ー談話ーラスタ・ラブへようこそ~【Ⅰ】

ーラスタ・ラヴー

美喜「どうぞ。エル・ディアブロです。」

エル・ディアブロ
11度中口ビルド

テキーラ30ml
クレーム・ド・カシス15ml
生ライム1/2個
ジンジャーエール適量

氷を入れたグラスにテキーラとクレームドカシスを注ぎ、ライムをしぼってそのまま落とし、冷えたジンジャーエール
で満たして軽くステアする。

梔「おおきに。ライムが半分沈んでて大胆なカクテルやねぇ」

澪「クレームドカシスの甘みにライムジュースとジンジャーエールの爽快感が加わった「悪魔」という名前をもつロングドリンクです。」

梔「悪魔…なんや、柏ちゃんにピッタリのドリンクやわぁ。」

澪「悪魔がですか?」

梔「ふふ、まぁそれは置いといて、ええお店にやねぇ。」

澪「ガキのアンダーグラウンドバーですけどね。」

梔「賑やかなのは好きどすえ。」

美喜「まぁ、気に入ってもらえたなら、いいですけど。そういえば…いつも着物なんですね。」

梔「ほんまはもっとラフな格好がえぇんどす。…けど、うちのお母はんが厳しいんやわぁ。普段から着物の着用やなんやかんやと…」

美喜「ほぇ~…御嬢さんなんですね。」

梔「ややわぁ、そんなんちゃいますて。うちは日舞よりお野菜やお花育てとる方が好きやし。」

美喜「なんか、不思議な人ですね…。」

梔「よう言われますわ。」
澪「ところで…その布包の中身って……刀ですか?」

梔「勿論。虎徹どす。あ、模造刀やよ。」

美喜「いや…模造刀でも帯刀って…」

梔「バレなええんどす。あ、持ってみる?」

澪「じゃあ、遠慮なく。お、意外と重い……」

梔「剛刀と呼ばれとりはりますから。レプリカいうてもかなり再現しとりますぇ」

澪「剛刀ですか」

梔「新撰組の近藤勇の佩刀言うんは有名ですやろ。刀の作者は興里。虎徹の名前は、彼が打った刀の原料に古い鉄を使った事に由来したといわれとるんですぇ、最初は古鉄ゆう名前やったけど…今は虎徹の宛字になってはりますなぁ。」

澪「やっぱ剛刀ってくらいだから切れ味凄いんですか?」

梔「懐宝剣尺に書かれとるなかでは…」

澪「へ?」

梔「要するに刀の切れ味ランキングどす。その中で虎徹は最上大業物つまり、剛刀の頂点と賞される一品やね」

美喜「けど、こんなの易々とは扱えなくない?」

梔「刀は扱うんや無くて、一体としてものにするもんどす。それは刀だけやなくあらゆる道具にいえますけど」

澪「一体ですか?」

梔「はい。例えば…このスプーンと氷。」

美喜「?」

澪「?」

梔「っ……ふっ…はい。」

澪「うわ…氷が真っ二つ」

美喜「切ったの?」

梔「スプーンも鉄の塊。無理な話やないえ?」

澪「いや…スプーンっすよ?」

美喜「でも現に切ってるし。」

梔「最高の業物、最低のナマクラでもええんどす。大切なんは…獲物の質やなくて気持ちやえ。」
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