ー特別編ー黄色のCurrency
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俺は座り心地がよすぎるバックシートで崇と話した。
窓の外をとおりすぎる人がみなやわらいで、みずみずしく思える夕暮れ。
四軒のカフェとその店長、そして気弱な容疑者ホリイの話をコンパクトにまとめる。
俺が話してると『いけ!タウン』のビル前ではオコノギが屋外取材をやっていた。
こちらに気がつき手を振ってきた。
崇は無視したが俺は手を振ってやる。
単独行動はつらい。
なんといっても俺は気配りだけで世の中をわたっているのだ。
崇が王の無関心さでいった。
「つぎはどうする」
「そうだな、まだ確実な証拠なんてないからな。徹底的にホリイを追ってくれ。今度はそっちの出番だな。」
俺は登録票のコピーから一枚抜いてわたした。やつの住まいは北隣の板橋区にある。
ハッピーロード大山から一本奥にはいった路地のアパートだった。
崇はうなずくと、紙切れを受け取った。
「わかった。三チーム交代で動きを見張ろう。問題はこいつが犯人だとわかっても、そのあとどうするかだな。お前はどうする。」
勿論、俺は何も考えていなかった。
けど、あてはある。
解決策ならこの街の若きホープ、オコノギがいい手を見つけてくれるだろう。
「あの代表に任せればいいんじゃないか。」
「成る程。」
崇はなっとくしたようにうなずいた。シュッとしまった顎が微かに動く。
「お前はこれからどうする?」
「ま、明日からも同じだよ適当にうろついてみるさ。あ、本郷。家まで送ってくれ。」
本郷はまた指だけの挨拶をしてきた。理解してくれてるならいいけどさ。
…………
それから数日もNPOを訪れ、街の飲食店や金券ショップめぐりを続けていたが、熱のはいらない探索になった。
俺の勘はホリイが黒だといっていた。オコノギへの連絡は毎日いれていたが、確実な証拠をつかむまでホリイのことは話さなかった。
仮にやつが白だった場合、オコノギにに悪印象を残してやつのキャリアを潰したくはない。
穏やかな日が過ぎていった。こんな充実した毎日は、東京でさえ生きているのが楽しくてたまらなくなる。
俺の携帯が鳴ったのはホリイに尾行がついて四日目の夕方だった。
久々に家でゆっくりしてた午後五時。
俺は真桜の入れてくれたお茶を飲みながらヘンデルをきいていた。
ヘンデルはバッハの影に隠れているが、やはりバロックの巨人のひとり。
『水上の音楽』はイギリスの夏の野外式典のために書かれた注文作品で、威勢よくホルンが大活躍する。
「なかなか…良い趣味なの」
「だろ?古楽器のヴァイオリンのざらりと素朴な音の感触が好きなんだ。」
最高に爽やかな音の流れに神経を集中させていると携帯が震えた。
『悠か。俺だ。』
王様の声は自動車の走行音とともに聞こえた。
俺がなにもこたえないうちに崇はいう。
『ホリイが動いた。今回は怪しい。場所は東池袋「スミオカフェ」』
俺の頭はようやくバロックのロンドンから、現代の東京に戻った。
「カフェにはいるのが、どうして怪しいんだ」
崇はあきれて笑ったようだ。
『すぐにこい。カフェは今日は休みだ。やつは店の裏手の事務所に入っていった。出迎えたのは北原だ』
わかったといって俺は家を飛び出した。なぜ音楽を聞いていて一番の山場になると誰かの邪魔がはいる。
現代ってのは、俺に芸術をゆっくり鑑賞するゆとりを許さないらしい。
窓の外をとおりすぎる人がみなやわらいで、みずみずしく思える夕暮れ。
四軒のカフェとその店長、そして気弱な容疑者ホリイの話をコンパクトにまとめる。
俺が話してると『いけ!タウン』のビル前ではオコノギが屋外取材をやっていた。
こちらに気がつき手を振ってきた。
崇は無視したが俺は手を振ってやる。
単独行動はつらい。
なんといっても俺は気配りだけで世の中をわたっているのだ。
崇が王の無関心さでいった。
「つぎはどうする」
「そうだな、まだ確実な証拠なんてないからな。徹底的にホリイを追ってくれ。今度はそっちの出番だな。」
俺は登録票のコピーから一枚抜いてわたした。やつの住まいは北隣の板橋区にある。
ハッピーロード大山から一本奥にはいった路地のアパートだった。
崇はうなずくと、紙切れを受け取った。
「わかった。三チーム交代で動きを見張ろう。問題はこいつが犯人だとわかっても、そのあとどうするかだな。お前はどうする。」
勿論、俺は何も考えていなかった。
けど、あてはある。
解決策ならこの街の若きホープ、オコノギがいい手を見つけてくれるだろう。
「あの代表に任せればいいんじゃないか。」
「成る程。」
崇はなっとくしたようにうなずいた。シュッとしまった顎が微かに動く。
「お前はこれからどうする?」
「ま、明日からも同じだよ適当にうろついてみるさ。あ、本郷。家まで送ってくれ。」
本郷はまた指だけの挨拶をしてきた。理解してくれてるならいいけどさ。
…………
それから数日もNPOを訪れ、街の飲食店や金券ショップめぐりを続けていたが、熱のはいらない探索になった。
俺の勘はホリイが黒だといっていた。オコノギへの連絡は毎日いれていたが、確実な証拠をつかむまでホリイのことは話さなかった。
仮にやつが白だった場合、オコノギにに悪印象を残してやつのキャリアを潰したくはない。
穏やかな日が過ぎていった。こんな充実した毎日は、東京でさえ生きているのが楽しくてたまらなくなる。
俺の携帯が鳴ったのはホリイに尾行がついて四日目の夕方だった。
久々に家でゆっくりしてた午後五時。
俺は真桜の入れてくれたお茶を飲みながらヘンデルをきいていた。
ヘンデルはバッハの影に隠れているが、やはりバロックの巨人のひとり。
『水上の音楽』はイギリスの夏の野外式典のために書かれた注文作品で、威勢よくホルンが大活躍する。
「なかなか…良い趣味なの」
「だろ?古楽器のヴァイオリンのざらりと素朴な音の感触が好きなんだ。」
最高に爽やかな音の流れに神経を集中させていると携帯が震えた。
『悠か。俺だ。』
王様の声は自動車の走行音とともに聞こえた。
俺がなにもこたえないうちに崇はいう。
『ホリイが動いた。今回は怪しい。場所は東池袋「スミオカフェ」』
俺の頭はようやくバロックのロンドンから、現代の東京に戻った。
「カフェにはいるのが、どうして怪しいんだ」
崇はあきれて笑ったようだ。
『すぐにこい。カフェは今日は休みだ。やつは店の裏手の事務所に入っていった。出迎えたのは北原だ』
わかったといって俺は家を飛び出した。なぜ音楽を聞いていて一番の山場になると誰かの邪魔がはいる。
現代ってのは、俺に芸術をゆっくり鑑賞するゆとりを許さないらしい。