エンジェルパークは東池袋中央公園。スズカが働く専門学校からもすぐ近く。サンシャイン60の陰にあるでかい公園だ。入り口には四列に植栽が並び、奥は噴水広場になっている。崇率いるS・ウルフと東口のボスである氷室さんが月二回定例合同集会を開くので、地元のガキの間では有名。

ここは東口の本拠地だ。氷室さんは自分で大きなチームこそ率いたりはしないが東口一帯をしっかりと統治していて、そのうちカンパニーを始めるという噂も耳にしいる。おれがいまだに池袋の裏路地でコンプレックス美女とストーカーを追っているのに比べると雲泥の差。まあ、たまに顔を合わせると、なぜかおれのことをうらやましがるんだけどな。なにせこの不景気でたいへん。いつだって財政が厳しいんだとか。その点では、おれと変わらない。

夜九時すこしまえに到着すると、すでに夏祭りのような人出。花火も夜店もないが奥の噴水広場にS・ウルフと東口ランカーが集まっている。あちこちでハイタッチやグータッチの嵐。おれのスマホにいきなり画像が送られてきた。この集会の主催者崇からだ。

ガキが三人。最初はいまどき珍しいくらいの短いパンチパーマ。ボーリングシャツを着たデブの本名は染谷美翔。キラキラネームの読み方はスカイだそうだ。顔は名前と大違いで、ストリートネームの方が断然近い。やつのあだ名はブッタ。

あとの二人はやせてとがった頭をしたのが芳川孝二で、ストリートネームはエッジ。ちょい太めの坊主頭が山根広太郎で、とおり名はなぜかマーガリン。おれは画像を保存すると、キングを探しに噴水広場のさらに奥に向かった。

崇は氷室さん、それに副官とチームヘッドに囲まれていた。なぜかやつらの周囲だけ静かだ。おれに気付くと、群れを離れてKING＆BOSSがやってくる。

「あのイケメン三人組は何なんだ?」

崇はにこりともしなかった。

「消えたジェフの友達。」

「S・ウルフなのか」

「いいや、正式にはメンバーじゃない。うちは試用期間が六カ月あって、そのあいだの成績で加入を決める。やつらは駒込の方のチームらしいが、試用期間がまだ二カ月しか過ぎてない。」

「駒込ってことは」

氷室さんがいった。

「管轄としてはうちの管轄域にいるので、調べてみたら駒込とか巣鴨界隈ではけっこう武闘派として名が通っているみたいです。」

西口に居ても東口につくやつもいれば、東口に居て西口の傘下に入るやつもいる。だからこそこの二人は定期的に西と東で場所を貸し合って余計な混乱を産まないように定例議集会を開いているのだ。

ご苦労なことだよな。