ー特別篇ーYoutuber∴芸術劇場
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プロレスなら、もう心配することもなかった。おれも尾行に気をつけていたが、翌日はのんびりと周囲を気にすることなく、流星のスタジオに向かう。ポカポカと暖かな春の日差し。今度の心配は逆に、崇とS・ウルフがどれくらいのペナルティをやつに科すかだ。
二十二階ではまたも撮影中。今度は文房具の新商品の紹介らしい。花の匂いつきの消せるボールペン、フレーク状の消しゴム(貸してといわれたら、ひとかけらあげられる)、分度器とコンパスにもなるシャープペン(変身ロボみたい)。
撮影が終わるのを一時間待ち、流星に声をかける。
「ちょっと話があるんだが、いいか」
流星はさっそく動画編集にとりかかったチードルの方を見る。おれの口調になにかを感じたのかもしれない。
「ああ、まずい話かな?」
「そうだな、バルコニーに出ようか」
それでおれと流星は二人てせ肩を並べ、池袋の春の鈍い青空に向かうことになった。
おれは話し始める。
「ネットで見たんだが、最近ネットでは炎上商法がはやりらしいな。トラブルを起こして、集客し、再生回数を稼ぐ。今朝見たけど、アンタのアルファードの奴、もう七十万回も見られてたよな。」
「今は八十二万回だ。それで?」
ひるまない。さすがにユーチューブのスター。
「アンタと戸田のガキが組んで、三周年に向けてトラブルを仕掛けた。アンタは池袋育ちだから、S・ウルフやおれはいい脇役だと思ったんだろうな。アンタは金も払ってるんだろ、ゴリラのマスクにさ」
どんな人間でも自分が悪いとわかっている部分を指摘されると、目が泳ぐものだ。職業的な悪党でもない限りね。
「誰に聞いたんだ?ゴングの奴か?」
それには答えずに、おれは流星から視線を外した。もう自分が黒だといったようなものだ。おれは池袋上空の雲を見る。溶けたマンゴーシャーベットのようなどろどろの雲だ。
「間違いはアンタが、S・ウルフにボディガードを頼んだことだ。崇は腹を立てている。ひとり頭をやられているしな。なぜ、自分たちだけで芝居をしなかったんだ。やつはアンタにも戸田橋にもけじめを取るといってるぞ」
はるか下方の道路から間抜けなクラクションの音が聞こえた。
「それは……」
どうでもよくなって、おれはいった。
「なにか釈明はないのか」
「俺は……いや、いい」
「わかった。S・ウルフにはお前のガードを解くように伝えておく。くれぐれも崇にはきちんと誠意を見せろよ。やつはデストロイヤーZなんかの百倍怖い男だからな。」
流星の顔色が青くなっていた。それはそうだ。池袋ではS・ウルフは都市伝説だからな。何十人も行方不明になっているし、そのうち数人は粉をつけられて油で揚げられ、パーティのメインデッシュにされたとかなんとかね。
「おれももういくよ。ユーチューバー三周年、せいぜい頑張ってくれ。」
すこしセンチな気分になって、おれはスタジオに戻り、そのままひとこともなくマンションを離れた。
二十二階ではまたも撮影中。今度は文房具の新商品の紹介らしい。花の匂いつきの消せるボールペン、フレーク状の消しゴム(貸してといわれたら、ひとかけらあげられる)、分度器とコンパスにもなるシャープペン(変身ロボみたい)。
撮影が終わるのを一時間待ち、流星に声をかける。
「ちょっと話があるんだが、いいか」
流星はさっそく動画編集にとりかかったチードルの方を見る。おれの口調になにかを感じたのかもしれない。
「ああ、まずい話かな?」
「そうだな、バルコニーに出ようか」
それでおれと流星は二人てせ肩を並べ、池袋の春の鈍い青空に向かうことになった。
おれは話し始める。
「ネットで見たんだが、最近ネットでは炎上商法がはやりらしいな。トラブルを起こして、集客し、再生回数を稼ぐ。今朝見たけど、アンタのアルファードの奴、もう七十万回も見られてたよな。」
「今は八十二万回だ。それで?」
ひるまない。さすがにユーチューブのスター。
「アンタと戸田のガキが組んで、三周年に向けてトラブルを仕掛けた。アンタは池袋育ちだから、S・ウルフやおれはいい脇役だと思ったんだろうな。アンタは金も払ってるんだろ、ゴリラのマスクにさ」
どんな人間でも自分が悪いとわかっている部分を指摘されると、目が泳ぐものだ。職業的な悪党でもない限りね。
「誰に聞いたんだ?ゴングの奴か?」
それには答えずに、おれは流星から視線を外した。もう自分が黒だといったようなものだ。おれは池袋上空の雲を見る。溶けたマンゴーシャーベットのようなどろどろの雲だ。
「間違いはアンタが、S・ウルフにボディガードを頼んだことだ。崇は腹を立てている。ひとり頭をやられているしな。なぜ、自分たちだけで芝居をしなかったんだ。やつはアンタにも戸田橋にもけじめを取るといってるぞ」
はるか下方の道路から間抜けなクラクションの音が聞こえた。
「それは……」
どうでもよくなって、おれはいった。
「なにか釈明はないのか」
「俺は……いや、いい」
「わかった。S・ウルフにはお前のガードを解くように伝えておく。くれぐれも崇にはきちんと誠意を見せろよ。やつはデストロイヤーZなんかの百倍怖い男だからな。」
流星の顔色が青くなっていた。それはそうだ。池袋ではS・ウルフは都市伝説だからな。何十人も行方不明になっているし、そのうち数人は粉をつけられて油で揚げられ、パーティのメインデッシュにされたとかなんとかね。
「おれももういくよ。ユーチューバー三周年、せいぜい頑張ってくれ。」
すこしセンチな気分になって、おれはスタジオに戻り、そのままひとこともなくマンションを離れた。