ー特別篇ーYoutuber∴芸術劇場
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その日は茶屋に帰って、店番にはげんだ。
桜餅の道明寺と長命寺を売りまくる。なんというか茶屋はのんびりとしたビジネス。
夜になって自分の部屋に上がり、丁寧にユーチューブを見てみた。おれが好きなクラシックを調べてみる。ベートーヴェンの交響曲全集が何種類もアップされている。だいたい五時間分。ピアノソナタ全集もより取り見取り。こちらは九時間弱。おれは古くさいパッケージソフト派なのでまったく県外だったけれど、これではCDが売れなくなるのは当たり前だ。ため息が出る。
おれはCDラックからグードルの弾きベートーヴェンのピアノソナタ十七番を選んで、プレーヤーにセットした。「テンペスト(嵐)」という標題のついた歯切れのいいソナタだ。外では南から強風が吹いて、電線がうなっている。
戸田橋デストロイヤーZの動画を集中的に見ていく。やつらのテーマは破壊だった。ハンマーで何かをぶっ壊すのと、名の売れたユーチューバー界のスターたちの名声を地に落とす。
まぁ、ディスられる方も抱えているのだ。ユーチューバーもゲーム実況だとか新製品の開封だとか、どうしてこれを見てられるんだって質の悪い動画を無数にアップしている。流星の玉ねぎもずいぶんと下らないが、それでも幾分ましな方。
それからユーチューブの泥沼を真夜中まで空しくさまよった。とてつもなく疲れる。くすりと笑えるのや、なるほどと感心するのは、ほんのわずか。こういうメディアが映画やテレビや音楽といった業界をすべてにとってかわるのだろうか。悪貨は徹底的に良貨を駆逐する。
おれは布団に倒れ込んで、ふて寝した。明け方に見た夢は曇り空の海岸。さざ波が果てしなく水平線まで広がっている。その波頭ひとつひとつがジャンク映像でキラキラと光っているのだ。押し寄せてくる映像の波。どれかひとつをよく見ようと思わなければ、案外美しい景色だった。
翌日、おれと崇は手はず通り、流星に一日張り付くことになった。コミュニケーション能力に優れ、どんな場にも溶け込める。武闘派のS・ウルフにはない、おれの特長だ。
二十二階のスタジオに到着したのは、昼前。流星の部屋はなんだかイイ匂いがした。
「おはよう、なにやってんだ、これ」
流星はテンションが高かった。
「撮影に決まってるだろ。撮影してないときは、何を撮るかの企画を練ってるか、動画を編集してるか。ユーチューバーにはその三パーンしかない。」
毎日動画をアップするには、そのくらい勤勉にならなければならない。仕事は何だって、大変なんだよな。
「ちなみに今日は何なんだよ」
「インスタントラーメン。ここのメーカーがスポンサーになってくれているんだ。ただつくっただけじゃ、つまらないから、流星流のトッピング企画を動画にしてる。」
それからの一時間半で、流星は豚骨醤油の即席めんを三回つくった。トッピングはマンゴーシャーベット、ソーダ味のグミ、粉々に砕いたキャラメルウエハース。三杯全部きれいに平らげた後で、奴がくだしたトッピング一位はウエハースだそうだ。つくづくどうでもいい話。この動画が小学生を中心に百万回再生を稼ぐ。ネットの驚異だよな。
桜餅の道明寺と長命寺を売りまくる。なんというか茶屋はのんびりとしたビジネス。
夜になって自分の部屋に上がり、丁寧にユーチューブを見てみた。おれが好きなクラシックを調べてみる。ベートーヴェンの交響曲全集が何種類もアップされている。だいたい五時間分。ピアノソナタ全集もより取り見取り。こちらは九時間弱。おれは古くさいパッケージソフト派なのでまったく県外だったけれど、これではCDが売れなくなるのは当たり前だ。ため息が出る。
おれはCDラックからグードルの弾きベートーヴェンのピアノソナタ十七番を選んで、プレーヤーにセットした。「テンペスト(嵐)」という標題のついた歯切れのいいソナタだ。外では南から強風が吹いて、電線がうなっている。
戸田橋デストロイヤーZの動画を集中的に見ていく。やつらのテーマは破壊だった。ハンマーで何かをぶっ壊すのと、名の売れたユーチューバー界のスターたちの名声を地に落とす。
まぁ、ディスられる方も抱えているのだ。ユーチューバーもゲーム実況だとか新製品の開封だとか、どうしてこれを見てられるんだって質の悪い動画を無数にアップしている。流星の玉ねぎもずいぶんと下らないが、それでも幾分ましな方。
それからユーチューブの泥沼を真夜中まで空しくさまよった。とてつもなく疲れる。くすりと笑えるのや、なるほどと感心するのは、ほんのわずか。こういうメディアが映画やテレビや音楽といった業界をすべてにとってかわるのだろうか。悪貨は徹底的に良貨を駆逐する。
おれは布団に倒れ込んで、ふて寝した。明け方に見た夢は曇り空の海岸。さざ波が果てしなく水平線まで広がっている。その波頭ひとつひとつがジャンク映像でキラキラと光っているのだ。押し寄せてくる映像の波。どれかひとつをよく見ようと思わなければ、案外美しい景色だった。
翌日、おれと崇は手はず通り、流星に一日張り付くことになった。コミュニケーション能力に優れ、どんな場にも溶け込める。武闘派のS・ウルフにはない、おれの特長だ。
二十二階のスタジオに到着したのは、昼前。流星の部屋はなんだかイイ匂いがした。
「おはよう、なにやってんだ、これ」
流星はテンションが高かった。
「撮影に決まってるだろ。撮影してないときは、何を撮るかの企画を練ってるか、動画を編集してるか。ユーチューバーにはその三パーンしかない。」
毎日動画をアップするには、そのくらい勤勉にならなければならない。仕事は何だって、大変なんだよな。
「ちなみに今日は何なんだよ」
「インスタントラーメン。ここのメーカーがスポンサーになってくれているんだ。ただつくっただけじゃ、つまらないから、流星流のトッピング企画を動画にしてる。」
それからの一時間半で、流星は豚骨醤油の即席めんを三回つくった。トッピングはマンゴーシャーベット、ソーダ味のグミ、粉々に砕いたキャラメルウエハース。三杯全部きれいに平らげた後で、奴がくだしたトッピング一位はウエハースだそうだ。つくづくどうでもいい話。この動画が小学生を中心に百万回再生を稼ぐ。ネットの驚異だよな。