「おれの事を覚えているか。アンタとは池袋大橋で鬼ごっこをした。誰にやられた?」

園田の目の光は失われていない。おれを睨みつけていった。

「アンタたち、S・ウルフだ。」

崇の顔を見上げる。キングもほんの少し驚いたようだ。

「うちのチームは誰ひとり、おまえに手を出してはいない。」

崇はなりゆきを見守っていた氷室さんに目を向けた。

「うちも知りませよ。」

当然、東のボスも首を振る。

園田はおかしな顔をした。おれが保証人になってやる。

「そこに居るのが池袋のキングとボスだ。やつらは嘘をつかない。」

「だけど、あいつらは俺たちはS・ウルフだといって、僕を殴った。これ以上スズカに近づくな。次は埋めるぞって。」

おれはスマホの画面を思い出した。軍パンの尻のポケットから抜いて、画像を呼び出す。ブッタ、エッジ、マーガリン。やつの顔につきだしていった。

「それ、こいつらのことか」

園田も混乱しているようだ。スマホのディスプレイとキングを交互に見る。

「……そうですけど、どういうことなんでしょうか。」

崇の声は絶対零度に近くなる。やつは怒るほど、温度を下げるのだ。

「ひとつだけハッキリしているのは、無関係なガキがS・ウルフの名をかたり、暴力事件を起こしたということだな。」

周囲にいるS・ウルフの面々の表情が引き締まった。崇はおれにいう。

「ジェフ鈴木と三人を、俺に引き渡せ。S・ウルフがやつらを裁く。お前は園田だな。」

崇は遥かたかみからストーカー男を見下ろしていた。それが急にさっと頭を下げる。あたりのS・ウルフが息を飲んだ。

「ほんのわずかでも、うちに籍をおいた者が済まないことをした。その責任はきっちりとらせてもらうからな」

園田は事体がうまくのみこめないようだった。おれ並みに間抜けなことを言う。

「……あ、あの、ほんとうにあいつらを埋めたりしないですよね。」

おれはスマホの画面を消していった。

「さあ、どうかな。崇ならやるかもしれない。」

ストーカー男が震えあがった。そばにいた誰ひとり、おれの冗談ににこりともしなかったからだ。