ー特別篇ータピオカミルクティードリーム
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銀司は毎日、夏水堂を偵察に来るようになった。負けずに拳二も一軒おいた隣の陽来軒をチェックしに行っている。うちの近くにもうひとつ茶屋ができたら、おれも拳二のように毎日見に行くのだろうか。
この夏の爆発的な暑さにタピオカ人気も加わって、どちらの店もそれなりに繁盛していた。行列は途切れること無く、若い女たちはインスタ映えの写真をSNSにアップし続ける。永遠に続くかに思われたタピオカミルティー戦争だが、先におかしくなったのは銀司の店だった。
「悠さん、「陽来軒」がもう店を閉めてますよ。これはうちのチャンスだ。せいぜい頑張らないと。」
大前のおっさんが袖まくりをしてそういった。バイト同士で気合をかけあっている。おれはガードレールから腰を上げて、グリーン大通りの方へ歩いていった。閉店時間までだいぶあるのに陽来軒の店先に出された看板には、SOLD OUTのシールが貼られている。店の方を覗くと、半分シャッターが下りていた。
おれは自分で店をやっているから、よく分かる。シャッターは完全に閉じるか、開けるかしなければならないのだ。中途半端にしておくと、やたら店の印象が暗くなる。
仕入れのトラブルでもあったのだろうか。これから街に人が出るのに、もったいないものだ。俺はそのとき、陽来軒の異変を軽く考えていた。
だが、陽来軒は翌日も定時から二時間半遅れで開店した。その次の日は夕方から開店し、暗くなると同時に閉店してしまう。営業時間は三時間弱。まるでやる気がない、たまたま店に来ていた拳二に聞いてみた。
「陽来軒どうしたんだ?」
拳二は当然のように言う。
「お前は俺ぁと付き合い長いのに、本職のことが全然わかってないんだな。俺ぁは銀司の性格からして、この戦争は長続きするとは思っていなかった。二週間近く持ったなんて、奴からしたら上出来じゃないか。」
いらっしゃいませ、S・ウルフのイケメンがカウンターから女子高生に挨拶している。今日も池袋は快晴、気温三十四度。店を開いてさえいれば、タピオカミルティーは売れるのだ。
「どういうことだ?」
「だから、俺ぁ達みたいな人間は、たとえ儲かると分かっていても、こつこつと地道な商売を毎日続けられるようにはできていないのさ。」
おれは店員と同じ白いカプリシャツを着た拳二を改めて見直した。
「でも、お前は一ノ瀬組の渉外部長だけど、ちゃんと店を続けてる。」
「俺ぁは例外なんだ。組うちの奴からも、普通に実家の米屋を継いでもうまくいったといわれるよ。それにな、月に五十万程度浮かすのに、こんなに手間がかかるようじゃ、こっちの世界では、こづかい稼ぎにしかならない。銀司みたいなお調子者には到底続かないさ。きっと俺ぁが店を出したんで、よほど儲かると勘違いしたんだろうな。」
月に五十も浮くなら最高の商売だと、おれなら思うのだが、本職の世界では一ケタ違うのだろう。自体は拳二の言う通りに進行した。
陽来軒は週の半分しか店を開かないようになった。主力のタピオカミルクティーはいつでも売り切れ。だが店はたたむこと無く続けている。
銀司は一体何を売っているのだろう。
この夏の爆発的な暑さにタピオカ人気も加わって、どちらの店もそれなりに繁盛していた。行列は途切れること無く、若い女たちはインスタ映えの写真をSNSにアップし続ける。永遠に続くかに思われたタピオカミルティー戦争だが、先におかしくなったのは銀司の店だった。
「悠さん、「陽来軒」がもう店を閉めてますよ。これはうちのチャンスだ。せいぜい頑張らないと。」
大前のおっさんが袖まくりをしてそういった。バイト同士で気合をかけあっている。おれはガードレールから腰を上げて、グリーン大通りの方へ歩いていった。閉店時間までだいぶあるのに陽来軒の店先に出された看板には、SOLD OUTのシールが貼られている。店の方を覗くと、半分シャッターが下りていた。
おれは自分で店をやっているから、よく分かる。シャッターは完全に閉じるか、開けるかしなければならないのだ。中途半端にしておくと、やたら店の印象が暗くなる。
仕入れのトラブルでもあったのだろうか。これから街に人が出るのに、もったいないものだ。俺はそのとき、陽来軒の異変を軽く考えていた。
だが、陽来軒は翌日も定時から二時間半遅れで開店した。その次の日は夕方から開店し、暗くなると同時に閉店してしまう。営業時間は三時間弱。まるでやる気がない、たまたま店に来ていた拳二に聞いてみた。
「陽来軒どうしたんだ?」
拳二は当然のように言う。
「お前は俺ぁと付き合い長いのに、本職のことが全然わかってないんだな。俺ぁは銀司の性格からして、この戦争は長続きするとは思っていなかった。二週間近く持ったなんて、奴からしたら上出来じゃないか。」
いらっしゃいませ、S・ウルフのイケメンがカウンターから女子高生に挨拶している。今日も池袋は快晴、気温三十四度。店を開いてさえいれば、タピオカミルティーは売れるのだ。
「どういうことだ?」
「だから、俺ぁ達みたいな人間は、たとえ儲かると分かっていても、こつこつと地道な商売を毎日続けられるようにはできていないのさ。」
おれは店員と同じ白いカプリシャツを着た拳二を改めて見直した。
「でも、お前は一ノ瀬組の渉外部長だけど、ちゃんと店を続けてる。」
「俺ぁは例外なんだ。組うちの奴からも、普通に実家の米屋を継いでもうまくいったといわれるよ。それにな、月に五十万程度浮かすのに、こんなに手間がかかるようじゃ、こっちの世界では、こづかい稼ぎにしかならない。銀司みたいなお調子者には到底続かないさ。きっと俺ぁが店を出したんで、よほど儲かると勘違いしたんだろうな。」
月に五十も浮くなら最高の商売だと、おれなら思うのだが、本職の世界では一ケタ違うのだろう。自体は拳二の言う通りに進行した。
陽来軒は週の半分しか店を開かないようになった。主力のタピオカミルクティーはいつでも売り切れ。だが店はたたむこと無く続けている。
銀司は一体何を売っているのだろう。