ー特別篇ーYoutuber∴芸術劇場
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
またも穏やかな店番の時間が戻ってくる。「テンペスト」はもうやめた。初期の素朴なピアノソナタにする。二番、三番、五番とかね。グードルが弾くと遅い楽章がとにかくすごいのだ。ロマンチックって言葉は馬かが使うものだけど、まさにスーパーロマンチック。
崇にはやつにはクロだったとだけ報告した。あとはまあ、気の毒だからあと二日まってやれ、三周年記念くらい祝わせてやってもいいだろうと。この三年間で流星は休むことなく千本を超える動画をアップしているのだ。
おれはやけによくハミングするグールドの唸り声を聞きながら、店番を続けた。
その夕方、西口公園をぶらぶらしてるとまたも珍しい客。地下アイドルオタクのチードル♡♡♡横井だ。オールドイングリッシュシープドックみたいに伸び放題の前髪の間から、必死の視線でこちらに何かアピールしている。
「今度はアンタか」
「話があるんですけど、ちょっとだけいいですか、悠さん。」
おれは頷いた。再びロマンス通りの喫茶店。同じくカフェラテ。定番のソファ席に座ると、なぜかセーラー服と三十代の会社員のカップルが居た。夕方から楽し気なことしてるよな。
「これ、見てください」
またスマホを見せられるのかと思ったら、横井がシャツの袖をまくった。腕には点々と青黒い丸の痣。
「どうしたんだ?」
「デストロイヤーZにやられました。」
「だって、流星と戸田橋は筋書きありのプロレスなんだろ」
出会って初めて横井が前髪をかきあげた。目は案外涼しげで、二枚目。
「最初はそうだったんですけど報酬でもめたらしくて。むこうのリーダーの人がどこかの雑誌で流星さんの収入を見たらしくて、こんな安い料金でやっていられるかってトラブルになったんです。」
「流星はいまどうしてる?」
「昨日の夜ぼくが襲われてから、一歩もスタジオをでていません。食事はぜんぶケータリングだし、撮影もうちの中で出来るのしかやってないです。あの、悠さんとキングが腹を立ててるのは分かってるんですが、なんとか流星を助けてあげてもらえませんか」
今度はホントにスマホを抜いた。iPhone6のプラス。デカい画面は動画が見やすいよな。戸田橋デストロイヤーZの新作だった。どこかの公園の階段から玉ねぎを撒き、落ちてきたやつをハンマーで叩き潰していく。
『つぎはお前だ、流星。三周年記念、ずたぼろにしてやるぜ。』
崇にはやつにはクロだったとだけ報告した。あとはまあ、気の毒だからあと二日まってやれ、三周年記念くらい祝わせてやってもいいだろうと。この三年間で流星は休むことなく千本を超える動画をアップしているのだ。
おれはやけによくハミングするグールドの唸り声を聞きながら、店番を続けた。
その夕方、西口公園をぶらぶらしてるとまたも珍しい客。地下アイドルオタクのチードル♡♡♡横井だ。オールドイングリッシュシープドックみたいに伸び放題の前髪の間から、必死の視線でこちらに何かアピールしている。
「今度はアンタか」
「話があるんですけど、ちょっとだけいいですか、悠さん。」
おれは頷いた。再びロマンス通りの喫茶店。同じくカフェラテ。定番のソファ席に座ると、なぜかセーラー服と三十代の会社員のカップルが居た。夕方から楽し気なことしてるよな。
「これ、見てください」
またスマホを見せられるのかと思ったら、横井がシャツの袖をまくった。腕には点々と青黒い丸の痣。
「どうしたんだ?」
「デストロイヤーZにやられました。」
「だって、流星と戸田橋は筋書きありのプロレスなんだろ」
出会って初めて横井が前髪をかきあげた。目は案外涼しげで、二枚目。
「最初はそうだったんですけど報酬でもめたらしくて。むこうのリーダーの人がどこかの雑誌で流星さんの収入を見たらしくて、こんな安い料金でやっていられるかってトラブルになったんです。」
「流星はいまどうしてる?」
「昨日の夜ぼくが襲われてから、一歩もスタジオをでていません。食事はぜんぶケータリングだし、撮影もうちの中で出来るのしかやってないです。あの、悠さんとキングが腹を立ててるのは分かってるんですが、なんとか流星を助けてあげてもらえませんか」
今度はホントにスマホを抜いた。iPhone6のプラス。デカい画面は動画が見やすいよな。戸田橋デストロイヤーZの新作だった。どこかの公園の階段から玉ねぎを撒き、落ちてきたやつをハンマーで叩き潰していく。
『つぎはお前だ、流星。三周年記念、ずたぼろにしてやるぜ。』