ー特別篇ータピオカミルクティードリーム
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週明けの月曜には、おれも拳二も、大前のおっさんも驚愕することになる。
東口の夏水堂からドラッグストアを一件はさんだならびに、新しい店がいきなりできたのである。工事用の白いシートが取り払われると、そこにはタピオカミルクティーの専門店がまたひとつ。こちらの英義要時間は午後十一時半まで。
池袋PARCOに夕日が沈むころ、大前のおっさんとおれは五メートル先のライバル店の視察に向かった。あきれた。「陽来軒」ヤン・ライ・シュァンは夏水堂の造りを丸まるパクッてコピーした店だった。板張りの外見、カウンターの位置や高さ、店の両脇に置かれた観葉植物、そっくりなロゴ。
しかも最悪なことに開店記念キャンペーンで、拳二の店より百五十円も安くタピオカミルクティーを売っている。大前のおっさんの肩が怒りに震えていた。無理もない。夏水堂は行列ゼロ、陽来軒はドラッグストアの方まで長い行列ができている。
いつかのようにおれとおっさんが腕組みをして、新たなライバル店をにらんでいると、店の奥から声がかかった。
「おい、お前、S・ウルフの犬の悠だろ。」
知らない顔だった。時代遅れのリーゼントヘア。白いカプリシャツまで、夏水堂の制服のパクリだ。隠せない本職のにおい。崇ではなく、拳二のいる方の世界だ。
「そうだけど、あんた、誰?」
おれは自分でも気づかぬうちに、本筋の世界で拳二の最大のライバルに声をかけていた。
「なんだよ、拳二の野郎からきいてないのか。俺は「ジャックナイフの銀司」だ。」
まるで聞いたことのない名前。ダサい。自分のタピオカミルクティーの店に居るので、組織の名前は出せないのだろう。そう言えば、そんなあだ名のお笑い芸人が居た気がする。反社もお笑もネーミングセンスには問題がありそうだ。
モップの柄のような細い身体のリーゼントは、おれと大前のおっさんをにらみつけ、カウンターのなかから野良犬でも追い払うように手を振った。
「商売の邪魔だ。さっさと店に帰れ。拳二によろしくな。うちがお前の店を綺麗にぶっ潰してやると伝えとけ。」
よくある池袋的なタンカだった。いちいち相手にしてたら、日がくれる。だが大前のおっさんはまっすぐ銀司をにらみつけている。危険だ。相手は拳二と同じ本職である。
「なんだ、てめぇ」
ひと声低く吠えて、銀司はカウンターをくぐり、おれ達の方へやってきた。戦闘機のスクランブル発進みたい。開いたばかりの店の前で、立ち回りするはずもなく。哨戒行動だった。おれは大前のおっさんの肩に手を置いた。
「あれも本職だ。さっさと頭下げて帰ろうぜ。」
おっさんはおれの手をていねいに外して言う。
「わたしも一言いってやります。」
やたらと男気と勇気のあるサラリーマンだった。追いだし部屋で鍛えられたのかもしれない。それなら、別に構わない。腕を組んでなりゆきを見守る態勢になった。
東口の夏水堂からドラッグストアを一件はさんだならびに、新しい店がいきなりできたのである。工事用の白いシートが取り払われると、そこにはタピオカミルクティーの専門店がまたひとつ。こちらの英義要時間は午後十一時半まで。
池袋PARCOに夕日が沈むころ、大前のおっさんとおれは五メートル先のライバル店の視察に向かった。あきれた。「陽来軒」ヤン・ライ・シュァンは夏水堂の造りを丸まるパクッてコピーした店だった。板張りの外見、カウンターの位置や高さ、店の両脇に置かれた観葉植物、そっくりなロゴ。
しかも最悪なことに開店記念キャンペーンで、拳二の店より百五十円も安くタピオカミルクティーを売っている。大前のおっさんの肩が怒りに震えていた。無理もない。夏水堂は行列ゼロ、陽来軒はドラッグストアの方まで長い行列ができている。
いつかのようにおれとおっさんが腕組みをして、新たなライバル店をにらんでいると、店の奥から声がかかった。
「おい、お前、S・ウルフの犬の悠だろ。」
知らない顔だった。時代遅れのリーゼントヘア。白いカプリシャツまで、夏水堂の制服のパクリだ。隠せない本職のにおい。崇ではなく、拳二のいる方の世界だ。
「そうだけど、あんた、誰?」
おれは自分でも気づかぬうちに、本筋の世界で拳二の最大のライバルに声をかけていた。
「なんだよ、拳二の野郎からきいてないのか。俺は「ジャックナイフの銀司」だ。」
まるで聞いたことのない名前。ダサい。自分のタピオカミルクティーの店に居るので、組織の名前は出せないのだろう。そう言えば、そんなあだ名のお笑い芸人が居た気がする。反社もお笑もネーミングセンスには問題がありそうだ。
モップの柄のような細い身体のリーゼントは、おれと大前のおっさんをにらみつけ、カウンターのなかから野良犬でも追い払うように手を振った。
「商売の邪魔だ。さっさと店に帰れ。拳二によろしくな。うちがお前の店を綺麗にぶっ潰してやると伝えとけ。」
よくある池袋的なタンカだった。いちいち相手にしてたら、日がくれる。だが大前のおっさんはまっすぐ銀司をにらみつけている。危険だ。相手は拳二と同じ本職である。
「なんだ、てめぇ」
ひと声低く吠えて、銀司はカウンターをくぐり、おれ達の方へやってきた。戦闘機のスクランブル発進みたい。開いたばかりの店の前で、立ち回りするはずもなく。哨戒行動だった。おれは大前のおっさんの肩に手を置いた。
「あれも本職だ。さっさと頭下げて帰ろうぜ。」
おっさんはおれの手をていねいに外して言う。
「わたしも一言いってやります。」
やたらと男気と勇気のあるサラリーマンだった。追いだし部屋で鍛えられたのかもしれない。それなら、別に構わない。腕を組んでなりゆきを見守る態勢になった。