ー特別篇ー立教通り整形シンジゲート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
やはり猛暑日になったその日の昼ごろ、店番をしているとスマホが震えた。
うちの茶屋は奥にはエアコンの冷たい風があたるが、ガラスの仕切りなどないから店先に出ると三十五度を楽に超えることになる。冷気の当たる一番いい場所はお客……ではなく久秀専用なので、仕方なく歩道に出た。地面の照り返しにあぶられて、たぶん気温は四十二、三度。この夏は地獄だ。
おれは思いっきりのんびりといった。相手はキング・崇だ。
「もーしもーし」
『また阿呆の真似か。おまえの場合、必要ないぞ』
きっとキンキンに冷房の効いた室内にいるのだろう。いつものように台湾のかき氷みたいに冷たくてクリーミーな王様の声。
「もうしーわけーありませんでーす。」
崇はおれの冗談を相手にしてくれない。何度も視線をくぐってきたのに、友達に冷たい男だ。
『間抜け。いいか、ルウェス西池袋とジェフ鈴木について、いくつかわかったことがある。』
おれは背筋を伸ばしてしゃんとした。
「さすがに仕事が早いな。」
『まずやつはほんもののゲイじゃない。商売オカマってやつだな。』
驚いた。美容業界にはゲイも多いが、ビジネスゲイも多い。その方が女性に近づきやすいからな。なぜか日本の女は異常なほどゲイが好きだ。法的に同性婚は認めないくせに、世界で一番ゲイが出演するテレビ番組が多い不思議の国ニッポン。
「そいつは衝撃だな。」
『で、やつは店では副店長格でトップスタイリストをしている。腕はなかなかのものらしい。店に来た客の中から、用紙にコンプレックスを持っている女に目をつける。最初は無料でなにくれとなく面倒見てやるらしい。』
ジェフ鈴木は、ヘアアレンジや髪質にあったシャンプーやトリートメントを選び、最新のメイクアップ技術などを、問題を抱えた女たちに教えてやるそうだ。親密になったところで、究極の美容法を耳打ちする。とりあえず、幅広平行のふたえまぶたなら、片方七千円で出来るのよ。みんなやってるし、ほかにもいくつかいい方法があるの。
おれは汗をダラダラ流しながら崇にいった。
「よくそんなに調べがついたな」
『S・ウルフガールズのなかにも、やつのお友達がいたのさ。その女は目をいじりすぎて、リアルETみたいになっている。やつが紹介する先は……』
キングはクイズを出すように途中でいいやめた。チャンス問題もいいところ。
「あのアンチエイジング夫婦がやってる池袋4D美容外科ってわけか」
「そうだ。4Dはキックバックを渡すらしい。ジェフは自分の容姿にコンプレックスをもつ女たちをたきつけて、どんどん高額整形を繰り返させる。集団訴訟の噂がある。」
ここにも救われない話。だが、別に違法というわけでもないのだろう。二十一世紀世界にみちたあふれる間抜けがだまされて最後の一円までむしられるコメディのひと幕。
うちの茶屋は奥にはエアコンの冷たい風があたるが、ガラスの仕切りなどないから店先に出ると三十五度を楽に超えることになる。冷気の当たる一番いい場所はお客……ではなく久秀専用なので、仕方なく歩道に出た。地面の照り返しにあぶられて、たぶん気温は四十二、三度。この夏は地獄だ。
おれは思いっきりのんびりといった。相手はキング・崇だ。
「もーしもーし」
『また阿呆の真似か。おまえの場合、必要ないぞ』
きっとキンキンに冷房の効いた室内にいるのだろう。いつものように台湾のかき氷みたいに冷たくてクリーミーな王様の声。
「もうしーわけーありませんでーす。」
崇はおれの冗談を相手にしてくれない。何度も視線をくぐってきたのに、友達に冷たい男だ。
『間抜け。いいか、ルウェス西池袋とジェフ鈴木について、いくつかわかったことがある。』
おれは背筋を伸ばしてしゃんとした。
「さすがに仕事が早いな。」
『まずやつはほんもののゲイじゃない。商売オカマってやつだな。』
驚いた。美容業界にはゲイも多いが、ビジネスゲイも多い。その方が女性に近づきやすいからな。なぜか日本の女は異常なほどゲイが好きだ。法的に同性婚は認めないくせに、世界で一番ゲイが出演するテレビ番組が多い不思議の国ニッポン。
「そいつは衝撃だな。」
『で、やつは店では副店長格でトップスタイリストをしている。腕はなかなかのものらしい。店に来た客の中から、用紙にコンプレックスを持っている女に目をつける。最初は無料でなにくれとなく面倒見てやるらしい。』
ジェフ鈴木は、ヘアアレンジや髪質にあったシャンプーやトリートメントを選び、最新のメイクアップ技術などを、問題を抱えた女たちに教えてやるそうだ。親密になったところで、究極の美容法を耳打ちする。とりあえず、幅広平行のふたえまぶたなら、片方七千円で出来るのよ。みんなやってるし、ほかにもいくつかいい方法があるの。
おれは汗をダラダラ流しながら崇にいった。
「よくそんなに調べがついたな」
『S・ウルフガールズのなかにも、やつのお友達がいたのさ。その女は目をいじりすぎて、リアルETみたいになっている。やつが紹介する先は……』
キングはクイズを出すように途中でいいやめた。チャンス問題もいいところ。
「あのアンチエイジング夫婦がやってる池袋4D美容外科ってわけか」
「そうだ。4Dはキックバックを渡すらしい。ジェフは自分の容姿にコンプレックスをもつ女たちをたきつけて、どんどん高額整形を繰り返させる。集団訴訟の噂がある。」
ここにも救われない話。だが、別に違法というわけでもないのだろう。二十一世紀世界にみちたあふれる間抜けがだまされて最後の一円までむしられるコメディのひと幕。