ー特別篇ー立教通り整形シンジゲート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
開かない窓から見える景色は、いくつもの鉄塔だった。池袋駅はターミナルなので、たくさんの鉄道が通過する。ときどき山手線や埼京線や湘南新宿ラインなんかが、オモチャのように静かに走っていく。おれはホットのレモンティ、女はアイスのミルクティを選んだ。
マスクをつけたまま女がいった。
「わたし、夏浦涼といいます。」
ナツウラ・スズカ。芸名みたいな名前。
「おれのことは誰に聞いたの?」
いちおう依頼の筋は確かめておかなければいけない。ヤバい奴と絡むのは嫌だからな。
「ジェフさんからですけど」
「ジェフ?」
はずかしながら、おれはそんな名前の外国人の友人はいない。戸籍上の中国人の妹はいるんだけどな。スズカがはっと目を見開き、上半分だけで恥ずかしそうな顔をした。
「あっすみません。立教通りにある美容院で、トップスタイリストをしているジェフ鈴崎さんです。ご存知ですか。」
よく響くいい声。なんというか夜遅く、そっと鳴らす木琴の低温みたい。ずっと耳元でささやいてくれないかな。
「いや、ぜんぜんわかんないや。」
立教通りなら、ここから歩いて十分ほど。考えてみると、おれには外国人だけでなく、ヘアカットやメイクアップの専門家の友達もいなかった。まったくおしゃれじゃないんだ。
「店の名前は?」
「ルゥエス西池袋」
記憶にとめた。池袋のキング・虎狗琥崇は三週間に一度値段の高い美容院に行っているから、その店の評判くらいは知っているかもしれない。
「そのジェフさんに、おれの事は何ていわれたんだ」
ちょっと間をおいて、スズカが考え込んだ。きっとジェフとか言う軽い名の男は、あまりおれの事を良く言わなかったのだろう。
「池袋の街で評判のなんでも屋さんがいる。腕は確かだけど、自分で興味を持った面白そうな事件しか引き受けない。」
確かにその通りだった。ただでやるのだから、面白くないのは嫌だ。ペット探しとか、浮気調査とか、人気のチケット入手とかね。
「で、アンタはなんに困ってるの?」
スズカはカフェの入り口辺りに不安げな視線を向けた。
「ずっとあとをつけてきている人がいて」
流行のストーカーか。マスクをしていてもこれだけの美人なのだから、おかしな男がつくのも仕方ないかもしれない。甘い果実には虫がつくものだ。
「ずっと同じ男なのか」
「はい。ちょっと待ってください。」
そういうとスズカはトートバッグのポケットからスマートフォンを取りだした。映像フォルダーから、指でさらさらと選んで一枚を拡大する。
「この人です。」
マスクをつけたまま女がいった。
「わたし、夏浦涼といいます。」
ナツウラ・スズカ。芸名みたいな名前。
「おれのことは誰に聞いたの?」
いちおう依頼の筋は確かめておかなければいけない。ヤバい奴と絡むのは嫌だからな。
「ジェフさんからですけど」
「ジェフ?」
はずかしながら、おれはそんな名前の外国人の友人はいない。戸籍上の中国人の妹はいるんだけどな。スズカがはっと目を見開き、上半分だけで恥ずかしそうな顔をした。
「あっすみません。立教通りにある美容院で、トップスタイリストをしているジェフ鈴崎さんです。ご存知ですか。」
よく響くいい声。なんというか夜遅く、そっと鳴らす木琴の低温みたい。ずっと耳元でささやいてくれないかな。
「いや、ぜんぜんわかんないや。」
立教通りなら、ここから歩いて十分ほど。考えてみると、おれには外国人だけでなく、ヘアカットやメイクアップの専門家の友達もいなかった。まったくおしゃれじゃないんだ。
「店の名前は?」
「ルゥエス西池袋」
記憶にとめた。池袋のキング・虎狗琥崇は三週間に一度値段の高い美容院に行っているから、その店の評判くらいは知っているかもしれない。
「そのジェフさんに、おれの事は何ていわれたんだ」
ちょっと間をおいて、スズカが考え込んだ。きっとジェフとか言う軽い名の男は、あまりおれの事を良く言わなかったのだろう。
「池袋の街で評判のなんでも屋さんがいる。腕は確かだけど、自分で興味を持った面白そうな事件しか引き受けない。」
確かにその通りだった。ただでやるのだから、面白くないのは嫌だ。ペット探しとか、浮気調査とか、人気のチケット入手とかね。
「で、アンタはなんに困ってるの?」
スズカはカフェの入り口辺りに不安げな視線を向けた。
「ずっとあとをつけてきている人がいて」
流行のストーカーか。マスクをしていてもこれだけの美人なのだから、おかしな男がつくのも仕方ないかもしれない。甘い果実には虫がつくものだ。
「ずっと同じ男なのか」
「はい。ちょっと待ってください。」
そういうとスズカはトートバッグのポケットからスマートフォンを取りだした。映像フォルダーから、指でさらさらと選んで一枚を拡大する。
「この人です。」