ー特別篇ーYoutuber∴芸術劇場
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おれは途中で退席したけれど、やってき警察官との対応には二時間以上かかったという。証拠の写真と証言だけで膨大な量になる。まあ公式に被害届と報告書をかかなけりゃならないしな。役所の仕事はS・ウルフみたいにスポーティじゃない。
気味が悪いし危険だから、もう外には出ないという流星を残して、おれは店番に戻った。一度聞いた曲って妙に耳に残るもので、グードルの「テンペスト」をかけながら、またも和菓子を売る。
おれが考えていたのは二つ。
まず世界は本当にネット的な断片スタイルに変わっていくのだろうか。それならおれのこの話はぴったりかもしれない。まあ、期待はできないが。
もうひとつは、今回は襲われたのが自動車で人間でなくてよかったということだった。
ハンマーで叩かれるのは、頭蓋骨よりガラスのほうがいいもんな。
その夜、店じまいをして池袋の西口公園でぶらぶらしてるとやけにでかい影に遮られた。顔をあげるとゴング斎藤だった。三月の終わりでも夜になると肌寒い。でも、やつはブルドーザー・ブロディのTシャツの上にデニムのベストを一枚。おれの顔を見るという。
「ちょっと話があるんです。いいですか、悠さん。」
深刻で思いつめた表情。
「ここでいいのか」
ゴングは周囲を見渡した。夜の池袋。酔っ払いと帰宅を急ぐ会社員がぱらぱら。最近は客引きが禁止されているので、ミニスカの女たちはめったに見ない。
「いえ、ちょっとまずいです」
「分かった。場所を変えよう。」
おれ達が向かったのは、ロマンス通りの純喫茶。ここはスタバと違ってノートパソコンを開いて、見せびらかすように作業をしているガキがいないから、おれのお気に入り。
「で、話ってなんだ」
おれ達はホットのカフェラテを注文した。ここのは意外なことにきちんとエスプレッソで作る本格派。紫のソファにはタバコで開いた穴があるけどな。ゴング斎藤はデカい体を丸めて、いっきにいった。
「俺は一本立ちするんじゃなくて、あのスタジオをクビになりました。」
「どういうことだ」
顔をあげおれの目を見る。
「流行のリストラと経費削減ですよ。俺よりもチードルの方が動画編集の腕がいいってことなんですかね。」
憮然としている。
「だけど流星はかなり稼いでいるんだろ」
「年末の報酬減額がじわじわ効いてきてるんです。流星さんは機材にはケチらないし。あのスタジオも中古だけどローン君で買ってるから」
「そうだったのか」
ネットの世界もリアルな世界と同じで、暮らしは楽ではないのか。夢のない話。ゴングがもじもじと何かいいにくそうにしている。
「お前さ、いいたいことがあるならいっちゃえば?もう流星とはかかわりないんだろ」
「悠さん、俺から聞いたって絶対に秘密にしてくれますか?」
薄暗い夜の純喫茶でうなずいた。告白でもされる気分だ。
「流星さんと戸田橋デストロイヤーZのもめごとはプロレスです。」
気味が悪いし危険だから、もう外には出ないという流星を残して、おれは店番に戻った。一度聞いた曲って妙に耳に残るもので、グードルの「テンペスト」をかけながら、またも和菓子を売る。
おれが考えていたのは二つ。
まず世界は本当にネット的な断片スタイルに変わっていくのだろうか。それならおれのこの話はぴったりかもしれない。まあ、期待はできないが。
もうひとつは、今回は襲われたのが自動車で人間でなくてよかったということだった。
ハンマーで叩かれるのは、頭蓋骨よりガラスのほうがいいもんな。
その夜、店じまいをして池袋の西口公園でぶらぶらしてるとやけにでかい影に遮られた。顔をあげるとゴング斎藤だった。三月の終わりでも夜になると肌寒い。でも、やつはブルドーザー・ブロディのTシャツの上にデニムのベストを一枚。おれの顔を見るという。
「ちょっと話があるんです。いいですか、悠さん。」
深刻で思いつめた表情。
「ここでいいのか」
ゴングは周囲を見渡した。夜の池袋。酔っ払いと帰宅を急ぐ会社員がぱらぱら。最近は客引きが禁止されているので、ミニスカの女たちはめったに見ない。
「いえ、ちょっとまずいです」
「分かった。場所を変えよう。」
おれ達が向かったのは、ロマンス通りの純喫茶。ここはスタバと違ってノートパソコンを開いて、見せびらかすように作業をしているガキがいないから、おれのお気に入り。
「で、話ってなんだ」
おれ達はホットのカフェラテを注文した。ここのは意外なことにきちんとエスプレッソで作る本格派。紫のソファにはタバコで開いた穴があるけどな。ゴング斎藤はデカい体を丸めて、いっきにいった。
「俺は一本立ちするんじゃなくて、あのスタジオをクビになりました。」
「どういうことだ」
顔をあげおれの目を見る。
「流行のリストラと経費削減ですよ。俺よりもチードルの方が動画編集の腕がいいってことなんですかね。」
憮然としている。
「だけど流星はかなり稼いでいるんだろ」
「年末の報酬減額がじわじわ効いてきてるんです。流星さんは機材にはケチらないし。あのスタジオも中古だけどローン君で買ってるから」
「そうだったのか」
ネットの世界もリアルな世界と同じで、暮らしは楽ではないのか。夢のない話。ゴングがもじもじと何かいいにくそうにしている。
「お前さ、いいたいことがあるならいっちゃえば?もう流星とはかかわりないんだろ」
「悠さん、俺から聞いたって絶対に秘密にしてくれますか?」
薄暗い夜の純喫茶でうなずいた。告白でもされる気分だ。
「流星さんと戸田橋デストロイヤーZのもめごとはプロレスです。」