠「親父が体力無いだけなんじゃないか」

兜馬「悠……。」

悠「よっす……。」

兜馬「……まったく、年が変わってもそんなうっとうしい髪をして、ヤクザみたいな恰好しおって」

悠「おい、おっさん、久々にあった息子への第一声がそれかコラ」

兜馬「親に対する口のきき方かそれか……」

鈴蘭「あ、あの……」

寿「うんうん、どっちも楽しそうで良かった、良かった。」

鈴蘭「えぇ?!これでですか?」

寿「あとはもう親子水入らずにしてあげましょう」

鈴蘭「は、はぁ…大丈夫でしょうか」

寿「仮に今護衛を外して、それで社長の命が狙われても、坊ちゃんをが側に居る限りそれを行うのは不可能ですよ。」

鈴蘭「大丈夫っていうのは……そういう意味では無いんですけど」