ー特別編ーブラックアウトの夜
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風の吹き抜けない生ぬるいビルとビルの間であたしは翔んでいた。
正確に言えば「翔ぶ」ではなくて「跳ぶ」。
あたしはアスファルトを蹴り真上に跳ね上がる。
高さは軽く数メートル。
フワリと包み込んでくる無重力と風圧を体感しながら身体を回転させ、目標に急降下する。
「がぁっぶぁ」
膝が目標だった顔面に突き刺さり変な声をあげながら仰向けに倒れていく。
あたしは無事に着地成功。スカートの裾を直しながらいった。
「……ふぅ。あたしの勝ちねー。」
倒れた対戦相手だった男からは返事がない。ブラックアウトしたみたい。
周りの野次馬とランカーに引きづられている。
「今日八人目だぞ。」
「アホばっかだな。リッカさんに挑むなんて」
「あれがエアマスターか…むちゃ速いやん」
「今までに居ないタイプのスタイルだよ。」
周りの喧騒は無視して次のチャレンジャーを待っていたらポケットの携帯が震えた。
「はいー?」
『リッカ!アンタいつまで出歩いてんだい!さっさと帰ってきて店番代わんな!』
携帯が壊れないか心配になるほどの怒鳴り声にあたしは首を振った…。
鼓膜が破れるかと思ったわ。
敵はまだ叫んでいる。
『ちょっと、聞いてるのかい?毎日、毎日ブラブラして鉄砲玉じゃ無いんだからね!』
あたしはいった。
「そんなに怒鳴らなくても聞こえてる!今から帰るわよ!」
『さっさと戻んなよ!バカ娘が!』
最後の最後まで暴言を吐いて電話は切れた。
大の男を数人蹴り倒せても逆らえ無い相手がいる。
うちでは母が絶対のルールなのだ。
「はぁ…帰ろ。」
あたしは壁に立て掛けてあるマイギターを担いで歩き出した。
囲うように集まっていた人たちが左右に分かれて道を開けて一斉にお疲れ様です!っと叫んだ。
ヤクザ映画じゃ無いんだから勘弁してほしい…。
あたしは真っ赤になりながらダッシュで家に帰った。
夏の灼熱に負けじと全力で走って透水性のカラーレンガが張られた店の前に到着。
不機嫌な顔をした母がいった。
「ドラマが始まっちゃうでしょ。ほら、店番頼んだよ。」
お帰りも、冷たい麦茶のサービスも無しに我が家のルールブックは奥に消えていった。
あたしはイヤミの一つでも言ってやろうかと思ったけど……。
これ以上暑苦しくなるのも嫌なので黙って見送った。
触らぬ神に祟りなしってってやつね。
「はぁ…………よし。やるか。」
ギターをおいて、気合いを入れた。
歩道にしゃがみこんで、傷んだパイナップルを切って、カットフルーツを作りを開始する。
七月もなかばの日差しは背中にジリジリと落ちて、包丁は水を切るように果肉を裂いていく。
正確に言えば「翔ぶ」ではなくて「跳ぶ」。
あたしはアスファルトを蹴り真上に跳ね上がる。
高さは軽く数メートル。
フワリと包み込んでくる無重力と風圧を体感しながら身体を回転させ、目標に急降下する。
「がぁっぶぁ」
膝が目標だった顔面に突き刺さり変な声をあげながら仰向けに倒れていく。
あたしは無事に着地成功。スカートの裾を直しながらいった。
「……ふぅ。あたしの勝ちねー。」
倒れた対戦相手だった男からは返事がない。ブラックアウトしたみたい。
周りの野次馬とランカーに引きづられている。
「今日八人目だぞ。」
「アホばっかだな。リッカさんに挑むなんて」
「あれがエアマスターか…むちゃ速いやん」
「今までに居ないタイプのスタイルだよ。」
周りの喧騒は無視して次のチャレンジャーを待っていたらポケットの携帯が震えた。
「はいー?」
『リッカ!アンタいつまで出歩いてんだい!さっさと帰ってきて店番代わんな!』
携帯が壊れないか心配になるほどの怒鳴り声にあたしは首を振った…。
鼓膜が破れるかと思ったわ。
敵はまだ叫んでいる。
『ちょっと、聞いてるのかい?毎日、毎日ブラブラして鉄砲玉じゃ無いんだからね!』
あたしはいった。
「そんなに怒鳴らなくても聞こえてる!今から帰るわよ!」
『さっさと戻んなよ!バカ娘が!』
最後の最後まで暴言を吐いて電話は切れた。
大の男を数人蹴り倒せても逆らえ無い相手がいる。
うちでは母が絶対のルールなのだ。
「はぁ…帰ろ。」
あたしは壁に立て掛けてあるマイギターを担いで歩き出した。
囲うように集まっていた人たちが左右に分かれて道を開けて一斉にお疲れ様です!っと叫んだ。
ヤクザ映画じゃ無いんだから勘弁してほしい…。
あたしは真っ赤になりながらダッシュで家に帰った。
夏の灼熱に負けじと全力で走って透水性のカラーレンガが張られた店の前に到着。
不機嫌な顔をした母がいった。
「ドラマが始まっちゃうでしょ。ほら、店番頼んだよ。」
お帰りも、冷たい麦茶のサービスも無しに我が家のルールブックは奥に消えていった。
あたしはイヤミの一つでも言ってやろうかと思ったけど……。
これ以上暑苦しくなるのも嫌なので黙って見送った。
触らぬ神に祟りなしってってやつね。
「はぁ…………よし。やるか。」
ギターをおいて、気合いを入れた。
歩道にしゃがみこんで、傷んだパイナップルを切って、カットフルーツを作りを開始する。
七月もなかばの日差しは背中にジリジリと落ちて、包丁は水を切るように果肉を裂いていく。