ー特別篇ー立教通り整形シンジゲート
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「もっとも美容整形の業界じゃ、そんなのめずらしくないよな。」
「……」
目の色が変わった。防御色というか、内面を読ませないようにシャッターが下りる。
「あんたのトータルビューティーアドバイザーについても、この街じゃ悪い噂があるみたいだ。紹介されたのは4Dのクリニックだよな。」
長い間が空く。
「……そうですけど。」
「お願いがひとつあるんだけど、いいかな」
「悠さんにはお世話になってますし、いいですけど」
おれは学生で埋まった東池袋のテラス席に視線を走らせた。いちおう園田の不在を確認する。切りつけるようにではなく、岸からそっと小舟を放すようにいった。
「そのマスクを一度とってみてくれないか。」
はあああ……。今度はながいため息。
スズカは視線を伏せたままだ。まつげにはエクステをしているのだろうか。ばさばさとまばたきをするたびに涼しい風を送れそう。
「やっぱり最後はそうなるんですね。みんな、わたしの顔のした半分がどうなっているのか、気になってしかたないんだなあ。あーあ。」
そんなんじゃないといおうとした。おれはスズカとつきあいたいわけでもないし、女の顔になんてさして興味もない。けれどスズカはひとりで納得したようだ。
「わかれました。一度だけですよ。」
伏し目のままゆっくりと三次元立体マスクのゴムに手をかける。片方を外し、マスクを反対側の耳にぶら下げた、顔をあげ、正面からおれの目をのぞき込んだ。
「ねえ、悠さん、わたしの顔ヘンでしょう?」
おれはひと言も返事ができなかった。変なは顔ではなくて、スズカの目の色だったからだ。底が知れないほど深く澄んで、入りこんだ光をすべて吸収してしまうブラックホールのような女の悲しい目。
スズカは三十五度を超える猛暑のなか、また三次元立体マスクをはめた。
おれのクライアントが素顔がさらしていた時間は、結局のところせいぜい五秒間くらいのもの。記憶をもとに再現すると、スズカの顎はややエラ張り気味で、すこし長かった。右側にちょっと歪んでいたような気もする。
けれど、それはせいぜい個性の範囲内で、滑形成上の病気や遺伝の異常を感じさせるようなものではなかった。マスクをとったスズカも文句なしに美人だし、この街を歩いていれば芸能だか水商売だかAVだかのスカウトに嫌になるほど声をかけられるだろう。
「……」
目の色が変わった。防御色というか、内面を読ませないようにシャッターが下りる。
「あんたのトータルビューティーアドバイザーについても、この街じゃ悪い噂があるみたいだ。紹介されたのは4Dのクリニックだよな。」
長い間が空く。
「……そうですけど。」
「お願いがひとつあるんだけど、いいかな」
「悠さんにはお世話になってますし、いいですけど」
おれは学生で埋まった東池袋のテラス席に視線を走らせた。いちおう園田の不在を確認する。切りつけるようにではなく、岸からそっと小舟を放すようにいった。
「そのマスクを一度とってみてくれないか。」
はあああ……。今度はながいため息。
スズカは視線を伏せたままだ。まつげにはエクステをしているのだろうか。ばさばさとまばたきをするたびに涼しい風を送れそう。
「やっぱり最後はそうなるんですね。みんな、わたしの顔のした半分がどうなっているのか、気になってしかたないんだなあ。あーあ。」
そんなんじゃないといおうとした。おれはスズカとつきあいたいわけでもないし、女の顔になんてさして興味もない。けれどスズカはひとりで納得したようだ。
「わかれました。一度だけですよ。」
伏し目のままゆっくりと三次元立体マスクのゴムに手をかける。片方を外し、マスクを反対側の耳にぶら下げた、顔をあげ、正面からおれの目をのぞき込んだ。
「ねえ、悠さん、わたしの顔ヘンでしょう?」
おれはひと言も返事ができなかった。変なは顔ではなくて、スズカの目の色だったからだ。底が知れないほど深く澄んで、入りこんだ光をすべて吸収してしまうブラックホールのような女の悲しい目。
スズカは三十五度を超える猛暑のなか、また三次元立体マスクをはめた。
おれのクライアントが素顔がさらしていた時間は、結局のところせいぜい五秒間くらいのもの。記憶をもとに再現すると、スズカの顎はややエラ張り気味で、すこし長かった。右側にちょっと歪んでいたような気もする。
けれど、それはせいぜい個性の範囲内で、滑形成上の病気や遺伝の異常を感じさせるようなものではなかった。マスクをとったスズカも文句なしに美人だし、この街を歩いていれば芸能だか水商売だかAVだかのスカウトに嫌になるほど声をかけられるだろう。