「女たちは金をどう工面するんだ。」

『ジェフはあれで食えない男だ。風俗のスカウトに伝手がある。どこかの街のデートクラブか、AV女優の事務所につなげておしまいだ。美容整形で綺麗になった若い女は、頭の悪い若い男違って金になる。』

そういうことか。ようやく全体像が見えてきた。そこまでふくめてが、ジェフ鈴木がいうトータルビューティーアドバイザーなのだろう。あのビジネスゲイにまとわりついていた紙のように鼻筋が薄い女が何をしたのかも納得した。あそこまでいくと他人からは完全に美容整形依存症だが、当人は自分の鼻に大満足なのだろう。四、五回は骨を削る手術を繰り返さなきゃ、あんな綱渡りのロープみたいな鼻は作れない。

『悠、おまえのほうはどうなってる?』

「ぜんぜんすすんでない。ストーカー男は自分の部屋に帰ってないみたいだ。居場所が分からないとなると、少々厄介だな。」

崇がため息をついた。南極の氷の平原に吹く夏風みたいにクール。

『確かに面倒なことになりそうだな。お前はストーカーとジェフ鈴木、両方に注意しなければならない。クライアントを園田に襲撃させるわけにはいかないし、商売オカマに整形依存にさせるわけにもいかない。もっとも依存には自分から望んでなるからな。その先はお前の仕事とは別なんだろうが。』

そのとき、ようやくおれがやるべき仕事が分かった。

まずスズカに三次元立体マスクをとらせること。



昼休み、おれは声優＆アーティスト専門学校に足を運んだ。日の当たるテラス席しか開いていなかったが、直射日光のなか座る。こういうときのアイス・ラテって、ほんとにうまいよな。

休み時間になるとテラス席は学生でいっぱいになった。たまにあざやかな緑やピンクの髪をしたリアル初音ミクみたいな男女がいるが、ほかは地味で普通の若者ばかり。スズカがやってきたのは十分すぎ。

「お昼食べながらでいいですか」

「ああ、いいよ」

広げたランチボックスのなかには、ままごとさいずのおにぎりがふたつとゆで卵が半分入ったサラダ。カロリーはたぶんウサギ二羽分の基礎代謝くらいか。スズカはまたも器用に三次元マスクをつけたまま、ていねいに食事を片付けていく。

おれは面倒なので、コーヒーショップで売っているサンドイッチにした。ライムギパンのラタトゥイユサンド。ちっとも腹にたまらない。

「園田は自分の部屋に帰ってないみたいだ。これから毎晩やつの部屋に行って確かめてみるけど、すでに何日か留守にしている可能性がある」

閉め切ったアパートの気配を思い出した。なぜか人が寄り付かなくなった部屋って、外から出も死んだ雰囲気が分かるよな。

「そうですか」

ストローでお茶を飲みながら、スズカはいう。