ー談話ーラスタ・ラヴへようこそ【Ⅱ】~3

ーラスタ・ラヴ(7/11/夜)ー

氷室「つまり、火事場の馬鹿力を発揮させなければいいんです。そうすれば簡単に勝てます。」

千夜「氷室さん、そういいますけど普通に追い込んだら火事場の馬鹿力を発揮するでしょ」

氷室「いえ、大丈夫です。悠さんは死にかけになっても火事場の馬鹿力は発揮しません。そうそうにギブアップするか逃げます。」

ともき「解らない…。二人のいってる意味が本当に解らない」

崇「悠が火事場の馬鹿力を発揮するには実は条件がある」

紅「条件が?」

崇「こちらが本気にならないことだ。」

「「「はい?」」」

崇「つまり、悠はこっちが本気で倒すや殺す意識をむき出さなければ……あっちも本気にならない。」

千夜「……?」

氷室「やはり引っ掛かりますか。」

崇「そうだろうな。紅」

紅「は、はい。」

崇「例えば俺が今からお前を殴るとするどうする?」

紅「そりゃ、ガードするか避けますよ!?」

崇「じゃあ、本気で殴るとしたら?」

紅「死ぬ気でガードっすかね」

崇「その違いだ。悠は前者なら避けることも受ける事も諦めるか逃げる。だが、後者ならガード、あわよくばカウンターでやり返してくるだろう」

氷室「要するに悠さんは殺意には防衛本能が働きますが、通常はまるでダメなんです。」

亮「わかんねー!」

ともき「……つまり、こういうことですか?悠はタイマンでも集団でも適当にボコられたり骨を折られたり、いや、手を出さなくても脅したりしたらすぐにギブアップする。そこで勝ちを宣言したらいいけど、それ以上に追い討ちをかけようとしたり、本気の完全勝利を目指したら悠も本気を出す。」

崇「ともきは理解力が高くて助かるな」

紅「なんすかそれ…」

崇「もし悠の本質に名前をつけるとしたら「異常生存本能」とでもいうかな。命に関わるギリギリまで追い込まれたら初めて、闘争心を発揮して覚醒する。だが、それがまだ序ノ口……俺の狙いは頭からその覚醒状態になれることだ。」

千夜「追い込まれてからじゃなく常に本気になれる悠ってことですか?」

崇「まぁな。たぶん、悠は今まで本当に超全開(ガチガチ)になったことはいんだろう。他のことに力を削ぎすぎてる。」

雲水「がははは。なるほどな、だから鬼状態(オニモード)をものにしてんだな。」

道玄「やはり、小僧と相性が良いらしいな。」

雲水「そう考えりゃ龍もなかなか様になってきてじゃねぇか。」

道玄「まだまだ、今はせいぜい蜥蜴(とかげ)だな」

氷室「ちなみに鬼も龍も身を削る技術しかないのですか?」

道玄「九つの内、翠の龍だけだ。だが、あの小僧ならどの龍も身を削りかねないな」

ともき「鬼状態はどうなんですか?」

雲水「鬼状態は完全に寿命を削るぜ。」

亮「さらっといったな…」

雲水「がはは。使うか使わないかは当人しだいだ。それに連投さえしなけりゃそこまで負担はかからねえぜ。」

ともき「それでも命はすり減るんですよね?」

雲水「等価交換。得るもんがでけぇなら失うもんもでけぇさ。」

ともき「あぁ……そうか」

紅「ん?」

ともき「いや、そういう体の限界を超える喧嘩は結果的に身を滅ぼすんだろうけど……悠にはそれが一番似合ってるのかもしれない」

亮「自滅?」

ともき「そうじゃなくて……今、そうやって涙を涸れ尽くしたらあとは一生笑ってられるだろ。」
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